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2010年5月26日水曜日

国内の電子出版事情を把握する

「電子書籍を取り扱う(であろう)企業の情報システム担当者」が適切なシステム戦略を立案するためにも、激変する電子出版事情は把握しておきたいところ。そこで本ポストでは今現在展開されている電子出版に関する議論につい少しまとめてみました(リンク集に毛の生えたようなものですが…)。皆さまが電子出版を検討する上で参考になれば幸いです。

■ 電子書籍は本当に普及するのか?

ブログメディアTechWave編集長の湯川鶴章氏はブログ記事の中で「電子書籍の普及は必然であり、議論の論点は電子書籍が普及する時期である」とする考察を提示されています。
ITジャーナリストの佐々木俊尚氏は著書「電子書籍の衝撃」の中で、AmazonのKindleやAppleのiPadといった高性能の電子書籍リーダ、そして利便性の高い電子書籍の流通プラットフォームが登場したことにより、「書籍のアンビエント化」すなわち「読みたい(あるいは読むべき)書籍を、いつでも好きな時に購入でき、いつでも好きな時に読める環境の整備」が進み、そのことが電子書籍の普及を加速させる、としています。
電子書籍の普及という観点では以下の記事も参考になります。
どうやら電子書籍の普及自体は既定路線になりつつあり、その上で「いつ」そして「どのように」普及するかを見極める必要がありそうです。

■ 電子出版が出版業界全体に与えるインパクト

電子書籍が普及すると、現在の出版業界はどうなってしまうのか…この議題についても多くの議論が展開されています。ITmediaオルタナティブ・ブログASSIOMAの大元隆志氏はブログ記事で「デジタル化でコンテンツ流通のパラダイムシフトが起きる」と指摘されています。
電子出版のコスト構造については、磯崎哲也氏がブログ記事が大いに参考になります。安易な取り組みは危険だということがわかります。
「日本の3年先を行く」と言われているアメリカの現状についても併せて把握しておきたいところです。
■ 電子出版の課題

「海賊版の流通」や「流通フォーマットの未整備」など、電子出版にはまだまだ解決すべき課題があります。課題の本質を押さえた上で対処していきたいところです。
本観点は電子出版を推進する上で非常に重要なものであると思われますので、別途改めてまとめてみたいと思います。

■ 電子出版の国内事例

最後に国内における電子出版への取り組み事例をまとめておきます。Discover21のように特定の電子書籍流通プラットフォームに依存しない(自前の電子書籍流通プラットフォームを用意する)形態も、今の段階では戦略として「あり」なのかもしれません。
電子出版にはまだまだ不確定要素が多く、なかなか踏み込めない状況であるのは確かです。しかし一方で検討に明け暮れていると勝機を逸してしまうリスクを高めます。有る程状況の把握が済んだ段階で、直ぐにでも行動に移したいところですね。

2010年5月22日土曜日

#book わかりやすい文章のポイント

少し前に池上彰氏が著した書籍に、文章をわかりやすくするためポイントがいくつか紹介されていました。


これらはそのまま「わかりやすいブログ記事にするためのチェックリスト」として使えそうでしたので、備忘録としてここにまとめておきます。本の中では章を跨いで(第6章と第7章)飛び飛びに記載されていますが、まとめると次のようになります。

  1. カタカナ用語は極力使わないようにする
  2. 「〜性」「〜的」を使う場合には具体例を示す
  3. 漢語表現や四字熟語の乱用は控える
  4. 接続詞は極力使わない
  5. 「が」を順接で使わない

以下、簡単に解説しておきます。

1.カタカナ用語は極力使わないようにする
カタカナ用語は人によって捉え方が異なる場合が多々ある。また、特定の業界でのみ使われているカタカナ用語を、その業界に属していない人に対して使った場合、使われた相手は煙に巻かれたと感じ、不快に感じるかもしれない。カタカナ用語を使うのは、互いに通じる相手だけに限る。

