2011年6月9日木曜日

#book イノベーションの技法

先日、少し前にある方にお勧めいただいた書籍『発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法』をようやく読了しました。本書には米国で数々のイノベーションを支援してきた会社・IDEOが実践しているイノベーションの技法が紹介されているのですが、これがなかなかエキサイティングな内容となっています。私が購入したのは第10版でしたので、結構ロングセラーになっているのではないでしょうか。

IDEOについてはウィキペディアにまとまっています。アップルもクライアントのようですね。

IDEO - ウィキペディア


IDEO(アイディオ)は、アメリカ合衆国カリフォルニア州パロアルトに本拠を置くデザインコンサルタント会社。パロアルトの他に、サンフランシスコ、シカゴ、ニューヨーク、ボストン、ロンドン、ミュンヘンそして上海に拠点を持つ。IDEOは製品、サービス、環境そしてデジタルエクスペリエンスのデザインへの支援を行っている。加えて、マネジメントコンサルティング事業を強化している。

以下、本書の内容を少しご紹介します。

本書によれば、イノベーションとは「これまでの製品やサービスにはない、新たな経験を提供すること」と言えそうです。

10章 新しい経験をつくりだす (P216)


革新的な会社や強力なブランドは、「経験」という言葉につながっていることがわかるだろう。

ちなみに本書で「イノベータ」としてよく引き合いに出されるのはアマゾンやデル、そしアップルです。本書は9年前に出版(初版は2002年7月)されたのですが、こうした企業が未だに元気なことを考えると、イノベーション恐るべし、ですね。

ラスベガスからも多くを学べるようです。

10章 新しい経験をつくりだす (P226)


経験を企画し提供することがどれほど効果的かを観察するのに、ラスベガス以上の場所はないだろう。

(中略)

どんな分野の仕事や産業も、小売業や業務用製品の販売業でも、ラスベガスから多くのことを学べる。

(中略)

古いラスベガスは滅んだ。当たり前のことだ。人間を虫けらのように扱うと、最後にはたいてい失敗する。ラスベガスがやったのは、この町自体を徹底的につくりなおすことだった。

それではどうすれば、綺羅星のような企業のごとく、そしてラスベガスのようにイノベーションを起せるのか?

ここでまず最低限必要なのは、ライトスタッフを集めたチーム(本書では「ホット・チーム」と表現されています)のようです。イノベーションを起すには、クリエイティビティを発揮し、インスピレーションを湧かす必要があるらしいのですが、これは絶対に一人ではできない、とされています。

そして本書では「イノベーション」や「クリエイティビティ」「インスピレーション」などと同様に、頻出する単語が3つあります。私はこの3つの単語がイノベーションを起すためのポイントだと捉えました。すなわち、

  • 徹底的な「観察」
  • 良質な「ブレインストーミング」
  • 山のような「プロトタイプ製作」

いずれの単語も一つの章を割いて詳細が説明されています。とは言え、一番大切なのは、やはり楽しむことのようです。

第15章 完璧なスイングを身につける (P320)


次に難しいプロジェクトに深くかかわるときには、イノベーションの真のスピリットを忘れないように。

そう、それは真剣に楽しむことである。

ということで、詳細については本文にお譲りすることとし、本書に書かれている内容を端的にまとめると、おおよそ次のようになります。

イノベーションとは、新たな経験を提供すること。イノベーションを生み出す秘訣は、まずホットなチームを組織し、徹底的な観察から始め、良質なブレインストーミングを繰り返し、山のようにプロトタイプを製作することだ。もちろん、楽しむことを忘れずに。

理論と実践は正反対、やってみなければ何とも言えませんが、個人的な印象としては実践してみる価値はかなりありそうです。イノベーションは起こさないより起こした方が楽しいですからね。とりあえず、出来るところからやってみましょうか。本書に書かれているイノベーションの技法は、製品にでもサービスにでも何にでも適用できるそうです。イノベーションを起すことにご興味をお持ちの方は是非ご一読を。