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2010年10月29日金曜日

CNNのデジタルメディア戦略

アドテック東京(2010年10月28日・29日)の2日目に、CNN.comの上席副社長 Kenneth "KC" Estenson 氏による「革新的デジタルメディア戦略 消費者が求めるデジタルメディアとは?」と題されたプレゼンがあり、私はこれに出席してきました。


ここで紹介されたCNNのデジタルメディア戦略が非常に興味深いものでしたので、拙い文章で恐縮ですが、ここに概要をまとめておきます。

■ CNNが捉えている時代の変化


CNNは次のように時代の変化(テクノロジーの進化)を捉えている。

  • デジカメの進化、ウェブサービスの充実などにより、リポーターが一人で出来る事が増えた
  • ケータイ電話やスマートフォン、モバイル端末、PCの普及により、同時に複数のメディアに接触できるようになった(そのため、メディアへの接触時間は増えている)
  • 多様な新興メディア企業が登場したことにより、競合他社が細分化してきている(これまではテレビ局同士の戦いだった)
  • ソーシャルメディアの普及により、聴視者の反応がリアルタイムに分かるようになり、また、聴視者とのコミュニケーションが取れるようになった

こうした時代の変化を背景に、CNNは「報道の質を向上させること」「コンテンツをデバイスに最適化させること」そして「聴視者とのエンゲージメントを深めること」に注力している。例えばニュースの掘り下げや分析、インタビューを増やしたり(報道の質の向上)、デバイスへの接触方法を考慮してコンテンツを配置したり(デバイス最適化)、市民記者との協力体制を築くなど(エンゲージメントの深化)、といった施策を進めている。

■ CNNのデジタルメディア戦略


CNNのデジタルメディア戦略の肝は次の3点にある。

  • 編集部門の拡充
  • ソーシャルメディアの取り込み
  • プラットフォームの活用

競合企業が細分化した今、速報記事だけでは勝負にならない。フィーチャー記事(読み物的な記事)や分析記事といった内製コンテンツを強化するとともに、市民記者から投稿される動画コンテンツなども強化していく必要がある。そしてそのために編集部門を拡充している。CNNでは市民記者から投稿された動画コンテンツには全て目を通し、チェックを通ったものだけを採用している。

ソーシャルメディアは今や必要不可欠なツールだ。自社のコンテンツをより多くの聴視者に見てもらうに、聴視者同士のソーシャルネットワークを活用する。CNNはソーシャルメディアを恐れない。フェイスブックコネクトは早速導入した。また、ツイッターなどで聴視者の動向をチェックし、その結果をリアルタイムにサイトへ反映させる(コンテンツの配置をリアルタイムに変更する)仕組を採り入れている。

(注:「プラットフォームの活用」についてはあまり言及されていなかったのですが、恐らく「自社で全てのシステムを作るのではなく、ツイッターやフェースブックといった外部サービスも利用する」あるいは「メディアに必要な機能をある程度パッケージ化しておき、新規メディアを立ち上げるコストを低減させる」といったことだと思います。どなたか情報をいただけると助かります。)

■ iReport、市民記者について


CNNは市民記者からニュースソースの投稿を受け付けるサービス「iReport」を通して、市民記者との信頼関係を築きあげている。現在iReportには、全世界で約60万人の市民記者が登録している。市民記者からはこれまでに50万件以上のニュースが投稿されたが、その全てに目を通した。そして編集者のチェック(裏取り)に通ったものだけを、サイトやテレビに採用している。

CNNのリポーターが行けないところにも市民記者は居る。テクノロジーの進化により、市民記者も品質の高いコンテンツを作れるようになった。ハイチ地震では市民記者から投稿されたコンテンツ、特に安否情報は役立った。

iReportは2006年にサービスを開始したが、それまでに紆余曲折があった。当初はプロのジャーナリストからの反対もあった。しかしそれを乗り越えた。

CNNはテクノロジーに相当力を入れている印象を受けました。ここまでソーシャルメディアを活用し、さらにはニュースサイトをインタラクティブに作り上げているメディア企業は、世界中を見回してもなかなか無いのではないでしょうか。また、市民記者への取り組みは、日本の状況と比較すると特筆すべき点だと考えます。


Estenson氏は他に次のようなことにも言及されていました。

  • 若者へのアプローチを工夫している
  • 今後はモバイルに力を注ぐ
  • グローバル戦略においてローカルの文化を大切にする
  • ブランドイメージを大切にするために、CNN.com上の広告は全て自分達で調達している。アドネットワークは使わない

日本のメディア企業にも是非頑張って欲しいですね…

以下は会場で配布されていた冊子に掲載されている本プレゼンの紹介です。参考までに転載しておきます。

伝統的であろうと新興であろうと今日のメディア企業は、デジタル分野のグローバライゼーションを常に見据え、新規のユーザ獲得という命題を抱えつつ既存の消費者とのつながりをいかに維持していくかという難問と日々格闘しています。ユーザ参加型コンテンツやソーシャルネットワーク、ロケーションベースのサービス等がもたらすパラダイムシフトに取り組みながらも、メディア企業は革新的かつ収益をもたらす理想のバランスを追求するパートナーシップを模索しなければなりません。CNN.com上席副社長兼ジェネラル・マネージャーのKCエスタンソンが、収益の強化とCNNブランドの持つブランド力の維持を実現する一方で、いわゆる「旧メディア」ブランドに新たな革新の精神と失敗を恐れない実験という新たな風を吹き込むことに成功してきたのかを語ります。

また、講演内容に関するツイッターのツイートをTogetterにまとめておきました。断片的で恐縮ですが、当日の雰囲気や話の流れを掴んでいただけるのではないかと思います。


CNNのデジタルメディア戦略について、もっと調べてみたいですね。

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[2010-10-30]

ブログ『メディア・パブ』に、iReportに関する詳細な情報がありました。


ご参考までに。

2010年10月28日木曜日

日本に市民ジャーナリズムが定着しない理由

少し前、2010年6月21日にNYタイムズに掲載された日本のジャーナリズムに関する記事が非常に興味深い内容でした。


JANJANやオーマイニュースなどを例に、日本で市民ジャーナリズムや新興メディアが勢力を伸ばせない理由について言及されています。なかなか読み応えのある記事でしたので、以下、抄訳を掲載しておきます。もし誤訳を発見されましたら、ご一報いただけると助かります。