2.「〜性」「〜的」を使う場合には具体例を示す
「創造性」「必要性」「生産性」あるいは「機能的」「絶対的」「政治的」のような言葉は具体的に何を意味しているのか、曖昧な場合が少なくない。こうした言葉を使うときには、その意味が指す内容を具体的に説明する事で相手の理解度が深まり、意図が十分に伝わるようになる。

3.漢語表現や四字熟語の乱用は控える
若い人に対して漢語表現や四字熟語を使うと、通じないことが多々ある。相手の年齢によって使い分ける必要がある。また、例え通じる相手に対してであっても、カタカナ表現と同様に乱用すると何を言っているのかが分かりにくくなる。「スパイス」として使う程度にするべき。

4.接続詞は極力使わない
接続詞が多い文章は幼稚に見える。特に「そして」「それから」「ところで」「いずれにしても」。文章の論理が続いていれば、あるいは時間の経過が明らかならば、「そして」や「それから」を使わなくてもスムーズな文章になるはず。始めは難しくても接続詞を極力使わないように訓練することで、論理的で読みやすい文章が書けるようになる。

5.「が」を順接で使わない
「が」を順接で使った場合、それは論理的な表現ではない。文章がわかりにくくなる。以下、駄目な例。

  • 今日は良い天気ですが、お元気でしょうか。
  • 彼は仕事もできるが、スポーツもできる。
  • 当店でお買い物いただくと、お手持ちのカードにポイントがつきますが、水曜日は二倍のポイントがつきます。


最後に、私が普段気をつけている次のポイントを追加しておきたいところです。

  1. 「こと」を極力使わない

これまでにポストしたブログ記事を確認したところ、チェックリストに違反している文章が散見されました。結構気をつけていたつもりだったのですがまだまだのようです。

ちなみに本書には他にも「文章力をアップさせる方法」や「解りやすい図を描くポイント」、「コミュニケーション力の磨き方」など、「伝える力」を伸ばすためのポイントが非常に分かり易く説明されています。ただ一方で理論についてはあまり深く言及されておらず、若干物足りない内容でした。さらに深く「伝える力」を追求してみたい、という方には以下の書籍がお勧めです。


いずれも世代を超えて読み継がれている名著です。未読の方は是非。

2010年5月21日金曜日

電子書籍流通プラットフォームの調査結果 (2010年05月21日現在)

前回の記事でも少し触れましたが、電子書籍を極力多くのユーザにリーチさせるために重要となるのが電子書籍プラットフォームの選択です(もちろん全てのプラットフォームで流通させる、という手もあります)。そこで今回は「電子書籍を取り扱う(であろう)出版社あるいは著者」の視点から、電子書籍流通プラットフォームの現状について調査してみました。調査対象はAmazon Kindle Store、Apple iBookStore、Google Editions、Sony Reader Store、Barnes&Noble、そしてeBookJapanです。「規模が大きくなる事が予想され、今後国内でシェアを伸ばす、あるいは日本に進出してくるであろう電子書籍プラットフォーム」を選別しました。

ということで、調査結果は以下の通りです。

流通
プラットフォーム
登録可能
フォーマット
日本対応 リーダ /
リーダプラットフォーム
備考
Amazon Kindle Store PDF
html
word
・Kindle/KindleDX (専用端末)
・アプリ on iPhone/iPodTuch
・印税率は35%(条件付きで70%)
・「アプリ on Android」が今夏リリース予定
・日本対応「△」:頑張れば何とか出版可能
Apple iBookStore ※事業者により異なる [不明] ・アプリ on iPad (iBooks) ・印税率は70%
・Apple指定の事業者(Apple Certified eBook Aggregator)が提供するサービスを利用する
Google Editions [不明] [不明] [不明] ・印税率は63%
・2010年上期オープン予定(参考サイト
Sony Reader Store [不明] [不明] ・Sony Reader (専用端末)
Barnes&Noble [不明] [不明] ・NOOK (専用端末)
・IREX DR800SG (専用端末)
・アプリ on Android
eBookJapan PDF
html
・アプリ on Windows
・アプリ on Mac
・アプリ on iPhone/iPodTouch
・アプリ on Android
・印税率は仲介する出版社によって異なる
・中国語圏に展開中

