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2013年7月22日月曜日

緊急検証―参院選2013、池上無双の嵐は吹き荒れたのか?―

池上無双の嵐、「選挙特番視聴率競争~参院選2013の陣~」でも吹き荒れたようですね。視聴率は民報のなかで「圧勝」と、早速伝えられています。参院選当日は早々に投票を終え、東京選挙区で山本太郎氏の当確が出たときは物見遊山に近所にある選挙事務所へ足を運びましたが、それ以外の時間帯は私も池上特番を視聴していました。




ネットではどうだったのか、気になるところです。おなじみのGoogleトレンドで調べてみました。7月は集計中でまだ「速報」のため正確性は低いのですが、昨年末の衆院選に比べると、意外なことに「惨敗」と言えるほどの落ち込みとなっています(「選挙 NHK」17ポイント、「選挙 朝日」10ポイント、「選挙 毎日」8ポイント、「選挙 Yahoo」32ポイント、「選挙 池上」5ポイント)。


[図1] 検索トレンド対決(Googleトレンドの検索結果、2013年7月22日午後12時現在)


投票率が52.61%と低かったせいでしょうか。ネット選挙報道自体、昨年の衆院選ほど注目されておらず、全体的に低調ですが、「選挙 池上」は特に低調です。来月に改めて確認してみる必要がありますね。

とは言え、池上特番ページのシェア数(注目度)はなかなかのものです。図2は主要な選挙サイトのトップページにおける、フェイスブックシェア数(FBシェア数)、ツイッターツイート数(ツイート数)、はてブ数の伸び(公示日と選挙翌日の差分)を表したものです。


[図2] サイト別シェア数の伸び(公示日と選挙翌日の差分、2013年7月22日午後12時現在)


これを見ると、はてブの伸びはNHK選挙サイトが、FBシェア数とツイート数はYahoo!JAPAN選挙サイトが、それぞれトップとなっていますが、池上特番ページは「ただのぺら一の予告ページ」であるにもかかわらず、FBシェア数ではNHK選挙サイトを上回り、はてブ数も朝日新聞の参院選特設サイト毎日新聞の参院選特設サイトを上回っており、「なかなかのもの」であることがわかります。

さらに池上特番と言えば、定番の「まとめ記事」があります。図3は、衆院選2012での無双ぶりをまとめた記事都議選2012での無双ぶりをまとめた記事、そして今回(参院選2013)の無双ぶりをまとめた記事、それぞれのPVを一覧にしたものですが、参院選での無双ぶりをまとめた記事は桁違いに読まれているのがわかります。もう圧倒的です。(※この記事をアップする前に確認したところ、既に94万PVを超えており、いまなお上昇中)


[図3] 池上彰氏の無双ぶりをまとめた記事のPV(2013年7月22日午後12時現在)


そしてまとめ記事を「池上無双への援軍」として考慮すると、FBシェア数、ツイート数、はてブ数、いずれも全ての選挙特設サイトを抜き去り、「圧勝」となります。


[図4] 池上無双への援軍(2013年7月22日午後12時現在)


参院選2013の陣、池上無双の嵐はネットでも吹き荒れた、そう捉えても差し支えないのではないでしょうか。

ところで、Googleトレンド(図1)においてYahooがNHKを上回り、シェア数の伸び(図2)でもはてブ数以外は1位と、ネット選挙報道におけるYahooのプレゼンスが高まってきているのがわかります。先月の都議選あたりから潮目が変わってきたのかもしれません。

参院選2013、ネット利用動向から見た政党の特徴

ネット選挙活動解禁後初の国政選挙となった参院選2013。ソーシャルメディアに対する取り組みは党ごとにだいぶ異なっていたようですね。代表的なソーシャルメディア、「ブログ」「ツイッター」「フェイスブック」の利用動向を調べてみました。

[図1] 候補者の政党別ソーシャルメディア利用率(議席を保有している政党)

図1は候補者の政党別ソーシャルメディア利用率(議席を保有していた政党)を表しています。これを見ると、自民のフェイスブック利用率(オレンジ)は全体平均の50.6%に比べて20%以上高い75.6%と全政党中最も高く、フェイスブックを利用した情報発信に力を入れようとしていたことがわかります。総裁がフェイスブックを積極的に利用している、その影響があったのかもしれません。

