2010年11月30日火曜日

ソーシャルメディアの定義をめぐる議論

仕事が立て込んでいるので、後でまとめてじっくり読むためのメモ。

ITジャーナリストの湯川さんが運営されているブログメディア『TechWave』に先週(11月22日)掲載された記事『蔓延する誤った「ソーシャルメディア」の定義【水谷翔】』を発端に、ツイッターやブログで多様な議論が展開されました。


この記事に対する佐々木俊尚氏の反応。

22 Nov @sasakitoshinao


この記事は100%間違っている。そもそもバーチャルの人間関係とリアルの人間関係が融解しつつあるのであって、リアルに固執するのは変。 /蔓延する誤った「ソーシャルメディア」の定義【水谷翔】 http://t.co/kujhF7g

22 Nov @sasakitoshinao


メインストリームを目指してるらしいメディアに掲載されたからです。RT @nob_suzuk: 突っ込みどころ満載だったが、大学生の意見ということでスルーしましたが佐々木俊尚さんは許せなかった模様ですね QT @sasakitoshinao この記事は100%間違っている。

佐々木俊尚氏の上記ツイートに対するツイッター上での反応のまとめ。


佐々木俊尚氏の上記ツイートに対する湯川さんの反応。(12/01追記)


このまとめを受けた津田大介氏の反応。

26 Nov @tsuda


これ明らかに掲載したTechWaveの問題だな。「寄稿」と称して釣りブログ集めてPV稼ぐガジェット通信と同じ手法。 RT @kanose: 「蔓延する「ソーシャルメディア」の定義 大学生が書いたTechWaveの記事への反応まとめ」 http://htn.to/dTbfMH

私が普段購読しているブログでもいくつか反応がありました。とても興味深い。


こうした議論を受けて、湯川さんも反応。


私の周りでも議論がありました。以下は後輩の見解。

今回の問題は、水谷さんの内容うんぬんよりも、掲載されたところが悪かったような気がします。TechWaveバッシング第二章じゃないかと。

水谷さんの主張は、妥当です。CGMとSNSは、「ちゃうよね」という主張は真っ当というか、当たり前すぎるくらいの主張ですし、「ソーシャルなんとか」を売り文句に変な営業活動してる怪しい会社が「日本に多数あるのは、どうかと!」との意見も、「ですよね~」と、うなずける。

要は、「ソーシャル」って言葉が一人歩きして「ガラパゴス野郎は、意味を取り違えんな」ということですね。まあ、それだけなんですけど、流行りですから。昔でいう電気ブランの「電気」とか、舶来カッケーみたいなワードになってますね。そのうち、ソーシャル・ブームに乗って、「ソーシャル主義」とか火がつくかも知れません。

それで、TechWaveなんですが、釣り記事をいっぱい書いたメディアは、もう、メディアとしてはダメなんだと思います(今のTechWaveは、明らかにそーゆう扱い)。今回のケースでは、水谷さんの意見が、「ダメディアの風に載って炎上した」というのが、本当のところなんじゃないでしょうか。TechWaveじゃなかったら、別にここまで、「ナニクソコノヤロウ」みたいな状況には、陥らなかった気がします。「いい情報は出るとこを選ぶ」と、日経さんが常日頃からテレビで口酸っぱく言っていますように…出るところを選ばないと!

単一の情報だけで物事を判断せず、様々な意見に触れたいところ。今回の事象はソーシャルメディアに対する自分なりの考えを確立・熟成させる機会としては申し分ないですね。

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[2010-12-01]

湯川さんの反応記事を1本追記しました。

2010年11月17日水曜日

ソーシャルニュースの未来

「ソーシャルニュース」というサービスをご存知でしょうか?