かなり意気込んで調査を開始したのですが、現段階ではまだまだ日本語の情報が少なく往生しました([不明]の部分について情報提供大歓迎です!)。世界シェア、及び国内シェアについても正確な数字は分かりませんでした。全般的に、判断材料とするにはまだまだ情報が少ないですね。現時点で正式に日本語の電子書籍流通に適した電子書籍流通プラットフォームは少ない(ここではeBookJapanのみ)こともあり、今はまだ様子見でも良いかもしれません。今のうちに著作権の整理をしておきたいところです。

規模が比較的小さいため今回は調査対象外としましたが、上記以外にも日本産の電子書籍流通プラットフォームがいくつか存在します。
電子書籍流通プラットフォームのシェア争奪戦は今まさに始まったばかり。これから激化する事が予想されます。引き続き調査を継続したいと思います。

なお、本記事の執筆に際して参考とさせていただいたサイトは以下の通りです。全体を通して利用者視点の情報はまだ多い方なのですが、「日本の出版サイド視点」の情報は非常に少ない印象です。良い情報源などあれば是非ご教授下さい。

■ Amazon Kindle Store
■ Apple iBookStore
■ Google Editions
■ Sonny Reader Store
■ Barnes&Noble
■ eBookJapan
■ 電子書籍リーダのシェアについて
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[2010-05-22 11:39]
記事下部のリンク集に「電子書籍リーダのシェアについて」を追加しました。

[2010-05-22 11:58]
電子書籍関連のリンク集がINTERNET watchに掲載されていました。
無料で読める電子書籍が特集されています。

2010年5月18日火曜日

電子書籍の流通構造を把握する

Kindleの上陸やiPadの国内販売開始を背景に、佐々木俊尚氏(@sasakitoshinao)の著書「電子書籍の衝撃」のヒットも相まって、ブログやツイッター上では電子書籍に関する無数の議論が展開されています。現在はまだ結論が出揃っているとは言い難い状況ですが、「ビジネス上の理由から、出版に携わる企業は遅かれ早かれ電子書籍に対応する」ことは既に既定路線になっていると言えそうです。と言う事で、「電子書籍を取り扱う(であろう)企業の情報システム担当者」としては、ここは冷静に先を見越して具体的なシステム化戦略を策定しておくべきだと考えました。なお、電子書籍を巡る技術的な現状については過去の記事もご参照下さい。
さて、電子書籍を取り扱うためのシステム化戦略策定の出発点として、まずは電子書籍の流通構造を把握しておくことが肝要だと考えました。これまでに集めた情報を基に電子書籍の流通構造をクラス図で表現すると次のようになりそうです。なお、全体構造の把握を目的としたため、余分だと判断した情報は全て排除しています。

eBookStructure_r0

図中の用語の定義は次の通りです。

■ ${電子書籍原本所有者}
電子書籍の原本(コンテンツ)を保有し、販売する権利を持つ法人・個人。主に出版社が該当するが、著者が直接${電子書籍原本所有者}となるケースもある。${電子書籍原本所有者}は複数の${電子書籍原本}を保有し、個々の${電子書籍原本}には一つの${著作権情報}が紐付けられる。

■ ${電子書籍流通プラットフォーム}
電子書籍を流通させるためのプラットフォーム。iBookStore、Amazon、Barnes&Noble、Google Editions、及び日本のeBookJapanなどがある。携帯電話から直接利用可能な電子書籍書店や青空文庫プロジェクト・グーテンベルグもこれに該当する。
${電子書籍原本所有者}${電子書籍流通プラットフォーム}に自身が管理する${電子書籍原本}を登録する。${電子書籍流通プラットフォーム}で管理されている${流通電子書籍}には、当該${電子書籍流通プラットフォーム}で既定された${DRM}が付与されている事がある。

