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2010年12月23日木曜日

2011年のニュースメディア

米ブログメディアMashableに来年(2011年)のニュースメディアを取り巻く状況を予測する英文記事が掲載されています。


本記事では、今年のニュースメディアにおける2大潮流を「モバイルへの適応(多くのニュースメディアが携帯端末向けに情報の発信を開始)」と「ソーシャルへの適応(多くのニュースメディアがソーシャルメディアの活用を開始)」としたうえで、来年(2011年)のニュースメディアにおける10のトレンドを予測しています。米国視点ではありますが、非常に示唆に富む内容でしたので、概略をまとめておきます。正確な情報、あるいは完全な情報については原文をご参照ください。

1. 情報漏洩とジャーナリズム


2010年、ウィキリークスは無数の物議を醸す情報をリークした。2011年にウィキリークスの創始者、ジュリアン・アサンジ氏はいくつかの国から起訴されることが予測される。しかし、仮にウィキリークスが潰されたとしても、新たな「情報漏洩ジャーナリズム」の担い手が出現し、我々は2011年も多くの漏洩情報を目にするだろう。現段階でも既に Openleaks、Brusselsleaks、そして Tradeleaks が存在している。

2011年は情報漏洩ジャーナリズムの担い手同士による競争が激化することが考えられる。情報漏洩のスケールや情報配信技術、ニュースメディアとの連携といった要素がその勝敗を分け、恐らくいくつかの担い手は消え去るだろう。

2. 業界再編


2010年の終わり、TechCrunchはAOLに、NewsweekはThe Daily Beastにそれぞれ買収された。こうした動きによって、新興メディア企業やブログメディアの価値が値踏みされている(高く買収される新興メディアやブログメディアは、それだけ価値が高い)。

2011年、従来メディア企業は引き続き凋落することが予想される。そのため2010年同様、2011年も我々は新たな業界再編劇を目にすることになるはずだ。

3. 携帯端末向けのニュース


2010年、携帯端末から多くのニュースが見られるようになった。今、メディア企業はこの状況を真剣に受け止めている。多くのメディア企業が携帯端末向けのニュース配信サービスを開始するなか、マードック氏のNews Corpは2011年初頭、満を持してiPad向けニュースアプリ「The Daily」を投入する。現時点でiPadは世界累計1570万台が既に販売されており、来年はこれが倍増するものと見込まれている。さらに多くのニュースが携帯端末から見られるようになるだろう。

2011年、より多くのメディア企業が、「ウェブサイト・ファースト(まず第一にウェブサイトについて考え、次に携帯端末について考える)」から、「モバイル・ファースト(まず第一に携帯端末について考え、次にウェブサイトについて考える)」にシフトすることが予想される。

4. 位置情報を利用したニュース


2010年、Forsquare(フォースクエア)やGowalla(ゴワラ)、SCVNGRなど、我々は位置情報を利用した多くのサービスを目にしてきた。FacebookやGoogleといったビッグ・プレイヤーもこの流れ(位置情報をサービスに利用する)に乗っている。現時点では位置情報を利用サービスはあまり普及しているとは言い難いが(たかだか大人のオンラインユーザ全体の4%程度)、今後もますますサービスの質は向上していくだろう。

2011年、より多くのニュースが携帯端末から見られるようになる中、いくつかの位置情報を利用したニュースサービスがスタートすると予想される。仮に従来メディア企業がこの流れに乗らなかった、あるいは開発できなかったとしても、新興企業が同種のサービスの担い手となるだろう。

5. ソーシャルと検索


2010年、世界中でソーシャルメディアの利用率が増加、米国ではフェイスブックは単独で全ページビューの25パーセント、サイト訪問者数の10パーセントを占めた。2011年は「検索エンジン最適化」対策に代わり、「ソーシャルメディア最適化」対策に主軸が移るだろう。

ニュース業界のアナリストによると、フェイスブックやツイッターを中心としたソーシャルメディア経由によるニュースサイトへのアクセスが急激に伸びているようだ。そして、検索エンジン経由の読者よりも、ソーシャルメディア経由の読者のほうが、ニュースサイトにとっては「質の高い読者」になる可能性が高い。