日本のメディアの現状


オンラインニュースメディアJANJANは過去数年間、市民記者による捕鯨やマスメディアと政府の共謀といったタブーに切り込む記事を提供することで、日本の体制に従順な生ぬるい報道機関に対し果敢に挑戦を続けていた。しかしこのサイトは最後まで十分な読者、十分な広告を得る事ができず、3か月前(注:2010年3月)についに閉鎖へと追い込まれた。(注:JANJANは今年4月24日から「JANJAN Blog」として新たにスタートを切っています)

未来を嘱望された市民ジャーナリズムによる日本の主要なオンラインニュースメディアは、過去2年で全て閉鎖(JANJAN、オーマイニュースツカサネット新聞)、あるいは規模を縮小(PJニュース)したことになる。

これは単に市民ジャーナリズムが失敗しただけでなく、未だ日本には画一的で硬直化したニュースメディアへの対抗軸が存在していないことを意味する。

JANJANを設立した竹内氏は「日本はまだ(市民ジャーナリズム受け入れる)準備が出来ていない」と話す。「日本でオルタナティブなニュースメディアを立ち上げるのはとても難しい」

日本は、長期に渡った経済的不調の末の政権交代を機に、「戦後的な構造」の解体が徐々に推し進められようとしている中、同じく「戦後的な構造」であるニュースメディアは、これまでのところ「変化」の外側にある。民主党は排他的な記者クラブの解放を推し進めようとしてはいるが、これではまだ抜本的な改革とは言えない。

米国を含めた先進国のニュースメディアで起きているデジタル革命を起点とした変化は、日本では文化的、あるいは経済的な理由などにより、まだ起きていない。日本のニュースメディアは、昔から存在している読売新聞などの旧来からの巨大メディア企業によって支配されているのが現状だ。

特定の人たち向けのブログやショッピングサイト、チャットルームなどは日本でも流行している。しかし、ニュースサイトには多様性が無く、そしてその殆どは旧来からの巨大メディア企業がほんの付け足し程度に運営しているものだ。

他の国々では、例えばアメリカのハフィントンポストのような、影響力を持った新興ニュースメディアが誕生してきている。日本にもJ-CASTニュースThe JOURNALのような新興メディアは存在しているが、これらは十分な読者(影響力)を獲得しているとは言えない。

市民ジャーナリズムサイトはタブーに切り込むことで多くの注目を浴びてきたが、繁栄することはできなかった。JANJANより前、オーマイニュースは2年前に閉鎖、そしてツカサネット新聞は昨年9月に閉鎖した。また、PJニュースは規模を縮小し、今では専用のオフィスすら持ち合わせていない。

先の竹内氏も含めこれらのオンラインメディアに従事してきた人達は、収入面、運営面からいくつもの失敗理由を挙げているが、その中で竹内氏は、突出することを嫌う「日本的な文化」にも原因があるのではないかと考えている(目立つ人、人とは異なる事をやる人を軽蔑する日本の文化が、「市民記者制度」にマッチしない)。

日本の隣国、韓国と比べてみよう。オーマイニュースは市民ジャーナリズムで旧来からある巨大メディア企業に挑み、韓国のメディア業界に変革をもたらした。そして2002年、韓国大統領選に大きな影響を与えた(オーマイニュースがノ・ムヒョン氏を支持、そのまま大統領に選出された)。その後オーマイニュースは62,700人の市民記者を抱え、運営サイトのページビューが200万PV/日を誇る強力なメディア企業となった。日本の3分の1の人口であるにもかかわらず…

しかしそのオーマイニュースでさえ、日本では成功しなかった。ページビューは高々40万PV/日、市民記者の数も4,800人に留まった。

日本オーマイニュースの元社長・元木氏などは、日本人がオルタナティブなニュースメディアに対して抵抗する理由として、社会性・政治性の欠如(社会や政治に対する関心の低さ)を挙げる。韓国人の政治への関心の高さがあったからこそ、オーマイニュースは韓国で成功できた。

日本のジャーナリスト、佐々木俊尚氏は「利害の衝突を自覚したときにのみ、その社会は新たな視点や情報を求めるようになる」と話す。

メディアの専門家は「日本人はまだ旧来メディアに対して強い疑問を抱いていない。ほとんどの日本人は未だ旧来メディアからの情報を受動的に受け付けている」と話す。

それでも日本のニュース業界には変化の兆しがある。特に日本の若者の間では、新聞の影響力が低下してきている。

例えば世界第2位の発行部数を誇る朝日新聞の発行部数は、過去10年間毎年3%ずつ減り続け、今や800万部強にまで落ち込んだ。

竹内氏が7年前にJANJANを設立したとき、彼は、政府に対して無批判あるいは批判する力のない日本の旧来メディアをひっかき回そうと考えていた。

設立当初のJANJANは、捕鯨問題など旧来メディアがあまり取り扱わないトピックをぶち上げ、関心を引いたこともあった。しかし、世界的な景気後退や広告収入の低下のあおりを受け、会社を維持するために必要な収益を得ることができなかった。そして今、竹内氏はブログメディアを新たに立ち上げ、再スタートを切った。

竹内氏の最大の挑戦は記事の品質を確保することだった。読者から投稿される記事の殆どは「主要メディアが配信した記事を焼き直したものに自分の意見を追記する」形式を取っていた。

経験豊富なジャーナリストの多くは、自身が所属する大企業から先の見えない新興企業へ転身することに躊躇した。そのため、竹内氏は彼らを雇うのは困難を極めた。しかし、アメリカのように旧来メディア企業が凋落し、ジャーナリストのレイオフやメディア企業の倒産が増えてくることで、今後は少し状況が変わってくるのではないかと、メディアの専門家は予想する。

東大教授の望月氏は「JANJANは失敗した。しかし、JANJANは日本に種を蒔いた。今後も新たな挑戦が行われるだろう」と話す。

JANJAN、そして竹内氏とは以前に選挙報道関連のプロジェクトをご一緒させていただいたこともあり、JANJANの休刊はとても残念でした。しかしこの記事にあるように、規模は縮小したといえど、まだその挑戦は続いています。PJニュースも然りです。