一方、みんな、生活、共産、維新は、ツイッターの利用率が高くなっていました。

このなかで注目したいのは共産です。共産はブログの利用率も高く、ややインナーサークル的な要素があるフェイスブックはあまり利用せず、情報を広く届けようとする意思を感じました。自民とは対照的ですね。

図2(参院選候補者のツイッターアカウント開設数の推移)に示すように、ツイッターアカウントの開設数は2013年に入ってから急増しており、多くの候補者が参院選に合わせ駆け込みでアカウントを開設していました。

[図2] ツイッターアカウント開設数の推移

このようななか、図3に示すように、共産候補者の2013年の開設数は低く、以前からツイッターを利用した情報発信に力を入れていたことがわかります。今回の参院選、共産は議席数を大きく伸ばしましたが、この辺りの取り組みが影響しているのかもしれません。まぁ、ここで言及しているのは「何を使っていたか」であり、「どう使っていたか」を別途調査してみなければ正確なところはわかりませんが。

[図3] 2013年のツイッターアカウントの開設状況

もう一点、気になる傾向があります。無所属の候補者や小さな政党に属している候補者のソーシャルメディア利用率は、大きな政党に属している候補者に比べて、非常に低くなっています。例えば、ブログの利用率。全体平均はおよそ65%ですが、無所属の候補の利用率はおよそ33%、小さな政党に所属する候補の利用率は50%と、いずれも低く抑えられていました。ツイッター利用率、フェイスブック利用率でも同様の傾向となっています。

[図4] 候補者の政党別ソーシャルメディア利用率(その他)

ソーシャルメディアは本来「持たざるも」にとっての武器となるはずですが、残念ながらそうはなっていないようです。ソーシャルメディアの利用をサポートするような組織力の有無が影響しているのかもしれません。正確なところはわかりませんが、財力も影響しているとなると、「ネット選挙活動にはお金がかからない」とは単純には捉えることはできないのかもしれません。

ちなみに、男女別ソーシャルメディアの利用率は図5のようになりました。女性候補者の方がやや利用率が高いですね。

[図5] 候補者の男女別ソーシャルメディア利用率

年代別では、若い世代の利用率が高い傾向がありました。70代も頑張っていますね。

[図6] 候補者の年代別ソーシャルメディア利用率

最後に興味深いファクトを一つ。

ブログを開設している候補者は、全候補者433人のおよそ65%にあたる282人。このうち180人がブログサービスを利用しているのですが(残りの102人はレンタルサーバなどにブログ用のCMSを導入)、その半分以上が、ブロガーでもなく、はてなダイアリーでもなく、Livedoorブログでもない、「アメブロ」を利用していました。その数驚きの96人、利用率にしておよそ53%。2番目に利用されているブログサービスはFC2で22人、3番目に利用されているのはgooブログで10人となっており、アメブロが明らかに突出しているのがわかります。ブログサービスの国内シェアでもわかれば比較してみたいところですが。この業界に精通する後輩が言うには、サイバーエージェントは結構プロモーションしてるらしいのですが、その成果なのですかね。

[図7] 候補者が利用しているブログサービス

ちなみにブログと言えばコメント欄。「候補者は特に炎上を恐れてコメント欄は閉じているんじゃないのかな」などと邪推していましたところ、それほどでもなく、半数以上(全282あるブログのうち、158のブログ)はコメント欄をちゃんと設置していす。対話姿勢はありました。

この記事で利用しているデータをGoogleスプレッドシートにまとめています。よければご活用ください。もし間違いに気付かれましたら、指摘していただけると助かります。

2013年7月8日月曜日

池上無双の嵐、参院選でも吹き荒れるのか?