6. 海外特派員の廃止


海外特派員の役割は、2011年にほぼ無くなる可能性がある。ロイターの研究機関による最近の調査によると、これまで海外特派員が担っていた役割は、デジタル・テクノロジーの普及により、「クラウド・ソーシング」のような形で現地市民が担うようになりつつあるようだ。また、アジアやアフリカの情勢が安定するにつれ、現地メディアも力をつけてきた。2011年、多くのニュースメディアは、ソーシャルメディアにアップロードされるコンテンツに、より依存するようになるだろう。

7. ニュースの流通とキュレーション


2011年、現在のニュースの流通モデルは崩壊するだろう。ニュースの再利用が進むと共に、コンテンツ市場は細分化され、「ニッチ」が鍵となってくる。ニッチメディアは、従来のニュースメディアが配信する記事をキュレートし、独自コンテンツの作成に注力するようになるだろう。一方で従来のニュースメディアは、人員削減やコスト圧縮を進めながらも、キュレーターを目指すようになる(流通モデルの整備よりも、コンテンツの開発に力を注ぐようになる)。

この動きはCNN.comやNYTimes.comで既に確認できる。両サイトにあるテクノロジー関連のページには、ニッチなテクノロジー系メディアから集めてきたニュースの見出しやコンテンツが並んでいる。従来メディアにはこれまでに培ってきた信頼性があり、こうしたキュレーション・メディアではこれが有効に働く(キュレートされたコンテンツに対する信頼性が高い)。

8. ソーシャル・ストーリーテリングの実現


2010年、ソーシャルメディア上のコンテンツが「文脈」を持つようになってきた(ソーシャルメディア上で、ニュースの意味や重要性などを示唆してもらえる、あるいは把握できるようになってきた)。

2011年は多くのテクノロジー企業がキュレーション・ビジネスへ参入することが予想される(ここでのキー・プレイヤーとして、フェイスブックやツイッターが名乗りを上げても不思議なことではない)。そしてその結果、我々はソーシャルによって形成された(ソーシャル・ストーリーテリングされた)文脈や、ノイズの中にある必要な情報に、効率よくアクセスできるようになるだろう。

9. ソーシャルメディアの浸透


2010年、ニュースメディアはソーシャルメディアに真剣に取り組みはじめた。USA Today、The New York Timesを筆頭に、多くのニュースメディアがソーシャルメディアを扱える編集者を雇ってきた。

2011年、ソーシャルメディアはニュースメディアのビジネス戦略にさらに深く組み込まれるようになるだろう。これまで以上にソーシャルメディアを扱える編集者を増やすことが予想される。ソーシャルメディアの扱いもより高度になっていくはずだ。報道業務の様々なシーンにおいて、ソーシャルメディアが利用されるようになるだろう。

10. インタラクティブTVの勃興


2010年に話題になり始めたインターネットTVは、2011年になると浸透し始め、従来TVによって独占されていた広告シェアを徐々に侵食しはじめるだろう。また、インターネットTVの利用者が増えることで、映像コンテンツもより一層消費されるようになる。

テレビへの接し方も徐々に変わってくることが予想される。テレビを見ながらインターネットを利用する、特にツイッターやフェイスブックで反応しながら、インタラクティブにTVを見る層が厚くなるだろう。

2011年のキーワードは「モバイル」「ソーシャルメディア」そして「キュレーション」になるのでしょうか。

日本のメディア業界にとっても、激動の一年になるかもしれません。

2010年12月16日木曜日

ジャーナリストによるソーシャルメディアの利活用 #jef2010

今回も『ジャーナリストエデュケーションフォーラム2010』から。これで最後です。

本フォーラムのディレクター・藤代氏によるワークショップセッション『ジャーナリストのためのソーシャルメディア講座』では、「ジャーナリストはソーシャルメディアをどのように活用していけば良いのか」について、活発な議論が展開されました。他社の現場の声を直接聞くチャンスは普段なかなか無いため、私にとっては非常に貴重な場となりました。「情報共有」というほどのものでも無いのですが、私がメモした範囲で本セッション中の議論内容をまとめておきます。

1. ジャーナリストはソーシャルメディアをどう活用できる?