私も現在の日本のジャーナリズムに対して大きな問題意識を持っていますが、残念ながらまだまだ自分の言葉でそれを説明できるほどの材料を持ち合わせていません。しかし今後も「日本のジャーナリズムのあるべき姿」について考えて行きたいと思います。

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[2010-10-31]

世界で市民ジャーナリズムを牽引しているメディア、CNNとAllVoiciesは押さえておきたいところ。


特にAllVoiciesは注目です。

2010年10月25日月曜日

「本好きに悪人なし」

紀伊國屋書店新宿南店の4階で「内田樹を形作った本たちフェア」と題され、内田樹氏厳選の100冊が紹介されていました。




私は最近内田樹氏のファン状態にあり、氏のブログ記事は欠かさず読むようになりました。『街場のメディア論』はあまりにも面白く、現在2周目。併せて『街場のアメリカ論』も読んでいます。これまた実に面白い。考え方がとてもしっくりきます。


と言う事で、「内田樹を形作った本たち」から2冊を購入しました。フェア中は(在庫があれば)内田氏のサイン入り紙カバーで包んでくれます。



新宿南店のフェアは残念ながら昨日(10月24日)で終了してしまったのですが、他の店舗ではまだ開催中のようです。もしご興味のある方は是非確認してみてください。


私の確認できた範囲で恐縮ですが、このフェアで紹介されていた本をNAVERまとめにまとめておきました。シリーズものの本については最初の巻だけを掲載しています。内田樹氏によるコメントがあったものについては、これも掲載しておきます。チェックしたのが新宿南店の最終日(10月24日)だったので、もしかしたら漏れがあるかもしれません…正確な情報をお持ちの方はコメントいただけると助かります。

会議中の振る舞いについて考える by mixbeatゲーム

先週土曜日に、mixbeatの先輩と同期が主催するワークショップ『mixbeatゲーム』に参加してきました。


みなさんはディスカッション、例えば会社の会議などで、自分の振る舞いが第三者からどのように見られているか意識されたことはありますか?ディスカッションにおける自分の振る舞いの傾向、そして他人の話の進め方や価値観の多様性を知ることは、今後自分がディスカッションでどのように振る舞えば良いのかを考える起点となります。そしてmixbeatゲームはこの「考える起点」を、アクティビティを通して様々な形式で提供してくれます。

mixbeatゲームはコンセンサスゲーム(「NASAゲーム」「砂漠ゲーム」とも呼ばれる)をベースにmixbeatで作り上げられてきたものです。コンセンサスゲームとの最大の違いは、ディスカッションそのものよりも、ディスカッション後の振り返り作業に重点を置いているところにあります。そのため、ディスカッションそのものを分析するためのアウトプットの点数が若干多く、コンセンサスゲームよりも事前準備は大変かもしれませんが、その大変さを補って余りある大きな、そしてより実践的な収穫を得ることができます。

コンセンサスゲームについては、以下のサイトが参考になると思います。


少々前置きが長くなってしまいましたが、ここからは当日の様子を少しご紹介します。

写真はワークショップ当日の流れ。振り返り作業に重点が置かれているのがわかります。当日はこれを2セット実施しました。



1回目のディスカッションのテーマは「全国30歳~39歳の男性、単身勤労世帯のおうちにあるものランキング」。



一通り説明が終わったら、いよいよアクティビティ開始。まずは個人テストで自分なりにランキングを予測します。



個人テストの結果をもとに、いざディスカッション。ディスカッションメンバーで話し合いをし、規定時間内(今回は30分)にメンバー間の同意を得ます。ちなみにワークショップの参加者は「ディスカッション参加者」と「記録係」に別れます。1回目、私は「ディスカッション参加者」となりました。そして私の振る舞いを記録してくれたのはなんと塾長。振り返りのときのコメントが楽しみです。



ディスカッションの結果、このようになりました。



ここからmixbeatゲームの肝となる振り返りタイム。塾長から鋭い意見。私には「自分の意見に全体を誘導する(自分の意見をねじこむ)傾向」があることを指摘されました。以前も指摘を受けたことがあったので今回はかなり気を付けていたのですが、まだまだ出来ていませんでしたね。



昼食をはさんでの2回目、私は塾長の記録係を担当しました。何とか鋭い意見を言おうと必至に塾長の言動を観察していたのですが、果たして、どうだったのでしょうか…



今回新たに気付いたのは、ディスカッションを上手く進めるには「ディスカッション参加者間における自分の影響力を客観視する必要がある」ことと「人によって言葉に対するイメージに違いがあることを考慮する必要がある」ことです。今後はこれらを意識しながらディスカッションに臨んでいきたい。

今回のワークショップは自分を客観視する絶好の機会となりました。私が最近会社の会議などで意識しているのは「自分の理論が間違っていることを前提に人の理論に耳を傾ける」です。しかし上述したように、第三者の視点を通すと全然出来ていないことがわかります。日常生活を送っているだけではなかなか気付けないことに気付ける。これこそワークショップのだいご味だと感じました。

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[2010-10-27]

『mixbeat活動報告ブログ』にmixbeatゲームの詳細な情報がアップされました。こちらも是非参照してみてください。

2010年10月22日金曜日

キュレーションを実践しているニュースサイト

以前もご紹介したRobinGood氏(@RobinGood)のブログメディアMasterNewMediaにおいて、キュレーションを実践しているサイトが紹介されています。


既に様々な形式の「キュレーション・サイト」が存在していることがわかります。この中で私が注目したいのはキュレーションを実践しているニュースサイトです。本記事で紹介されているニュースサイトは以下の通り(全て英語サイト)。


いずれも「リンク集」の色合いが濃い中、HuffingtonPost(ハフィントンポスト)が異彩を放っています。ハフィントンポストは今やニューヨークタイムズに次ぐアクセス数を誇る強力なニュースサイトとなっており、そのビジネスモデルはニューズウィークでも紹介されたことがあります。


GoogleニュースやDiggなどのニュース「アグリゲーション」サイトでは情報を「収集」「選別」「共有」しているだけですが、ハフィントンポストを筆頭としたニュース「キュレーション」サイトではここにさらに「関連付け・意味付け」を加えており、そしてこれがキュレーションの肝となっているのです。