■ ${電子書籍リーダ}
${電子書籍リーダプラットフォーム}上で稼働する電子書籍を閲覧するためのソフトウェアで、iBookやKindleアプリ、Adobe Readerなどがこれに該当する。${電子書籍リーダプラットフォーム}はPCやMac、iPad、ウェブブラウザといった、${電子書籍リーダ}を動作させるためのプラットフォームで、KindleやNOOKなど${電子書籍リーダ}${電子書籍リーダプラットフォーム}が一体になった製品も存在する。
${電子書籍リーダ}で電子書籍を読むためには、${電子書籍流通プラットフォーム}から${流通電子書籍}を取得(購入)する。${電子書籍リーダ}には従属する${電子書籍流通プラットフォーム}を一つ以上持つ場合がある(「iBookはiBookStoreに従属する」「KindleアプリはAmazonに従属する」など)。なお、インターネットから${電子書籍リーダ}に対応したファイルをダウンロードして読むことができるものもある。

ここで、電子書籍を取り扱うためのシステム化戦略を策定する上で押さえておきたいポイントを以下にまとめておきます。
  • リーチしたいユーザが多く持つ${電子書籍リーダ}及び${電子書籍流通プラットフォーム}をメインターゲットとし、まずはここに対応させる事に主眼を置く。
  • ただ一方で、今後どの${電子書籍リーダ}(あるいは${電子書籍流通プラットフォーム})が勢力を拡大するかは不透明なため、出来れば複数の${電子書籍流通プラットフォーム}に対して${電子書籍原本}を登録することを視野に入れる。
  • そのためには極力多くの${電子書籍流通プラットフォーム}に登録可能なフォーマットで${電子書籍原本}を管理しておきたい。
  • 電子書籍はそれほど大きな利益を上げるビジネスには成り難く、また現在はまだまだ黎明期にあたるため今後も多くの仕様変更も予想される。従ってコストを抑え、変化に強い実現方法を検討する必要がある。
なお、「電子書籍の傾向と対策」でも少し触れましたが、インタラクティブ性を高めたい場合には、無理に${電子書籍リーダ}を特定せず、iPhoneアプリやAndroidアプリなど、専用アプリで展開することも視野に入れて良いと考えます。

次回は本稿の内容を軸に「電子書籍の流通構造」をさらに詳細化してみたいと思います。ご意見などいただけると助かります。

2010年5月14日金曜日

孫正義のビジョン

5月13日の夜に決行された佐々木俊尚氏(@sasakitoshinao)と孫正義氏(@masason)の対談「光の道は必要か?」は期待以上のものでした。
私は孫正義氏が放つオーラや氏のビジョンの大きさ、ビジョンに対する思い、責任感、そういったものに圧倒され、いつの間にかその趣旨である「光の道は必要か?」とは別の次元で本対談を観てしまっていました。本対談の詳細については今後多くのメディアやブログで取り上げられると思いますのでそちらに譲り、ここにはその時の私の思い(ツイート)を残しておくに留めます。

孫さんはやはり希代の経営者。明確なビジョンを持ち、それを自分の言葉でこれほど分かりやすく説明できる人はそうはいない。実務家であるだけに調査にも漏れが無い。 ( #hikari_road live at http://ustre.am/bNTj )less than a minute ago via HootSuite



実務家と評論家では議論にならないか…「佐々木さんが孫さんに取材する」ような趣になってきた感があります。凄まじい実務遂行能力・経験を背景とした孫さんの説得力はハンパない。 ( #hikari_road live at http://ustre.am/bNTj )less than a minute ago via HootSuite



実務の現場が見えていない評論・批判に惑わされないようにしよう。そしてビジョンに向かって突き進む。これしかない。「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ!」less than a minute ago via HootSuite