  • 情報収集(聞く、見る、探す)
  • 情報発信
  • 情報確認
  • ブランディング(存在を知ってもらう、信頼を得る、ファンを得る)

2. 普段どのように情報を収集している?


  • ツイッター、バズッター、2ちゃんねるなどから取材のきっかけ(端緒)を得る
  • ウィキペディアの項目を参考にしながら取材を進める
  • ツイッターのハッシュタグを追いかける
  • メールマガジンで読者に情報提供を求める
  • SNS、ツイッター、ブログなどで、関係者や専門家にアプローチする
  • 記事にアンケートを付けて読者から情報を集める
  • あえて「偏った」記事を掲載して、関係者や専門家からのコメントを引き出す
  • ミクシィのコミュニティを調べる

3. ソーシャルメディアのアカウントはどのように使い分けている?


  • 特に使い分けていない(全て同じアカウント名にしている)
  • サービス毎にアカウント名を変えている
  • 同一サービスで複数アカウントを使い分けている

4. ツイッターでどんな人をフォローする?


  • キャラが面白い人
  • 自分のツイートに対してコメントやRTを返してくれる人
  • その人ならではの情報を発信している人
  • 生情報を出してくれる人(情報源となる人)
  • tudaっている最中に参考情報を提供してくれる人
  • ツイートのテーマがぶれない人(常に自分が関心のあるテーマについてツイートしている人)
  • 応援したい人

このブログでは以前、米国の事例を取り上げたことがありました。


このときは、日本のメディア業界やジャーナリストの間で、報道現場においてソーシャルメディアが巧く活用されるようになるのはもう少し先になるかな、と考えていましたが、もしかしたらもうそれほど先の話では無いのかもしれません。前回の記事でも触れたlibrahack事件でもそうですが、人によっては現時点でもかなり巧くソーシャルメディアを活用されるようになってきています。今後は、使えている人(企業)と使えていない人(企業)、あるいは問題意識のある人(企業)と無い人(企業)の差が益々広がっていくのかもしれません。

ソーシャルメディアのリテラシについても、改めて考えてみたいところです。

2010年12月15日水曜日

ニュースサイトの苦悩 #jef2010

今回も『ジャーナリストエデュケーションフォーラム2010』から。

Yahooトピックスの編集に携われている奥村氏によるワークショップセッション『ネットで「新聞記事」は読まれない』のテーマは、私もこの一年考え続けた「ニュースサイトは、どうすれば社会的に意義のある記事を読んでもらえるのか?」でした。

Yahooトピックスの編集部門では、日々、新聞社や通信社、雑誌社など100以上のニュース配信元企業から数千本の記事を受信、ここからバリューのあるニュースを選別したうえで、ニュース毎に関連記事と関連サイトからなる「ニューストピック」にパッケージ化したうえで、Yahooトピックスに掲載しています。奥村氏によると、Yahooトピックスに対する総アクセスのうち (約43億8000万PV/月、約5000万UU/月)、約6割は「事件事故記事」「スポーツ記事」「エンタメ記事」へのアクセスが占め、社会的に意義のある記事、具体的には次のような記事についてはそこまで見られていないのが現状のようです。

  • 公益性のある記事
  • スクープ・特ダネ記事
  • 調査報道記事

会場のニュースサイト関係者にも同様の問題意識を持たれている方が(恐らく多数)いらっしゃいました。現時点ではどのニュースサイトも根本的な問題解決には至っておらず、ニュースサイトによっては、「社会的に意義のある記事だけではビジネスが成り立たない」ため、例えばエンタメ記事を掲載するなど、PVを稼ぐ(ビジネスを成立させる)ための様々な「苦肉の策」を講じているようです。食っていくためには仕方のないことなのかもしれませんが、やはり今一番注力すべきは根本的な問題解決にあると、私は思います。