ハフィントンポストはキュレーション以外にも様々な「記事が見られる工夫」を凝らしています。こうした取り組みは、日本でニュースサイトを運営されている方々にも大いに参考になるのではないでしょうか。NAVERまとめにハフィントンポストに関する日本語の記事をまとめてみましたので、是非ご活用ください。

2010年10月20日水曜日

オープンエデュケーションの可能性

「グローバルに職を求めて競争する準備のために教育がある」

米国ではオバマ大統領就任時のこの言葉が原動力となり、東西の教育機関や研究機関、そしてベンチャー企業が中心となって、今、もの凄い勢いで「オープンエデュケーション」に取り組まれています。そしてオープンエデュケーションに熱意を持って取り組んでいる人達の根底にあるのは「(世界中の)すべての人に、平等な教育の機会を与える」という信念…

このエピソードは『ウェブ進化論』の著者・梅田望夫氏と、現在MITでご活躍されている飯吉透氏の共著『ウェブで学ぶ』にあったものです。本書では、インターネット上に無料で公開されている動画やテキスト、画像などの教育教材や、学習を支援するオンラインサービスを利用して学習することを「オープンエデュケーション」としています。


現時点でも、英語とインターネットさえ使えれば、膨大な数の学習教材や、高品質な学習システムを、無償、あるいは低コストで利用可能なようです(本記事の最下部に、本書で紹介されていた各種オンラインサービスをまとめておきました)。

私は本書を読むまで、オープンエデュケーションについてほとんど何も知りませんでした。最近仕事で教育関係のプロジェクトに関わるようになり、初めは興味本位で読み始めたのですが、オープンエデュケーションが秘めるポテンシャルに理解が及ぶようになると、たちまち引き込まれてしまいました。

オープンエデュケーションを構成する基本的な要素は「オープン・コンテンツ」「オープン・テクノロジー」そして「オープン・ナレッジ」で、アメリカを中心に世界各国でそれぞれの分野について様々な取り組みがなされているようです。

  • オープン・コンテンツ
    無料で使える学習教材。マサチューセッツ工科大学の Open Course Ware や、アップル社の iTunes U などが有名。
  • オープン・テクノロジー
    無料で使える学習システム。
  • オープン・ナレッジ
    無料で使える学習ノウハウ。教師向け(教える側)のノウハウと、生徒向け(学習する側)のノウハウとがある。

これらとは別に、教育者同士や生徒同士、そして教育者と生徒を結び付けるオンライン上の学習コミュニティも存在し、ここで情報を交換しながら、世界中で多様な「学び」が実践されているようです。

ITジャーナリスト・佐々木俊尚氏は、自身のメルマガ110号(9月27日号)において、本書でも紹介されていたカーンアカデミーを引き合いに出し、オープンエデュケーションについて次のような見解を述べられています。

これはオープンエデュケーションの典型的なケースです。こうした形で、教育の内容のコンテンツがオープン化していき、世界中の人々がそれを共有していく。素晴らしい講義をウェブで共有するTEDのプログラムのように、日本語も含めた各国語の字幕を付けるプロジェクトがもしカーンアカデミーと結びつけば、英語圏でなくフランス語圏や中国語圏、日本語圏でもカーンアカデミーのコンテンツは普及していくかもしれません。

オープンエデュケーションという考え方は、まだスタートしたばかりで今後の方向性の全容は見えてきていません。そもそも教育というのは非常に巨大な生態系で、教育内容(コンテンツ)と、その教育を実際に教えるシステム(プラットフォーム)、さらにはそこに教師がどのように参加していくのか、そしてその教育はどのような場で行われていくのか、と多岐にわたっています。

カーンアカデミーのような試みは、とりあえずコンテンツの部分をオープン化しようという「オープンコンテンツ」の試みであり、今後はこれが教育のプラットフォームそのものをも既存の学校から解き放ってオープン化していこうという「オープンプラットフォーム」へと進んでいくのかもしれません。

オープンエデュケーションにはまだまだ多くの課題があるようなのですが、それでも「教育の形」は今後大変な勢いで変化(進化)していきそうな予感がします。

教育にお金を掛ける余裕が無い途上国が、オープンエデュケーションに掛ける期待はとても大きいようです。最近、20億の人たちがインターネットにアクセスできるようになったようですが、このように少しずつ世界中の人たちの手にインターネットが広がっていき、オープンエデュケーションへの参加障壁が低くなることで、世界の教育格差が縮まっていく事が期待されます。


ところで日本でも東京大学や京都大学、名古屋大学などを中心にオープンエデュケーションに取り組まれている例はあるようです。しかし世界から見るとまだまだ遅れている状況で、特に初等教育や中等教育での取り組みは残念ながらほとんど確認できませんでした。

今のところオープン・コンテンツやオープン・テクノロジを活用して独学を進めるには、やはり英語は必要不可欠ですね。本書を読みながら、「英語で学ぶ」ために「英語を学ぶ」必要性を痛切に感じました。

なお、『ウェブで学ぶ』については、以下のブログ記事(書評)が参考になると思います。


おまけ。NAVERまとめに本書で紹介されていた海外のオープンエデュケーションへの取り組み事例をまとめてみましたので、是非アクセスしてみてください。

2010年10月18日月曜日

教育とソーシャルメディア

はてながリリースした小中学生向けのSNS『はてなランド』が、サービス開始後わずか2週間で終了してしまいました。


はてなのHPには「ユーザーの皆様が安心して楽しんで頂けると同時に、保護者の皆様にも安心してお子様に勧めて頂けるサービスとして運営していくために、サービス内容を一から見直し、新たに別のサービスとして検討をしていく方針とさせて頂きました」とありますが、終了の詳細な理由については今もって明らかにされていないようです。

国内における学校教育、特に小中学生向けのソーシャルメディア利活用の事例はこれまであまり聞いたことはありませんでした(もしご存知の方がいらっしゃれば是非ご一報ください)。ソーシャルメディアに対するマイナスイメージが先行しているせいなのでしょうか。教える側のソーシャルメディアに対するリテラシが追いついていない、という理由も考えられます。