ソーシャルメディアの一種で、一言で言えば「みんなで(ソーシャルに)作るニュースサイト」。運営者側がニュースを作成する通常のニュースサイトとは異なり、ニュースサイトやブログに掲載されたニュースへのリンクを、読者による人気順に再編成し、読者からのコメントや評価(レーティング)などとともに提供するサービスです。どちらかと言えば、『はてなブックマーク』や『livedoorクリップ』のような「ソーシャルブックマーク」に近いサービスです。ウィキペディアにはそれぞれ次のように定義されています。

ソーシャルニュース - ウィキペディア


専門記者ではなく一般のユーザー(市民記者)が作成するニュースサイトや、専門の編集者をおかずにユーザーによって投稿された記事をニュースとしてのせていく仕組みをとっているニュースサイトのことをいう。

ソーシャルブックマーク - ウィキペディア


インターネット上のサービスの一つで、オンラインブックマークサービスの発展形。自分のブックマークをネット上に公開し、不特定多数の人間と共有する事で、これらを有益な情報源とすることができる。

ソーシャルニュースは一度ニュースサイトに掲載されたニュースを、再度流通させる役割を担っているため、ニュースサイトにとっては非常にありがたい存在とも言えます。

国内ソーシャルニュース・サービスの代表的なものとしては、以下のようなサイトが存在しています。海外のサービスでは『digg(ディグ)』が有名ですね。


と、前置きが長くなりましたが、先週、リンクシェアの美谷さん(@hiroumi)主催によるソーシャルニュースの勉強会に参加してきました。




リンクシェアの美谷さん、ミクシィの徳田さん、そして実際にソーシャルニュースサイト『ニューシング』を運営されている藤川さんによる現状把握のためのプレゼンの後、2つのグループに分かれてソーシャルニュースについてディスカッションしました。私は「ソーシャルニュース・ビジネスの未来」をテーマにしたグループに参加、もうひとつのグループでは「利用者から見たソーシャルニュース」がテーマとなっていたようです。

ソーシャルニュースの現状について、私が捉えたポイントは次の通りです。

  • SNSやツイッターの普及により、ソーシャルニュースの利用者は徐々に増えてきている
  • ソーシャルニュース運営社の収入源の大半は広告収入。ポータルサイトへのデータ(URLのレーティング情報など)販売による収入も一部ある
  • ソーシャルニュースはサービス毎にターゲットが異なる(ニューシングは「夕刊フジ的なニュースを好む人」、チョイックスは「ジャーニーズのファン」)
  • ソーシャルニュースの利用者には「ソーシャルニュース」を利用している感覚がない(ニュースサイトだと思っている)人が多い

ディスカッションでは次のような議論が展開されました。

  • ソーシャルニュースはそもそもビジネスとして成り立つか?(ソーシャルニュースに未来はあるか?)
  • ソーシャルニュースをより多くの人に利用してもらうにはどうすれば良いか?
  • 低俗なニュースばかりが流通する現状をどうにかして打開できないか?

利用者の視点からは「ソーシャルメディアに流通するニュースには同じような傾向のものが多く、これだけでは情報源としては足りない(世の中の流れがわからなくなる)」といった指摘もありました。

日本でソーシャルニュース・サービスが立ち上がり始めた2006年に、AMNの徳力氏が日本におけるソーシャルニュースの普及について興味深い記事を書かれています。


非常に考えるところの多い勉強会でしたので、後日、自分の考えをブログにアップしてみようと思います。

ご参考までに、当日のプレゼン資料の一部がスライドシェアにアップされています。


以下、他の参加者の方によるブログ記事です。


参加された皆さま、夜遅くまでお疲れ様でした。

2010年11月16日火曜日

キュレーターに求められる特性とスキル

前回の記事に引き続き、今回の記事もキュレーションについて。前回同様、Robin Good氏のブログメディア『Master New Media』から、今回は「キュレーターに求められる特性とスキル」です(キュレーションについてはこちらをご参照ください)。Robin Good氏によるキュレーションに関する一連の記事のなかで最も力が入っている印象を受けました。


以下抄訳のため、正確な情報については英文記事をご参照ください。

まずはキュレーターに求められる特性から。

1. 専門性


キュレーターにとって最も重要な特性が、対象分野に対する専門性だ。専門性が無ければ適切な情報を選別することはできない。専門性はキュレーション活動を通してさらに高められる。調査や研究を続けることで、その分野のエキスパートになった人も出てきている。