孫さんの「ビジョン」の概念と佐々木さんの「ビジョン」の概念には大きな乖離があると感じる。孫さんのビジョンには「命がけで事を為す決意」が内包されているが、佐々木さんのビジョンは単に「想像・空想」の域に留まっている… #hikari_roadless than a minute ago via HootSuite



孫さんは「責任を持ってビジョンを示せば、人(日本)はついて来る」という信念を持たれているように感じる。日本の底力を信じている。佐々木さんはあまり人(日本)を信じられていないのでは…私は両人とも尊敬しています。力を合わせて日本を導いて欲しい。 #hikari_roadless than a minute ago via HootSuite



発言の真意を理解するには、事前に発言者の背景をある程度把握しておく必要がある。さもなければ、表層的な言葉のやりとりとしてしか捉えることはできず、枝葉末子に囚われることになる。less than a minute ago via HootSuite



そして興奮冷めやらぬ対談翌日の朝。

#clipp 「専門的な意見も、社長自ら聞き、すべてを把握した上で短期納品を社員に求める」だから孫さんの「光の道」は信用できる。 / RT @rtwjp: つぶやき経営に社員騒然 - 雑誌記事:@niftyニュース http://bit.ly/bzqvWyless than a minute ago via HootSuite



そう言えば少し前に「孫正義 LIVE 2011」の書き起こしを読み「血が滾った」ことを思い出しました。
本対談で孫正義氏に惹き込まれたのは、あらかじめこれらを読んでいたことも一因としてありそうです。

なお、佐々木氏が仰っていた「日本はプラットフォームで遅れをとっている」これは正にその通りだと思います。私もエンジニアの端くれとして、今後は問題意識を持って仕事に臨んでいこうと決意を新たにしました。

本対談ではUSTREAMのポテンシャルの高さを再認識しました。こうした企画はテレビでは決して実現しなかったはずです。今は色々な意味で時代の変わり目なのかもしれません。今後も佐々木氏と孫氏のご活躍を注視していきたいと思います。

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[2010-05-17 12:42]
「書きお越し.com」に対談の全文が書き起こされています。
凄いですね。書き起こし担当の皆さま、本当にお疲れ様でした。

2010年5月7日金曜日

「伝える技術」を学ぶ

総務省統計局の調査によると2008年時点で情報流通量に対する情報消費量はおよそ530分の1で、99パーセント以上の情報は誰の目にも触れることなくただ存在しているだけ、というのが現状です。情報の選択権は完全に読み手に移りました。

個人・企業を問わず情報の出し手は「自分(自社)が発信した情報を選択してもらい、じっくり読んでもらう」ことに一層注力せざるを得ません。メディア企業にとっては自社が発信した情報を選んでらえるかどうかは死活問題です。また、たとえ今は選んでもらえているとしても、一方的な情報ばかり発信していては読み手には何も伝わらず、いずれ選んでもらえなくなるのは明白です。つまり情報の出し手は今以上に自分(自社)の「伝える技術」を磨き上げる必要があるのです。

このように「伝える技術」は重要である一方、これを学ぶ場が少ないのが現状です。「伝える」ことが本業のマスメディア業界においてさえもOJT(On the Job Training)に頼っている企業がほとんどで、「伝える技術」を系統立てて学べる場を確保できている人は少ないのではないでしょうか。

このような状況を憂慮し、「ガ島通信」の藤代氏(@fujishiro)が中心となって展開されているのがスイッチオン・プロジェクトです。本プロジェクトの問題意識は次の通りです。
  • OJT頼りのジャーナリスト教育(系統だった実践的教育プログラムを受ける場が少ない)
  • ジャーナリズムの「あるべき論」ばかりが先行し、現場はどうして良いのかわからない
  • ジャーナリストが寄って立つ「伝える」ための技術的なフレームワークが存在しない
こうした問題意識を背景に、先日、スイッチオン・プロジェクト主催の合宿セミナー「ジャーナリストキャンプ2010」が開催され、私も参加してきました。
本セミナーの目的は次の通りです。
伝わる情報を発信するためのプロセス、すなわち「伝える技術」をフレームワーク化し、アクティビティを通して意識的・理論的に「共に」学ぶ。
「伝える技術」で肝となるのが「読者を理解すること」です。本合宿セミナーでは「読者を理解すること」について、「自己紹介・他己紹介」「新聞社へプレスリリースを売り込むロールプレイ」「ゲスト講師陣とのトークセッション基に実際に新聞記事の企画を作成する」といったアクティビティを通して徹底的に考させられます。