米国では学校教育の現場にソーシャルメディアが徐々に浸透してきているようです。米国のブログメディア Mashable に先月ポストされた記事「The Case For Social Media in Schools / 学校教育におけるソーシャルメディアへの取り組み」に、オレゴン州のある中学校の事例が紹介されていました。この中学校では、学校教育にソーシャルメディアを導入することによって、登校拒否の生徒数を3分の1まで減らすことに成功したようです。


学校教育にソーシャルメディアを組み込むことについては米国でも賛否両論で、その是非を巡って今も議論は続いているようです。反対意見も多いようですが、本記事ではそれでもなお、ソーシャルメディアを学校教育に組み込んだ方が良いのではないか、と提起しています。以下、本記事に掲載されている「学校教育にソーシャルメディアを組み込むべき理由」をご紹介します。

  1. ソーシャルメディアは社会の一部になってきている
    現在既に(米国の)4分の3の中高生は何らかのソーシャルメディアに参加しており、現在小学生の子供たちが社会に出る頃には、今以上にソーシャルメディアは社会に浸透しているだろう。そしてこの趨勢に対抗することはできない。であれば、学校教育でもソーシャルメディアと戦うのではなく、ソーシャルメディアを受け入れる方向で考えてみてはどうだろうか?
  2. より良く学べるようになる
    ブログを介して先生と生徒が意見を交換させている事例がある。ミネソタ州で小学校3・4年生を受け持っている Matt Hardy は、学校教育にブログを導入したことで、生徒から活発な意見が出てくるようになった、と話す。これまでは「先生-生徒」間に閉じていたやりとりを、他の生徒にもオープンにすることで、生徒は自分の意見を「先生に見てもらうこと」だけでなく「他の生徒にも見てもらうこと」も意識するようになったようだ。
  3. 安全かつ無料の子供向けソーシャルメディアが存在する
    多くの(米国の)学校ではフェイスブックやマイスペースへのアクセスが制限されている。しかしその一方で、kidblog.org のような無料で、かつ安心して利用可能な学校教育専用のソーシャルメディアも登場してきている。
  4. 子供たちの時間の使い方を改善する
    子供たちがインターネットに費やす時間は年々増加している。こうした状況を有効に活用、すなわちこの時間に学校側が用意したソーシャルメディアを利用してもらう、という戦略はどうだろうか?ソーシャルメディア上に先生が「子供たちに議論を促すための議題」を定期的に提示することで、フェイスブックやマイスペースに費やしていた時間を減らすことに成功した事例も報告されている。
  5. 協調性の向上を促進する
    人は社会に出ると他の人と協調しながら仕事を進めなければならない。しかしその一方で、これまでの学校教育では「人と協調する」ことを学ぶ機会はとても少なかった。このギャップを埋める目的で、ソーシャルメディアが活用できるのではないだろうか。

日本の状況はどのようになっているのでしょうか?残念ながら身のある関連情報は見つけられませんでした。小中学校におけるパソコンやインターネットの普及率(文部科学省の資料参照)を見ていると少し心配になってきます。議論だけでもなされていれば良いのですが。

2010年10月16日土曜日

#book 人を動かす文章

自分の考えを文章で人に伝えるのは本当に難しいですね。ブログを書き始めて半年が経過しますが、文章力が付いてきているとは全く思えず、日々自分の文章力の無さを痛感しています。文章力が低いがためにコミュニケーション不全を起こし、惨事を招いたこともありました。以前はそれほど意識することは無かったのですが、メール、ブログ、ツイッター、そしてSNSなど、文章によるコミュニケーションの機会が増えてきたこと、そして人に何かを伝えたいと切実に思うようになってきたことと関係があるのかもしれません。

先月のmixbeatワークショップのテーマは「伝える力~メールのコミュニーケーションで伝え上手になる~」だったのですが、これを主催した同期生から『人を動かす「文章術」』という本を紹介してもらいました。


本書は文学作品のような綺麗な文章の書き方ではなく、「うまく伝わり、実際に人を動かす、ビジネスで活かせる文章」の書き方に焦点があてられています。具体的には、企画書やビジネスメール、お礼状、ビジネスブログなどを対象とし、人を動かすことを目的とした文章を「仕事文」と定義したうえで、良い仕事文の条件、及び良い仕事文を書くための文章力の鍛え方が紹介されています。著者は編集者としての経験を積まれた後、現在は「読み・書き・伝える」を専門にしたコンサルティング会社『スカイライター』の代表取締役としてご活躍されているようです。

以下は、本書で紹介されている「文章が仕事文として機能するための6つの要素」です。

  • 書き手の主人公は誰か / who
  • 読み手は誰か / whom
  • 何を語っているのか / what
  • どんな方法(特徴)か / how
  • それはいつか / when
  • どんな文脈があるのか / context

これらの要素を上手く使えるようになると、良い仕事文が書けるようになるようです。

ところで本書では、文章力だけを鍛えても仕事文が書けるようにはならないとしています。書くことはコミュニケーションの一部であり、仕事文を書けるようになるには、それ以外の読む、聴く、話す力も同時に鍛える必要がある、と力説しています。コミュニケーション能力を総合的に向上させていかないと駄目なようですね。

ツイッターやフェイスブック、ミクシィなどのソーシャルメディアを利用するようになると、自分の考えを文章で伝える機会はどんどん増えてきます。ここでのミスコミュニケーションはストレスの原因にもなりますし、出来れば避けたいのではないでしょうか。また、自分の考えを上手く表現できれば、共感・賛同してくれる人と繋がり易くなるかもしれません。私は今後益々文章力が求められてくるのではないかと考えています。そんな先を見据えて、本書をご一読されてみてはいかがでしょうか。



少し前に本ブログでご紹介した池上彰氏の『伝える力』もお勧めです。

2010年10月15日金曜日

キュレーションの必要性

イタリアのコミュニケーションデザイナー Robin Good(@RobinGood)氏のブログ MasterNewMedia において、現在、キュレーションに関する記事が連載されています(※10月15日までに全7本のうち6本までアップされています)。本連載の第1回目で、キュレーション(リアルタイム・ニュース・キュレーション)が必要な理由について次のようにまとめられていました。