ニュースサイトが「社会的に意義のある記事を読んでもらえない」原因には様々なものがあり、当然サイトによってもその原因は異なるとは思いますが、私は今のところ、これら全ては「内容の問題」「手段の問題」そして「企業の問題」の3つに分類できると考えています。

  1. 内容の問題
    例:「読みたいと思わせることができていない(コンテキストが不十分)」
  2. 手段の問題
    例:「ユーザの情報消費手段と記事配信手段がミスマッチ」
  3. 企業の問題
    例:「企業(業界)が信用されていない」

そして「これらの問題を一つ一つ解決していくしか、社会的に意義のある記事を読んでもらうことはできない」というのが私の見解です。ちなみに、ハフィントンポスト(Huffington Post)、プロパブリカ(ProPublica)、そしてCNNの取り組みは、ニュースサイトが上記問題を解決していくうえで非常に参考になるのでは、と、しつこく考えています。


なお、本セッションの詳細については、スイッチオンプロジェクトのブログに解説されています。ご興味のある方は是非。


検察の不祥事よりも、水嶋ヒロが読まれるんです。

2010年12月14日火曜日

ウェブでニュースを深堀する #jef2010

「ニュースの裏に潜んでいる事実・真実をウェブでどこまで深堀できるか?」
「ウェブ上の取材だけで記事化されたものは"あり"か?」


先日開催された『ジャーナリストエデュケーションフォーラム2010』のワークショップセッション『ウェブでどこまでできるのか-この瞬間のニュースを深堀し、展開するためのスキルとテクニック』で、アカデミック・リソース・ガイド岡本真氏が問いかけられたこれら2つのテーマは、いずれも非常に興味深いものでした。

マスメディアが配信する記事は様々な読者を想定して書かれているため、事実だけが端的にまとめられた、ある意味表層的な記事が多く、「そこには書かれていないけれども重要なこと(ニュースの裏に潜んでいる事実・真実)」が見過ごされているケースが多々あります。また、記事に書かれている内容が事実と異なっていることや、記事の作成者による「偏向」があることもしばしばあります。

記事の読者としては、普段目にする記事のこうした特徴を踏まえたうえで、うまく付き合っていく必要があります。そしてここで重要になってくるのが「ニュースの裏に潜んでいる事実・真実を深堀する」ことです。

岡本氏は「今やほとんどの事をウェブで調べる事ができる」「ウェブを巧く利用することで、ニュースの裏を読むための情報を引き出せる」と前置きされたうえで、一本の記事からニュースをさらに深堀するためのテクニックに言及されました。

具体的には「類似の事象を扱った過去の記事を検索し、読み比べ、ニュースのパターンや記事の論調の違いから、記事にない情報を推測する」という方法です。新聞記事の読み比べを実践されている方は多いと思いますが、報道に携われている方は別として「類似の事象を扱った過去の記事」との読み比べを実践されている方は少ないのではないでしょうか。

本セミナーの当日(12月4日)は東北新幹線の全線が開業された日だったのですが、Yahooトピックスに「東北新幹線 一時運転見合わせ」との記事が掲載されました。ここで、記事には運転を見合わせた理由は「強風の影響」とされていましたが、類似の事象を扱った過去の記事をウェブで調べ、新幹線が開業された日には機械トラブルが頻発していることがわかれば、別の視点からニュースの裏側を推測することもできます(例えば「強風の影響はあったかもしれないけど、本当の原因は機械トラブルではないか?」)。

全ての記事についてこうした見方をするのは難しいかもしれませんが、重大なニュースや影響の大きなニュースについては、少々時間を掛けてでも実践してみた方が良いかもしれません。

折角なので、会場から提案のあった「ウェブを使ってニュースを深堀する方法」も併せてご紹介しておきます。

  • 複数のメディアで同じニュースを扱った記事を読む
  • SNSやツイッターでニュースに対する口コミを調べる
  • 関連する企業や機関の公式サイトを調べる
  • (Yahooトピックスの記事であれば)各記事の下段にある関連サイトを調べる