第23回参院選が公示され、日本は選挙モードとなりました。今回の国政選挙からネットを利用した選挙活動が解禁となったこともあり、全国各地で各党党首の第一声が響く中、ツイッターやフェイスブックには立候補者のメッセージも乱舞しました。

気になるのが、選挙報道です。報道各社は、新聞やテレビだけでなく、最近ではネット選挙報道にも力を入れており、選挙そのものとは別に、これらを吟味するのも結構楽しかったりします。

昨年の衆院選では、天下無双の質問力でなみいる政治家を一網打尽、栄えあるギャラクシー賞を受賞した池上彰氏による選挙特番が、民報選挙特番の視聴率No.1を獲得しただけでなく、Yahooが実施したオンラインアンケートでも1位を記録するなど、「池上無双」としてネット上でも話題となりました。

Googleトレンドによると、衆院選のあった2012年12月、「選挙 池上」の検索頻度(49ポイント)は、自社サイトでボートマッチアプリを展開した「選挙 毎日」(毎日新聞、16ポイント)、ビリオメディアを展開した「選挙 朝日」(朝日新聞、24ポイント)を軽く上回り、ネット選挙報道の雄「選挙 Yahoo」(51ポイント)に肉薄、ネット上でも注目されていたことがわかります。「テレビの影響力は大きい」のはわかりますが、「選挙 古館」や「選挙 TBS」が圏外にあったことから、「選挙 池上」のネット上での強さは一歩抜けていた、と言い切っても良いのではないでしょうか。


※Googleトレンドのオリジナルページはこちら


先月の都議選時に放映されたMXテレビでの無双ぶりをまとめた記事は、放映範囲が限定されていた渇望感からか、昨年の衆院選時の無双ぶりをまとめた記事を超えるアクセス数をたたき出すなど、その勢いはいまだ衰えていません。


※PV数は公示日の翌日(7月5日)の午後6時に確認


今回の参院選、池上特番はどこまで話題をさらうのか。


一方、これを迎え撃つ報道各社は、ネット選挙報道に力を入れてきています。前回の衆院選、新聞社対決を制したのは朝日新聞、2位は毎日新聞でした。


※Googleトレンドのオリジナルページはこちら


その両社、今回の参院選では、朝日新聞は東大の谷口研究室と、毎日新聞は立命館大学の西田亮介氏と、それぞれタッグを組み、特設サイトを設置してツイッター分析やボートマッチアプリを展開、いままさに熱い選挙報道を繰り広げています。


ネット選挙報道の本命NHK。じりじりと選挙報道でもプレゼンスを高めるYahoo。ツートップに割り込まんとする池上特番。朝日新聞と毎日新聞はどこまで食い込めるか――。選挙報道における仁義なきオンラインアテンション争奪戦の結果はいかに。

各特設サイトトップページのシェア数について、公示日(7月4日)の段階では、Facebookの1位が池上特番、Twitterの1位が朝日新聞、そしてはてブの1位が毎日新聞、となっていました。が、ほとんど差はなく、がっぷり四つといったところでしょうか。


※シェア数は公示日(7月4日)の午後6時にGoogleChromeのプラグインで確認
※[*]NHKとYahooは選挙共通サイトの(今回の参院選で新たにつくられたわけではない)ため、参考値


投票日となる7月21日は、粛々と投票を済ませ、選挙特番のはじまる夜8時を待ちたいと思います。

2013年6月10日月曜日

官公庁の統計データ、調査と発表のタイムラグは「あり過ぎ」なのか―ブラウザとエクセルで試す『次世代統計利用システム』

6月10日、統計データを提供するウェブサービス『次世代統計利用システム』の試験運用がはじまりました。私は常々「官公庁の統計データについて、調査と発表のタイムラグがあり過ぎる」と思っていたのですが、早速検証してみたいと思います。システムのつくりにやや問題はありそうですが、とりあえずやってみましょう。用意するのはブラウザとエクセルで十分です。


現時点で利用可能なデータセットは総務省が発表している一部統計データに限られています。

今回の試行運用で利用可能な統計データは、国勢調査、労働力調査、消費者物価指数、家計調査など総務省統計局所管統計の約3万2千表のデータです。

また、利用可能なAPIの種類も制限されています。

API名 状況 概要
通常API 使える 統計データをXML、JSON(P)で提供する機能
SDMX API まだ使えない 統計データをSDMX(Statistical Data and Metadata eXchange)で提供する機能
LOD API まだ使えない 市区町村コード情報をLOD(Linked Open Data)で提供する機能