  1. 情報の量は日々凄まじい勢いで増え続けている
  2. ブログやメディアサイト、新たなソーシャルメディアなど、情報チャンネルも日々増え続けている
  3. 情報を発信する個人も増え続けている
  4. 貴重な情報が増える一方、スパムや広告など不要な情報も増え続けている
  5. ツイッターなどのソーシャルメディアで広まる情報には不確かなものや品質が低いものも多い
  6. ネット初心者にとって、マーケターやスパマーから発信される情報の真贋を見抜くのは難しい
  7. 情報の真贋を見抜くのは高度なスキルであり、さらにそのスキルで対応するとしても不要な情報があまりにも多すぎる
  8. コンテンツに付与されるタイトルやメタ情報の中には、間違ったものや誇張されたものも含まれている
  9. 人が情報収集に使える時間には限りがある
  10. 特殊なスキルを持たない限り、新しい情報源やニュースに辿りつくのは難しい
  11. 特定の情報源からのみ情報を取得していては視野が狭くなる
  12. ニュースを読み解くにはその背景にある情報も必要となってくる

Robin Good氏は、こうした状況下で事態を打開するには(自分にとって必要な情報だけを多大な時間・コストを掛ける事無く集めるには)、GoogleニュースやRSSリーダ、ツイッターやフェースブックなどのソーシャルメディアでは難しく、キュレーションが必要不可欠であると示唆しています。

ここでは、既存のサービス、特にソーシャルメディアでは事足りない理由として、以下の8点を挙げています。

  1. 自分が必要とする情報の発信者を見つけるのは楽な事ではない
  2. 自分が必要とする情報を発信する全ての情報源を日々フォローするには、多大な労力が必要となる
  3. 複数の情報源から情報を集める場合、重複する情報を排除する労力が必要となる
  4. 個人が発信する情報には、しばしば自分が必要としない個人的な情報が含まれている
  5. 個人が発信する情報には断片的なものが多く、例えば背景情報を知るためには別の情報源を調査する必要が出てくる
  6. オリジナルの情報源を見分けるのが難しい
  7. 常に信用できるわけではない
  8. 単に共有されるだけの情報から、付加価値が与えらる情報まで、キュレーションのレベルは人によって異なる

そしてキュレーションは、ユーザにとっては「多くの時間を節約できる」「自分が興味のある分野の重要な情報を見逃さないようになる」「情報の信頼性を一々気にする必要がなくなる」などの恩恵があり、キュレーターにとっては「他人には真似できないオリジナルの情報発信チャンネルを確立できる」「特定分野のオーソリティになることができる」「無駄なコンテンツ(記事)を作成する必要がなくなる」などの恩恵がある、としています。

ITジャーナリスト・佐々木俊尚氏が発行されているメルマガ「佐々木俊尚のネット未来地図レポート」の106号(8月30日号)では、キュレーションの必要性について次のように言及されています。

ネットの情報の質も量も爆発した結果、必然としてマスメディアの記事の重要性は相対的に低下してきました。読者・視聴者の側も情報があふれかえってしまって「おなかいっぱい」の状態になっているわけです。そうなると読者の側にとっては、一次情報を次から次へと与えられることよりは、それら多くの情報の中から良い情報を選別してくれる方がありがたい、というような気持ちになってくるのは当然の流れでしょう。つまり、読者にとっては情報を提供してくれるメディアよりも、情報を選別してくれるサービスの方が価値が高いという逆転現象が起きてくるということなのです。

だからこそキュレーションという概念に注目が集まるようになり、以前よりもアグリゲーションサイトの重要性が高まってきています。

アメリカでは既にキュレーションを実践しているメディアが出てきているようですが、日本ではまだまだのようで、ビジネスチャンスはありそうです。キュレーターを支援するためのサービスも登場したようですね。


キュレーションについては、過去のエントリもご参照ください。


MasterNewMediaに掲載されているキュレーションに関する残りの記事の内容についても、今後ご紹介できればと考えています。

2010年10月14日木曜日

ジャーナリストによるソーシャルメディアの利活用(米国の事例)

ジャーナリストはソーシャルメディアをどのように利用できるのか。

少し古い(2010年4月)Mashableの記事「How Journalists are Using Social Media for Real Results / ジャーナリストによるソーシャルメディアの利用法」に、米国のジャーナリストによるソーシャルメディア利活用事例が用途別に紹介されています。


以下、各用途の概要を簡単にご紹介します。意訳している部分、省いている部分が多々ありますので、正確な情報を知りたい方は原文を参照してください。

[用途1] 情報/トレンドのフィルタ


ネット上には今こうしている間にも様々なトピックに関する大量の情報が同時多発的に次々とアップされており、ジャーナリストがネットからニュースとなりそうな情報やトレンドを切り出すのはとても困難な作業だ。ここでツイッターやフェースブックなどのソーシャルメディアの出番となる。ソーシャルメディアを情報フィルタとして巧く活用した事例を紹介しよう。

Pairate Cat Radio のDJ、Aaron Lazenby はある夜ツイッター上で #iranelection というハッシュタグ(ツイッター上のトレンド)を見つけた。興味を覚えた Lazenby はツイッター上で取材を開始、この動きをCNNがキャッチし、世界中にイランの選挙に関するニュースが広がることとなった。

USA TODAY の Brian Dresher はツイッターをニュースの情報源として捉え、これまで数々の実績を重ねてきた。そして今ではツイッターから情報をキャッチするためのスキルを社内のジャーナリストに教育している。彼は、ジャーナリストはツイッターからリアルタイムにトレンドを掴み、さらに情報を発信している人に対する取材を通して、そのトレンドを深堀りしていくことができる、としている。

[用途2] 情報源へのコンタクト


いつの時代も適切な情報源(一次情報の発信者)に辿りつくのは非常に難しいが、フェースブックはこの作業を少し楽にしてくれる。フェースブックには四億人以上の個人情報が登録されており、名前や職業などをキーに検索でき、さらに写真などをもとに特定の個人情報の確認も可能だからだ。

シカゴの新聞 RedEye の記者 Tracy Swartz は輸送システムに関する記事を執筆する際、フェースブックでバスの運転手を探し出し、直接取材することに成功した。The Associated Press の Lauren McCullough もフェースブックを情報源へのコンタクトツールとして利用している。彼女はフェースブックからニュースとなりそうな情報を入手し、さらにその情報源となっている人物にコンタクトを取っている。