キュレーターはエキスパートへの登竜門と言える。キュレーターとしての経験を重ねることで、「迅速な情報及びインフルエンサーの特定」、「専門用語や専門技術に対する深い理解」、そして「関連業界における期待や恐れ、トレンドといった雰囲気の把握」が可能となる。エキスパートを目指すキュレーターにとって、これらは全てかけがえの無いスキルとなるはずだ。

2. 関連性


専門性だけでは読者に対して付加価値を与えることはできない(読者に訴求できない)。キュレーターはそこに、読者の理解を促進するための関連性(ストーリー)を与える必要がある。例えば、キュレートした情報が、業界が抱える問題点やニーズと直接関連付けられていれば、読者の満足度は増すだろう(読者の問題解決に繋げられるかどうか、あるいは実用的かどうかが重要)。この関連性の有無が、アカデミックな情報との最大の違いとなる。

3. 信頼性


信頼性は、キュレーターが持つ専門性、一貫性、そして継続性の結果だ。例えばあなたが私にとって価値のある情報を継続的に提供してくれれば、私はあなたを信頼するようになるだろう。従って、信頼性は特定の分野における問題や興味、必要性に直結するコンテンツやテーマをいち早く理解・発見し、これをキュレートすることによって高めることができる。同じ分野のキュレーターやエキスパートに対して敬意を払うことも忘れてはならない。

続いてキュレーターに求められるスキルについて。ここでは全体の鳥瞰を優先し、個々のスキルについて深く言及することは避けました。

1. 検索スキル


主要な検索エンジンを使いこなし、個人のブログやニュースサイトから情報源を探し出して特定するためのスキル。

ここでは検索エンジンから常に有用かつ最新の情報を得られるよう、各検索エンジンの特性(入力可能な検索条件)を把握したうえで、検索条件入力後のURL(検索結果のURL)を管理しておくことが肝要となる。キーワードや日付、言語、などの条件を駆使し、情報を絞り込む作業にも慣れておいた方が良いだろう。

2. メディア・リテラシ


スパムや広告、プロパガンダ、プロモーション情報など、本質的ではない情報を見抜くこと、そして広く流通しているテクノロジーやサービスを使いこなすことがここに含まれる。

3. コミュニケーション・スキル


「複雑な物事を文章で説明するための力」「読者の理解を促進するためのプレゼンテーション力」「絵図を用いて複雑な物事を表現する力」「読者の声を聞いて理解する力」「読者が所属するコミュニティの動向を把握する力」など、キュレーション活動に必要なコミュニケーションのためのスキル。

4. 編集スキル


「情報を選別する力」「読者の理解を促進するようなストーリーを構成する力」「参照情報・引用情報を適切に活用する力」「冗長な表現を要約する力」など、編集作業のために必要なスキル。

5. セマンティック・スキル


情報を整理・分類し、そこからパターン(トレンドや各情報の重要性)や意味、関連性、読者への価値などを見出す力。ここにはSEOに対する理解も含まれる。

6. ソーシャル・スキル


ソーシャルネットワークを構築、あるいは読者とのエンゲージメントを深めるためのスキル。

7. 情報管理スキル


集めた情報を管理(整理・保存)するためのスキル。今直ぐ必要ではない情報についても、適切に管理しておくことで、必要なタイミングで利用できるようになる。

8. 情報技術スキル


情報の収集や公開に必要な情報技術(IT)の特性を理解し、適切に活用するためのスキル。

前回の記事でもご紹介した通り、キュレーターの業務範囲はとても広く、高い専門性が要求されることもあり、多様なスキルが要求されるようですね。ここまで来ると、やはり専門職とすべきなのでしょう。

さて、キュレーションについては本記事で一応一区切りとなります。お読みいただきありがとうございました。コンテンツ・キュレーターの重要性は今後益々高まってくるはずです(『キュレーションの必要性』を参照)。ジャーナリストにとっては、キュレーションに関するスキルは必要不可欠なものになりつつあるのではないでしょうか。本ブログではキュレーションについてこれまでに何本かの記事を書いてきました。これらがこれからキュレーターを目指される人、あるいはキュレーションを導入するメディア企業において、少しでもお役に立ててれば嬉しい限りです。


最後に、ご参考までにキュレーションに関する良記事をピックアップしておきます。こちらも是非。