さて、本ワークショップセッションのもう一つのテーマ「ウェブ上の取材だけで記事化されたものは"あり"か?」も非常に強力な内容だったのですが、こちらは別の機会にまとめてみたいと思います。ちなみにこのテーマの背景にあるのは「取材現場へのソーシャルメディアの浸透」です。岡崎図書館事件(通称librahack/リブラハック事件)で、朝日新聞社の記者がこの事件の真相を究明する過程でツイッターを活用されていたのはご存知でしょうか。こうした試みは今後益々増えていくと考えられます。


日本でも最近になってようやくメディア・リテラシ教育の必要性がある程度認知されるようになってきてはいますが、実際にはあまり浸透している様子はなく、メディア・リテラシを向上させるための方法論もほとんど聞いたことがありません。こうしたなか、今回岡本氏よりご紹介いただいた「ウェブでニュースを深堀する」ためのスキルやテクニックは、メディア・リテラシを向上させるうえでも非常に有用ではないかと考えました。今後自分でも実践し、有る程度その有用性を実感できれば、メディア・リテラシ向上のための社内勉強会やワークショップに発展させてみようかと目論んでいます。

2010年12月12日日曜日

ツイート記事アーカイブ(2010年11月)

先月から仕事が忙しくなってしまい、あまり多くの記事を読むことはできませんでした。質を担保するにはある程度の量をこなす必要があると考えているため、少々不本意な状況にはあるのですが、できるだけ良い記事をピックアップしてみたいと思います。

まずはメディアに関する記事から。

さとなお氏による記事「100万人にではなく100人に伝える」は、メディア業界に従事しているものとしては是非読んでおきたいところです。ここに書かれている内容は常に心に留めておきたい。


続いてTechCrunch Japanに掲載された記事からメディア関連のものを4本、ご紹介しておきます。


先月前半は尖閣ビデオ関連の記事が、後半はウィキリークス関連の記事が、それぞれ多く目に付きました。ネット発の一次情報は今となってはもうさほど珍しいものではありませんが、ネット発の一次情報がこれほどまでに「マスメディアが発信する情報」に大きな影響を与えたことはこれまでに無かったのではないでしょうか。先月はネットに対するマスメディアの関わり方が変わる大きな転換点になったのかもしれません。ウィキリークスについては今もまだメディアを賑わせていますが、尖閣ビデオについては少し落ち着いてきたこともあり、非常に興味深い論考記事がいくつか出てきています。


尖閣ビデオは日本だけでなく中国でも話題となったようですが、中国においてもソーシャルメディアは確実に浸透してきており、中国国内のメディアを取り巻く状況を大きく変えようとしています。


ウィキリークスについては、今回のアメリカ外交公電漏えい事件が起こる少し前に、ニューズウィーク日本版に掲載された記事がなかなか興味深いものでした。ウィキリークスには良い面だけでなく、悪い面があることも理解しておきたいところです。


ウィキリークスは現在もサイバー攻撃を受けているようですが、これに関連し、朝日新聞グローブに掲載された「サイバー戦争を報道するための手法」に関する記事はなかなか興味深い内容となっています。報道メディアの現場にはテクノロジーに度長けたが人材が今後益々必要になりそうです。


そのほか、気になるメディア業界の動きとしては、メディア王ルパート・マードック氏が率いるNews Corpが米アップルと共同で始める「iPad新聞」。これが成功するかどうかはともかく、今後もこうした動きは世界中で活発化してくることが予想されます。


関連した論考記事。


最後に、メディア以外の話題で気になった記事を何本かご紹介しておきます。


おまけ。世界で頑張る日本人に関する記事を2本。殺伐とした記事が多い中、こうした記事は良いですね。


嬉しくなります。

2010年12月8日水曜日

ジャーナリストエデュケーションフォーラム2010 #jef2010

先日、ガ島通信藤代氏が中心となって運営されているスイッチオンプロジェクト主催によるセミナー『ジャーナリストエデュケーションフォーラム2010~これからの「伝える」の話をしよう~』に参加してきました。開催場所は東海大学の湘南キャンパス。