[用途3] クラウドソーシング


ソーシャルメディアは、単一の事象に関する不特定多数の人から情報を集める「クラウドソーシング」のツールとしても利用できる。


USエアウェイズがハドソン川に不時着したとき、先の McCullough は直ちにツイッター、フェースブック、フリッカー、そしてユーチューブにアクセスし、今ではすっかり有名になった Janis Krum が撮影した写真を探し出した。

クラウドソーシングが常に最新のニュースの出所となるわけではないが、ニュースを補足するための情報源としても利用できる。Huffington Post の記者 Susanna Speier は自分の記事をアップした後、フェースブックやツイッターで記事に対する反応を確認している。また、記事の書き手と読み手を繋ぐサービス「HARO」も利用している。

※「HARO」というサービス、非常に面白そうです。時間があれば少し調べてみたいですね。

[用途4] 声なき声の発信


クラウドソーシングはジャーナリストが世の中に浸透していないトピックを扱っている状況において強力な武器となる。

UC-Berkeley のブロガー James Karl Buck が取材中にエジプト当局に拘束されたとき、その窮状をツイッターでツイートし、そこから解放に至った事件は記憶に新しい。彼は、エジプトの新聞やジャーナリストが抑圧されている状況、そして抑圧されている中でツイッターを使ってその「生の声」を発信している状況について語った。「人々は権力に抑圧されている中でも、ツイッターを使って声を挙げている。そしてジャーナリストはその声を直接聞くことができる。」

同様に、ユーチューブはイラン選挙の抗議中に素晴らしい情報源となった。動画共有サイトのマネージャ Olivia Ma は現地で起きている状況を衝撃的な映像で知ることとなる。彼女は、外国人ジャーナリストの入国が禁止されていた状況において、現地から共有される映像は強力な情報源になる、と語っている。

[用途5] ニュースの共有/審査


ソーシャルメディアは記事共有のツールとしても有用だ。ジャーナリストはフェースブックやツイッターを利用して自分が書いた記事に対する反響を直接集めることができる。

New York Times の記者 Brian Stelter は記事作成のフローにツイッターとブログを組み込んでいる。彼は自分の記事を草案の段階でブログにアップ、その反響をツイッターで確認したうえで、記事をブラッシュアップ(記事に読者の意見を組み込むなど)し、最終出稿している。

Mashable ではフェースブックやツイッター、Googleバズなどを使って記事を多くの人に共有している。そして個々の記者は、自身が運営しているブログにも同じ記事をポストし、より多くの人に記事を読んでもらい、反響を受けるようにしている。

[用途6] コミュニティ/ブランドの形成


ジャーナリストのブランディングとは、ジャーナリスト自身がコミュニティを形成し、そのコミュニティにおいて専門分野を確立することだ。そしてソーシャルメディアはこの用途にとても有用だ。

先のシカゴの新聞 RedEye はフェースブックと GoogleWave を活用して、読者の獲得とコミュニティの形成に成功している。RedEye はオンライン・オフラインでの読者とのコミュニケーションを大切にし、紙面にはオンラインコミュニティに投稿された読者の意見も掲載される。

最近では日本のメディア企業や個人で活躍されているジャーナリストの方々の中でもソーシャルメディアは徐々に使われるようになってはきましたが、用途によってはまだまだ活用されているとは言い難い状況だと捉えています。ただ一方で、日本は米国のようにソーシャルメディアが浸透しているわけではないため、ソーシャルメディアを上記全ての用途で直ちに利用できるような環境にも無いと考えます。

一先ずは今現在海の向こうで起きていることを認識しておくぐらいにとどめ、今後効用などを見極めながら、少しずつソーシャルメディアの利活用に取り組んでいければ良いのではないでしょうか。

2010年10月13日水曜日

Googleニュースのクリエイターが予測する「ジャーナリズムの5年後」

米国ブログメディア TheNextWeb に、Googleニュースの生みの親であるBharat氏のインタビュー記事が、少し前(2010年6月)に掲載されていました。


私はGoogleニュースをそれほど使いませんが、最近も着々と機能を充実させているようです。以下、Googleニュースの解説ページからの抜粋です。

Google ニュースはコンピュータが生成するニュース サイトです。610 以上のニュース ソースから記事見出しを収集し、類似した内容の記事をグループにまとめて、読者一人一人の関心に合うような記事を表示しています。

これまでニュースを読む時には、メディア サイトを決めてから記事を読んでいませんでしたか? Google ニュースの特長は、読者ごとにカスタマイズできる表示オプションと、1 つの話題についてさまざまな観点から書かれた記事の選択肢を提供していることです。 Google ニュースでは 1 つのニュースについて複数の記事をリンクしているので、気になる話題について、様々なニュース ソースから提供される記事を読むことができます。 記事の見出しをクリックすると、そのニュースの提供元サイトにアクセスして全文を読むことができます。

Google ニュースの記事は、記事の表示頻度、掲載サイト、およびその他数多くの要素をコンピュータが評価することでランク付けされています。 その結果、政治的観点やイデオロギーに関係なく記事が分類されるので、同じニュースについてさまざまな観点から情報を得ることができます。 Google では、ニュース ソースの追加、技術的な改善、提供地域の拡大など、Google ニュースの改善に努めています。

少々前置きが長くなってしまいましたが、Bharat氏はこのインタビュー記事の中で「ジャーナリズムの5年後」について言及されています(個人的には「ジャーナリストの5年後」というよりかは「ニュースを取り巻く環境の5年後」の方がしっくりきます)。その「ジャーナリズムの5年後」の特徴は以下の通り。

  1. 特化
    個々のニュースメディアは今後益々特定の分野や地域に特化していく。
  2. ソーシャルネットワーク
    ジャーナリストは今以上にソーシャルネットワークを利用するようになる。
  3. 課金システム
    より効果的な課金システムこそが肝となる。今後課金システムの利便性は向上し、読者はより簡単に目的の記事を見つけ、そしてより簡単にお金を払えるようになる。
  4. 広告
    聴視者の嗜好に合わせてより効果的に記事と広告を連動させることができるようになる。
  5. パッケージング
    聴視者の嗜好に合った推奨記事をパッケージ化(パッケージング)して提示できるようになる。