とは言え、データの中身を確認するぐらいであればこれでも十分。

それでは早速。事前準備は、利用登録し、アプリケーションID(appId)を取得するだけでOKです。あとは仕様書に従ってURL文字列を作り、ブラウザで開けばその場でデータを取得できます。このお手軽感は嬉しい。通常APIで使える機能は5つありますが、今回利用するのは、サービスに登録されている統計表の一覧を取得する「統計表情報取得」機能です。

機能名 機能PATH 概要
統計表情報取得 getStatsList サービスに登録されている統計表の一覧を取得する機能。【API解説】次世代統計利用システムで提供している統計表の情報を取得します。リクエストパラメータの指定により条件を絞った情報の取得も可能です。
メタ情報取得 getMetaInfo 統計表の情報(メタ情報)を確認する機能。【API解説】指定した統計表IDに対応するメタ情報(表章事項、分類事項、地域事項等)を取得します。
統計データ取得 getStatsData 統計表を取得する機能。【API解説】指定した統計表ID又はデータセットIDに対応する統計データ(数値データ)を取得します。
データセット登録 postDataset 【API解説】統計データを取得する際の取得条件を登録します。統計データの取得における絞り込み条件を「データセット」として指定することで、取得条件を省略することができます。
データセット参照 refDataset 【API解説】登録されているデータセットの絞り込み条件等を参照します。データセットIDが指定されていない場合は、利用者が使用できるデータセットの一覧が参照可能です。

全ての統計表を対象にすると大変な量のデータとなってしまいますし(約3万2千件)、官公庁も最近頑張っているようなので、昨年(2012年)1年間に公開された統計表について調べてみることにしました。URLは以下の通り。${APP_ID}には自分のアプリケーションIDを代入します。
 
http://statdb.nstac.go.jp/api/1.0b/app/getStatsList?appId=${APP_ID}&lang=J&openYears=2012

結果はXMLで取得できます。Chromeを使うとこのような感じ。


2012年に発表された統計表は1260個ありました。あとは取得したXML形式の一覧データをエクセルに展開し、各統計データの「調査日(SURVEY_DATE)」と「公開日(OPEN_DATE)」を比較し、分析すれば結果は出るはずです。エクセルの変換機能は素晴らしいですね。


全ての統計表は、特定のデータセットに含まれており、多くの場合データセットごとにまとめて公開されることから、ここではデータセット別に発表日とタイムラグをみてみます。複数回にわけて発表されたものについては発表日は「複数」となります。結果は以下の通りとなりました。

データセット名 発表日 タイムラグ
国勢調査(2010年) 2012/04/24 [第1弾]
2012/01/31 [第2弾]
2012/07/31 [第3弾]
2012/06/26 [第4弾]
2012/11/16 [第5弾]
2012/04/26 [第6弾]
2012/01/30 [第7弾]
1年超
住民基本台帳人口移動報告(2012年3月現在) 2012/04/26 1カ月以内
人口推計(2011年10月1日現在) 2012/04/17 1年以内
労働力調査(2010年) 2012/01/31 [第1弾]
2012/03/30 [第2弾]
2012/04/27 [第3弾]
1年超
社会生活基本調査(2011年) 2012/12/21 1年以内
個人企業経済調査(2011年) 2012/07/10 1年以内
科学技術研究調査(2010年) 2012/10/12 1年超
科学技術研究調査(2012年) 2012/12/14 1カ月以内
サービス産業動向調査(2011年度) 2012/11/29 1年以内
事業所・企業統計調査(2006年) 2012/03/19 1年超
経済センサス-基礎調査(2009年) 2012/11/08 1年超
消費者物価指数(2011年) 2012/01/27 1カ月以内

1カ月以内3つ、1年以内4つ、1年超5つ。頑張っていると言えなくもなく、まだまだ頑張れると言えるようであもる…微妙です。検証結果は「微妙」です。さらに多くのデータセットが登録されることを待ちましょう。公開が進めば省庁別に公開速度を評価してみても面白いですね。評価がプレッシャーとなり、公開速度がどんどん速くなるかもしれません。