Pages

2012年4月5日木曜日

地方紙記者の底力に圧倒された飯南町の夏

今更ながら昨年8月、私は地方紙記者とのガチンコバトルに挑み粉々に粉砕されました。

バトルフィールドは、出雲空港から車で約1時間、山陰の山々に囲まれ風光明媚な景色が広がる島根県飯南町。種目は記事執筆。ミッションは「参加者は各自事前に取材テーマを定め、1泊2日で島根県飯南町を取材し、JBPRESに掲載される記事を執筆せよ」というもの(JBPRESS:Japan Business Press、新興のオンラインメディア)。私も運営委員として参加している日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)主催の「ジャーナリストキャンプ2011」での話です。



ジャーナリストキャンプで記事執筆ミッションに挑んだのは、地方紙の記者6名のほか、PRパーソン、NPO関係者、ネットメディアの営業、そして私の10名。

ここで存分に力を発揮したのが地方紙の記者でした。普段から記事を書いているとはいえ、文字数制約の有無や、読まれるための工夫の仕方の違いなど、新聞とネットでは記事の書き方は全く異なるため、相当ハードルは高かったのではないかと思われます。実際、記事を書きあげるまで何度も書き直しを繰り返したり、再取材を試みるなど、かなり苦労されていました。地方紙の記者がオンラインメディア向けの記事を書く難しさについては、JCEJ代表の藤代さんも指摘されています。


しかしながら、最終的には地方紙記者全員の記事が見事JBPRESSに掲載されました。しかも単に掲載されただけではなく、いずれの記事も多くの人に読まれました。掲載された記事から共通して感じるのは「島根県飯南町という小さな町での事象が、身近なこととして捉えてもらえるように(ネット上で広く読まれるように)一般化されている」こと。今読んでも良い記事ばかりです。


テーマを明確に設定し、丹念な取材を繰り返し、センセーショナルな手段を採ることなく多くの人に読まれる記事を執筆する、そのポテンシャルを持つ地方紙記者のこれからの活躍が楽しみです。みなさん、本当に魅力的なかたでした。


ところで私はと言えば…残念ながらミッションは失敗に終わりました。

私には取材経験も記事執筆経験もありませんでしたが、普段から取材に近いこと(システムを設計する際に実施する業務関係者に対する取材)や記事執筆に近いこと(要求仕様書や要件定義書の執筆)はやっていたため、まぁなんとかなるだろうとちょっと思っていました。

しかし、なんともなりませんでした。記事を書きあげることすらできなかった、という散々な結末。敗因はきりがないほどありますが、事前準備が不十分で記事にする事象(地方が抱える問題点)を明確に特定できなかったこと、そして粘り強く記事を書きあげる胆力が無かったことが最も大きかったのではないかと考えています。

とは言え私はジャーナリストやニュースコンテンツ制作者をシステム面などから支援する仕事をしているため、テーマ設定から取材・記事執筆までの一連のプロセスを経験できたのは良かったのですけどね。

飯南町は自然もさることながら、そこに住む人たちもとても素敵でした。飯南高校の報道部は強い!


飯南町で私の拙い取材にご協力いただいたみなさま、記事を完成できず本当に申し訳ありませんでした。以下、私の記事の残骸となります。この書き出しの続きは口頭で…

"愛する故郷のために" ネットでイノベーションを起せるか? - 「IT人材」が鍵を握る  
人口減少に転じた日本。都市部ではまださほど大きな影響を感じることは無いが、人口流出が続く地方では深刻な問題となっている。今や人口1万人以下の市町村は400を軽く超え、そのほとんどは過疎化、高齢化にあえいでいる。このままでは縮小均衡に陥り、最悪、"故郷"が無くなる。 
こうした厳しい状況のなか、故郷を愛する人たちは手をこまねいているばかりではなかった。故郷に人を呼び寄せ、再び活気を取り戻すために、ネットを武器に動き出した人々がいる。しかしその道のりは順風満帆ではないようだ。 
人口5千人強、少子高齢化が進み限界集落も点在する島根県の飯南町において、そこに活気を取り戻すべくネットを駆使する若者たちを取材した。地方はネットでイノベーションを起せるか、システムエンジニアの視点からその可能性を探る。

さて、JCEJでは今年もジャーナリストキャンプを開催します。まずは今月末に、入社3~5年目の社会人を対象とした若手向けのジャーナリストキャンプを予定。


JCEJのブログにジャーナリストキャンプ2011の記録がまとめられています。雰囲気を知りたい、というかたはこちらもご参照ください。


ジャーナリストキャンプ2011とはプログラムの内容は異なりますが、価値観の異なる多様な人たちとこれからのメディアについてじっくり議論する、またとない機会となるはずです。