2010年7月5日月曜日

会議でコンセンサスを得る過程

私は昨日、ブログsmashmediaを運営している河野さん(@smashmedia)が主催する私塾「mixbeat」の三期生として、三期生第一回のワークショップに参加してきました。ここで執り行われた「新コンセンサスゲーム」が非常に秀逸でしたので、ここに紹介したいと思います。

本ゲームの目的は、議論によってチーム内で統一見解を出す過程を観察・分析し、「チームとしての見解は個人が出した見解よりも優れているか?」「どうすればチーム内でより良い(≒極力チーム全員が納得した)統一見解を出す事ができるか?」を検証するものです。本ゲームの大まかな手順は次の通りです。

[新コンセンサスゲームの手順]

  1. 参加者を観察チームと議論チームに分ける

    私を含む現役生(三期生)10名が議論チームを担当、塾長の河野さんとmixbeatのスタッフ、そしてmixbeatの卒業生(一期生及び二期生)が観察チームを担当しました。

  2. 議論チームは、各自、あらかじめ用意されたお題について回答を出しておく

    今回のお題は「当番としてワークショップを考えるにあたって大事だと思われる要素10個に優先順位をつける」というものでした。これは非常にコンセンサスを得にくいお題だと思いました。

  3. 議論チームは、議論しながらお題に対するチームの統一見解を時間内に出す

    議論の時間は60分に設定されていました。小道具はホワイトボード、マーカー、要素が書かれたパネル(×10)そしてタイマーです。

  4. 観察チームは、議論チームが統一見解を出すまでの過程を観察する

    観察チームはビデオやメモを使って議論の過程を記録します。観察メンバ一人が議論メンバ二人を観察していました。

  5. 議論終了後、観察チームが議論の進め方や議論チームの各メンバに対する良い点や悪い点を指摘する

    今回のお題では答えが用意されていましたが、この答えとチーム統一見解のかい離、時間帯別発言回数、チーム内における貢献度(議論メンバが相互に評価、持ち点100を各メンバに割り振る)、そして観察メンバからの定性評価が評価軸として設定されていました


私はこれまで自分が議論している姿を客観的に見た事はなく、議論中の自分を第三者の目で評価されたこともなかったため、本ゲームは非常に新鮮でした。本ゲームは私にとって次のような事を考える良い機会となりました。
  • 議論における時間の有効な使い方
  • 議論メンバ全員の納得感を高める議論の進め方
  • 議論における自分の意見の有効な出し方
  • 議論における他人の意見の有効な引き出し方
私は議論チームで進行役(ファシリテータ)を買って出たのですが、最後まで主導権を掌握することができませんでした。また、議論の途中で自分の見解とチームの見解がほぼ合ってきた(思惑通りになってきた)ことから、最後の方はあまり議論に参加しなくなってしまっていました。会議の目的は「チーム全員が納得したチームとしての統一見解を出すこと」であるにもかかわらず、私は「チーム全体の意見を自分の意見に誘導すること」に終始してしまったようです。こうした点を指摘されたり、議論における自分の立ち振る舞いを自ら観察することで、自分の会議に対する参加姿勢について改善の余地がある事がわかったのは非常に大きな収穫です。

本ゲーム参加後に感じた改善を検討してみたい点を少し上げておきます。
  • 事前説明内容

    私が舞い上がっていただけかもしれませんが、目的意識が判然としないまま議論に突入した印象がありました。過去の経験を踏まえて議論参加時のポイント、例えば「何を意識して議論すべきか」については、事前に説明しておいた方が問題意識を持って議論出来るのでは、と感じました。

  • 評価方法

    今回の評価軸は「正解とのかい離幅(個人/チーム)」「時間帯別の発言回数」「議論に対する貢献度」「観察メンバによる定性評価」の4つでした。ここで、議論メンバ間が持った印象が反映されるのが「議論に対する貢献度」のみだったのですが、議論メンバ間で互いにどのような印象を持ったのかをもう少しアウトプットできれば良いかな、と感じました。

  • 評価結果の活用法

    せっかく様々な評価軸によって評価いただいたにもかかわらず、評価結果の活用法についてはあまり言及されませんでした。ここはもう少し踏み込んでも良いかな、と感じました。