なお、ゲスト講師の方々からは、普段は決して聴くことができないとても貴重な話をお聴きすることができました。別の記事として是非まとめてみたいと思います。
  • 山内英子氏 - 医師(聖路加病院勤務)
  • 川上量生氏 - ドワンゴ会長
本セミナーには新聞各社に在籍されている記者・編集者の方以外にも、フリーライターやマーケター、研究者など様々な職種の方が参加、皆様の問題意識の高さや視点の多様性を肌で感じ、大いに刺激となりました。ここで学んだ「伝える技術」について、これからも自分なりに考え、実践していきたいと思います。

「伝える技術」を学ぶことにご興味を持たれた方は、是非一度スイッチオン・プロジェクトにアクセスしてみて下さい。

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[2010-05-07 10:35]
藤代氏のブログ「ガ島通信」に「ジャーナリストキャンプ2010」の総括記事が掲載されています。
こちらも参考になります。

[2010-05-10 14:31]
藤代氏のブログ「ガ島通信」に「ジャーナリストキャンプ2010」の参加者の方々のブログ記事が紹介されています。
生の声も参考になります。

2010年5月3日月曜日

#book 未来を予測する

2020年 - 中国が分裂の危機
2020年 - ロシア-アメリカ間で第二次冷戦勃発
2050年 - 日本とトルコがアメリカと戦争
2100年 - メキシコ-アメリカ間で北米大陸の覇権を掛けた戦争が勃発
この未来予測は荒唐無稽なものでは無く、米国のインテリジェンス企業(「インテリジェンス企業」というものを始めて知りました)ストラトフォーのジョージ・フリードマン氏が自著の中で地政学的な観点から予測したものです。
ウィキペディア(2010年05月03日現在)では地政学について以下のように解説されています。
地政学とは地理的な環境が国家に与える政治的、軍事的、経済的な影響を巨視的な視点で研究するものである。イギリス、ドイツ、アメリカ合衆国等で国家戦略に科学的根拠と正当性を与えることを目的とした。
すなわち、国の場所や政治、人口動態、過去の歴史といった「国を形成する遺伝子的なもの」をインプットに、世界各国間の相互作用を研究する学問で、著者はこの分野のオーソリティとして米国では有名なようです。

本書では他にも地政学的な観点から次のような予測がなされています。
  • 今後100年はアメリカの時代
  • 中国、ロシアは大国にはなり得ない(衰退する)
  • フランス、ドイツは衰退する
  • 日本、トルコ、ポーランドに加えてメキシコが大国となる(可能性を秘めている)
これだけ聞くとなかなか信じ難いのですが、本書を読むことである程度納得できてしまいます。本書の目的は100年後の未来を予測することではなく、世界の国々に対して現在どのような力学が働いているのかを知り、それが今後どのような影響をもたらすのかをある程度把握するところにあり、上記は本質的な部分では無いにしても、非常に刺激的です。

なお、著者の日本に対する認識は次の通りです。的確であると感じました。
(P213)
日本が大きな社会変革を基本的価値を失わずにいられるのは、文化の連続性と社会的規律を併せ持つからである。短期間のうちに、しかも秩序正しいやり方で、頻繁に方向転換できる国はそうない。日本にはそれが可能であり、現に実行してきた。
本書後半は年代がかなり進むため、現時点との乖離が大きく、個人的には少々興味をそがれてしまったのですが、それでも十二分に楽しめると思います。