なるほど、どれも頷けますね。米国では「1.特化」の兆候は既に表れていますね。今後は何かに特化できないニュースメディアはもはや生き残れない、ということなのでしょう。現在のテクノロジーの進化スピードからすると「2.ソーシャルネットワーク」「3.課金システム」「4.広告」「5.パッケージング」などは、5年を待たずにダイナミックな変化が起きそうな予感があります。

さて、インタビュアーはここにさらに二つのトピックを追加しています。

  1. ニュースリーダの台頭
    ニュースサイトを直接見るのではなく、ニュースリーダ経由でニュースを読む人が増える。
  2. アプリケーションの普及
    ニュースメディアは、自社のニュースサイト上だけでなく、iPhoneやiPad、Androidなどのアプリケーション経由でも自社のニュースを読んでもらえるようになる(課金システム付きで)。

メディア企業のエンジニアとしては、今後起こるであろうこうした変化を見据えて新しいサービスシステムや編集システムの仕組を考えていきたいところ。

肝心なのはニュースの中身なんですけどね。

2010年10月8日金曜日

8月15日を撮るプロジェクトを終えて

少し遅くなってしまいましたが、8月15日を撮るプロジェクトの結果をご報告。

準備期間が非常に短かったにも関わらず、多くの方にご協力いただいたおかげで、何とか無事にプロジェクトを終えることができました。「8月15日を多角的視点から覗いたら何が見えるか」という問いかけから誕生した本プロジェクトでは、「2010年8月15日に撮った写真であること。」というテーマに沿った写真を、メール及びツイッター経由で100名以上の方から200枚以上の写真を集めることに成功しました。我々が本プロジェクトで集めた写真は、現在も以下のページから閲覧することができます。写真をお送りいただいた皆様、本当にありがとうございました!


今回は、日本人にとって特別な日に、主催者側が特に「戦争」を意識させるアクションを取るこることなく、老若男女、プロ・アマを問わず幅広く写真を集めたわけですが、全ての写真を改めて見ていると本当に面白い。撮影者のひとたちは、何を思いながら写真を撮影したのだろう?8月15日に撮影されたこれらの写真を見る人達は、何を思うのだろう?そんなことをふと考えてしまいます。

何かイベントを開催するとき、主催者はイベントに対して意味や意義を明確に与えます。そしてその意味や意義に共鳴した人がイベントに参加します。しかし本プロジェクトには明確な意味や意義ががありませんた。我々が提示した一遍の詩のような文章を読まれ、そこから意味や意義を見出した人が参加する、というスタイルをとったのです。そしてここに本プロジェクトの面白さがあるような気がしています。

個人的にお気に入りの写真。



2010年10月5日火曜日

質問の意図を正確に把握する

毎月恒例のmixbeatワークショップ、今月のテーマは「(見知った人同士のコミュニケーションにおける)質問、問題、課題の意図を分解して理解する」でした。



午前の部では座学で理論を学び、午後の部で理論を実践する、という比較的オーソドックスな構成。



ワークショップの企画・運営は同期のふさおさんとなっこ。



本ワークショップでは、質問の内容(what)ではなく、質問の意図(why)にフォーカスは絞られます。「人は余裕が無いときに複雑な質問を受けると、質問者の意図をくみ取れず、質問者が意図しない回答をついしてしまうことがある」という問題意識に対して、「一旦落ち着いたうえで、質問の意図を『早さ』『関係』『期待』『内容』の4要素に分解してそれぞれ深く考え、その中でミスコミュニケーションしそうな要素があれば聞き返そう」という解決策が提示されました。

< 質問の意図を把握するための要素 >
  • 早さ:質問者はどの程度の緊急性をもっているか?(緊急性)
  • 関係:質問者と回答者の関係はどのようなものか?(関係性)
  • 期待:質問者は回答者に対してどの程度回答を期待しているか?(期待度)
  • 内容:質問の内容はどのようなものか?

「質問の意図を把握するための要素」は上記4つ以外にもいくつかあるようですが、特に重要ななのがこれらのようです。



午前の部の座学では問題意識と解決策を共有。参加者から様々な質問が飛び交い、予定時間を1時間ほどオーバーして座学終了。私もいくつか質問をしましたが、「質問の意図を把握するための要素」に何故「内容」が含まれているのか、4要素はどのようにして導出されたのか、4要素には妥当性があるのか、聞き返す以外にも何かできるのではないか、などの考えがぐるぐる回り、残念ながら解決策の理論に得心がいきませんでした。少し消化不良のまま昼食タイムへ。



午後の部は午前の座学の内容(理論)を踏まえてのアクティビティ(実践)。「二人一組になって、回答者が質問者に質問して質問者の質問の意図を当てる」というゲームに挑戦しました。



ゲームの詳細に興味があればmixbeatの活動報告ブログを参照してみてください。


座学の内容はあまり活かせませんでしたが、アクティビティ自体は結構面白かった。アクティビティはワークショップのだいご味ですね。



問題意識(人は余裕が無いときに複雑な質問を受けると、質問者の意図をくみ取れず、質問者が意図しない回答をついしてしまうことがある)についてはうなずけるものはありましたが、やはり最後まで提示された解決策に納得することはできませんでした。午前中の座学でもう少し論理的な説明があればまた違ったかもしれませんが、取り扱われたテーマ自体、ワークショップで扱うには少々大きすぎるのではないかと思いました。


最後に少し余談。今回のワークショップの会場となった「武蔵小山創業支援センター」は起業家の支援がメイン事業となっていますが、ここの貸し会議室も結構お勧めです。今年8月にオープンしたばかりで清潔感もあり、備品類も充実しています。




近くにあるケーキ屋さんも合わせてご活用ください。同期のムタが推薦。私もワークショップの帰りに3つほど購入。本当に美味かったです。


※ mixbeatでは第4期生を募集します。ご興味のある方は是非こちらでメールアドレスの登録を!


ワークショップの企画・運営、ワークショップへの参加、塾生間のコミュニケーションを通して、多くのことを学べる絶好の機会となるはずです!