本セミナーは「全体セッション」「ワークショップセッション」そして「グループディスカッション(学びの共有)」の3部で構成されており、私が受講したのは以下のセッションとなります(詳細については上記ブログ記事をご参照ください)。

  1. 全体セッション
  2. ワークショップセッション1 / ウェブでどこまでできるのか - この瞬間のニュースを深堀し、展開するためのスキルとテクニック
  3. ワークショップセッション2 / ネットで『新聞記事』は読まれない
  4. ワークショップセッション3 / ジャーナリストのためのソーシャルメディア講座
  5. グループディスカッション(学びの共有)

全体セッションでは、スイッチオンプロジェクトが今年の夏に学生向けに開催したイベント『記者体験プログラム』を振り返りながら、『メディアスクラム、誤報、取材拒否… 大学生による記者体験プログラムで何が起きたか、何を学んだか』について、パネルディスカッションが実施されました。取材する側と取材される側、双方の目線や思惑に行き違いがあることが浮かびあがります。私は記者体験プログラムには参加していなかったため、話されている内容が若干分かりにくかったのですが、それでも、主観的に思惑先行で行われる取材、一度大きな流れが出来るとそれに抗えなくなる現場記者、編集デスクと現場記者間のコミュニケーション問題など、様々な要因があるのだと感じることはできました。

全体セッション後のワークショップセッションで、私は全部で8つあるセッションのうち上記3つを受講しました。いずれもディスカッションに力点が置かれていたこともあり、会場からも活発に意見が出ていました。参加者が現場の記者・編集者や学生、研究者の方々など、多岐にわたり、多様な意見を聞くことができました。私自身非常に得るものが多かったので、ワークショップセッションについては後日個別に記事を書いてみたいと思います。

セミナーの最後に実施されたグループディスカッションでは、学生、テレビ番組の制作に携わられている方、そしてポータルサイトを運営されている方と、それぞれが受講したワークショップセッションについて意見交換させていただきました。同じセッションでも、人によって視点が全く異なるため、とても勉強になりました。こうした時間は本当に有益ですね。なので、今回のグループディスカッションは20分程度だったのですが、もう少し長くても良いのでは、と感じました。

ジャーナリストエデュケーションフォーラムについて、他の参加者の方々もブログ記事を書かれています。


当日の様子(ツイート)がTogetterにまとめられています。


ツイッターでもツイートしたのですが、フリーのジャーナリスト、企業に所属しているジャーナリスト、ジャーナリストを目指している学生、ジャーナリズムを支えている人、そしてジャーナリズムに興味がある人など、様々な立場の方たちによる多様な意見や考えはとても新鮮でした。「これからのジャーナリズムについて」のようなシリアスな問題を一人で考えていると、とかく内に閉じこもりやすくなりますが、このような場で色々な人たちと意見を交わすことで、頭をリフレッシュすることができます。また、新たな知見が増える事で、見えてくるものもや得られるものも多いのではないでしょうか。

運営者のみなさま、この度は貴重な場をご提供いただきありがとうございました。

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[2010-12-16]

各ワークショップセッションに関する記事へのリンクを追加しました。

2010年12月7日火曜日

図式の使いどころ

前回の記事で、「コミュニケーションを円滑にするために利用する図式には、ER図やユースケース図、クラス図など目的とフォーマットが決まった図式と、マインドマップやポンチ絵といったフリーフォーマットに近い図式がある」としました。ここではそれぞれの図式の使いどころについて少し補足しておきます。なお、表記を簡略化するため、以下、目的・フォーマットが明確な図式を「定形図式」、フリーフォーマットに近い図式を「非定形図式」とします。

少し大仰な前置きとなってしまいましたが、基本的なスタンスとしては「非定型図式は誤解を与えることが多い。定型図式が使えるときは定型図式を使い、定型図式が使えない場合に限って(仕方なく、かつ慎重に)非定型図式を使う」ということで良いと思います。