チーム力を上げる、あるいは会議をより有益なものにするためにも、本ゲームは会社でもやってみる価値はありそうです。

さて、私は今後1年間mixbeatのワークショップに毎月参加することになります。今回第一回はスタッフ及び卒業生の方々に主催していただきましたが、次回以降は我々現役生(三期生)が主催していくことになります。そして私は早速来月のワークショップ当番にあたっています。グロッキーしていなければ随時本ブログにて活動報告してきたいところですが…

2010年6月21日月曜日

今、メディアに起きていること

6月20日にジョインパートナーズが主催するワークショップにて「今、メディアに起きていること」と題したプレゼンをやらせていただいたのですが、ここに資料を共有させていただきます。


本資料の目的は次の通りです。
  • メディアの現状を把握する
  • 情報発信者が取り組むべき課題を明らかにする
本資料の対象読者は以下を想定しています。
  • ジャーナリスト、及びジャーナリスト志望者
  • ジャーナリズムに興味のある方
本資料にてご紹介した数字の参照元は次の通りです。
また、ご紹介した事例に関連するサイトは次の通りです。

■ Huffington Post
■ ライブドア
■ ProPublica
■ NewsTilt
■ DAYS Japan
■ エイズ孤児支援NGO PLAS
本資料について不明な点などあればお気軽にご連絡下さい。また、スライドの内容に不備がありましたら、ご指摘いただけると助かります。

ジャーナリズムの可能性

昨日(6月20日)、ジョインパートナーズが主催する『「声にならない声を聞く」久保田弘信 海外取材プロジェクト ジャーナリスト・ワークショップ 取材報告会』と題されたワークショップに参加、以下6名の若手ジャーナリストによる取材報告を聞いてきました。
  • 安田菜津紀氏 [Blog] [Twitter]
    [主題] 緑の壁 HIVと共に生きる
    [概要] カンボジアで郊外に退却になったHIV患者の村について、フォト・ドキュメンタリー
  • 矢沢彰悟氏
    [主題] 閉ざされた国境
    [概要] アルメニアとトルコの国境について、フォト・ドキュメンタリー
  • 近松温子氏
    [主題] 和歌子と紗絵(関連記事
    [概要] 精神疾患を持った女性のドキュメンタリー映像
  • 鈴木幸一郎氏
    [主題] 生きるために
    [概要] 筋ジストロフィーと向き合うある患者のフォト・ドキュメンタリー
  • 松田健作氏 [Blog] [Twitter]
    [主題] 旅することは、感じること
    [概要] ネパール旅行記、フォト・ドキュメンタリー
  • 吉田亮人氏 [Blog] [Twitter]
    [主題] ミャンマー難民の今~子供たちの姿を通して~
    [概要] ミャンマー難民キャンプのフォト・ドキュメンタリー
いずれも力作で、心に響くものがありました。そしてその内容もさる事ながら、彼ら・彼女らのストイックな取材姿勢に感動すら覚えました。これからも是非頑張って欲しい。

各ジャーナリストの発表後、本ワークショップの主催者でもあるフォトジャーナリストの久保田弘信氏(@hirokun001)、そしてヤハギクニヒコ氏(@yhgsa)から論評があったのですが、これが非常に的確で、報道素材の見方や楽しみ方がわかってきたと同時に、報道素材の作り手の大変さにも理解が及ぶようになりました。「誰に」そして「何を」伝えるための報道素材なのか、ここを徹底的に考えることがジャーナリストにも強く求められそうです。

私はこれまでジャーナリストの方から直接取材報告を聞くという機会にはあまり恵まれてこなかったのですが、今回のワークショップを通して、記事や写真、映像などの報道素材は、それを取材したジャーナリストの方が直接報告する事で、何倍、何十倍にも魅力が増すのではないかと感じました。報道素材が持つポテンシャルの高さを再認識した次第です。

今はプロのジャーナリストの方々が食べていくには非常に厳しい時代となっていますが、報道素材が持つポテンシャルは非常に高く、マスコミで働くエンジニアとして何かできることはないか、これからも継続して考えていきたいと思います。日本のジャーナリズムの火を消さぬよう、「プロジャーナリストがITリテラシの高低に左右されずに報道活動を持続可能な」ビジネスモデルを何とか探りたい。そのヒントは既にあると考えています。
最後に、素晴らしい機会をご提供いただいたジョインパートナーズの扇様にこの場を借りて御礼申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。