非定形図式はフォーマットが決まっておらず、描く人によって表記ルール(例えば線の種類、矢印の向き、文字の囲みの形に与える意味)が異なるため、これを読み解くためには「表記ルールを理解」したうえで「描かれている内容を理解」する必要があります(2つのステップを踏む必要がある)。一方、定型図式では表記ルールが決まっているため、描かれている内容の理解にのみ集中できます。違いはたった1つのステップの有無ですが、コミュニケーション・ロスの発生ポイントを減らせると考えれば、たった1つのステップでも省けるのは実に嬉しいことなのです。

以上を踏まえ、私が普段から心掛けているのは、「定型図式の適用範囲を広げる」ことです。具体的には次のようなことを実践しています。

  1. 定型図式の表記ルールの習得
  2. 定型図式の描画ツールの習熟
  3. 自分が習得した定型図式の普及

ここで結構重要なポイントが3番目の「自分が習得した定型図式の普及」です。どんなに頑張って図式を描いても、それを理解できるのは自分だけ、という状況ではまったく意味がないですからね。有用な定型図式については周りにどんどん広めて行きましょう。

と、このように普段から定型図式の適用範囲を広げておいても、やはりどうしても非定形図式で表現せざるを得ない場面はあります。例えば以下のような場面です。

  • 自分が習得している定型図式では表現できない
  • 自分が使いたい定型図式の表記ルールを、読み手が知らない(かもしれない)

このようなときには、十分に注意して慎重に非定型図式を描くしかありません。しかし上述した通り、これはなかなか難しい。非定形図式を描くための系統的な知識があまり普及していないこともその一因だと思います。少し遠回りになってしまいましたが、第6回mixbeatワークショップはここを出発点にしても良かったのではないかと考えました。

ちなみに、非定形図式を描くポイントはいくつかありますが、前回もご紹介したウルシステムズの林氏による「ポンチ絵の描き方」は非常に参考になります。


最後にちょっと余談。システム開発の歴史は、コミュニケーション・ロスとの戦いの歴史と言っても過言ではないくらい、多くの人がコミュニケーション・ロスを減らすことに心血を注いできました。そしてその歴史の中で、非常に有用な定型図式がいくつも開発されてきました。私はこうした定型図式のうちのいくつかは、一般的にもかなり有用だと考えています。私が技術者以外の方にもお勧めしている定型図式は、UMLユースケース図、UMLシーケンス図、そしてUMLクラス図の3つです。これらは技術者以外の方も習得しておいて損は無いと思います。特にUMLクラス図は素晴らしく、これ(とオブジェクト指向)に習熟するとほぼどのような「もの」でも表現できるようになり、さらには複雑な物事の整理や分析にも役立てられるようになると思います。

2010年12月6日月曜日

図式を利用して伝え手の意図を表現する

第6回mixbeatワークショップのテーマは「文章を読んで、理解した内容を図式で表現する」でした。図式にはER図やユースケース図、クラス図など目的とフォーマットが決まった図式と、マインドマップやポンチ絵といったフリーフォーマットに近い図式が考えられますが、ここでは「フリーフォーマットに近い図式」が対象となりました。このテーマに至った直接的な経緯について、ワークショップ中は断片的な情報しか得られなかったのですが、整理すると恐らく次のようになります。

  • 自分が見聞きしたことを第三者に伝えるとき、図式を活用することでより円滑に伝える事ができる(コミュニケーションを円滑にするために、図式は使える)
  • しかし、図式を上手く活用するのは難しい(理解し易く誤解を与えない図式を描くのは難しい)
  • 図式を作成するときに気を付けているポイントを、ワークショップで評価・共有してみてはどうか?

私は「情報システム部門のシステムエンジニア」という仕事柄、他部署や取引先とのコミュニケーションを円滑化するために、日常的に図式を活用しています。同時に図式を利用したコミュニケーションの難しさも常々感じていたため、テーマとしては非常に興味深いものでした。他の人は図式を作成するときにどのような工夫をしているのか…

ワークショップの流れは概ね以下の通りで、当日はこれを3セット実施しました。

  1. 各自課題文章を読む
  2. 各自読んだ課題文章の内容を図式で表現する
  3. 各自作成した図式を参加者全員で共有する

運営サイドとしてはこの後さらに「4. 図式を作成するときに気を付けているポイント(ティップス)を共有する」まで行きたかったようなのですが、今回はそこまで辿りつくことはできませんでした。

ここからは当日の様子を少しご紹介します。

冒頭はワークショップの説明。図式を使うことで理解できていないことや間違って理解していることに気付きやすくなる、というのは確かにありますね。



図式の活用シーン。読んだ文章の内容を図式に変換して文章の作成者に「こういうことで良いですか?」と確認。よくあります。



図式を描く際のポイントとして、「要素を取り出す」「関係性を整理する」の2点が挙げられました。ER図やクラス図を想起させます。



運営サイドによる説明が終了。そしていざ実践!

とはならず。

先ほど「このテーマに至った直接的な経緯について、ワークショップ中は断片的な情報しか得られなかった」としましたが、この段階で「このテーマに至った経緯(ワークショップの意義)」や「今回のワークショップでやろうとしていることの全体像」「図式を利用するタイミング」についてあまり説明がなされなかったためか、ここで質疑が紛糾。



それでもとりあえずやってみることに。



みんなが作成した図式が一斉に張り出されます。結構面白い。ですが、図式を共有しただけで終了となってしまい、ここから何を得られるのかは判然としませんでした。



2セット実施後、お昼休みへ。昼食を食べたあと午前中の内容についてみんなでディスカッション、午後もとりあえずやってみようということになりました。しかし、午前中同様、多様性を感じることはできたのですが、ここから何が得られるのか分かりませんでした。

ワークショップの良さの一つに、自分の中で閉じていた知識を他者と比較できる、あるいは自分の中で閉じていた知識を他者に評価してもらえる点があると思います。そして今回のワークショップでは残念ながらここに至れなかったのではないかと感じています。ワークショップの設計も甘口でした。ただ、こうした「失敗経験」は絶対に次につながるはずです。

塾長のブログに、今回のワークショップに関する記事がアップされています。


今回のワークショップは1年あるmixbeat在塾期間のちょうど折り返し地点。mixbeatは本当に勉強になります。

2010年12月3日金曜日

報道メディアとデータジャーナリズム

今からちょうど1年前にブログ『RealTimeWeb』で紹介されていた「データジャーナリズム」ですが、一連のウィキリークス報道をきっかけに注目するようになりました。きっかけとなったのは小林恭子氏のブログ記事です。


以下は佐々木俊尚氏のメルマガ(vol.118『マスメディアとインターネットはどう補完しあえるのか?(後編』)からの抜粋、データジャーナリズムについて。

データジャーナリズムは、政府などが持っている膨大な量の統計資料などのデータを分析し、それらをわかりやすく可視化していくというジャーナリズムです。これは調査報道手法から、デザインやプログラミングまでをも含む非常に広い分野の手法を統合させて、そこにひとつの重要な物語を紡いでいくというアプローチです。

(中略)

データジャーナリズムにおいても、やるべきことは普通のジャーナリズムと変わりありません。何かのできごとを取材し、そこからどのような物語を拾い上げるのかがジャーナリズムの仕事だとすれば、データジャーナリズムも同様に「データを調べて、そこから何らかの物語を抽出する」という行為を行っていくということです。

英紙ガーディアンは既にこのデータジャーナリズムを実践しているようです。その取り組みは、今年8月に米ブログ『Nieman Journalism Lab』に掲載された記事『How The Guardian is pioneering data journalism with free tool / フリーのツールを活用したデータジャーナリズムの先を行くガーディアン』に紹介されています。


ガーディアンは以前からデータジャーナリズムに力を入れており、その集大成は同紙のサイトにある『DATA BLOG』及び『DATA STORE』に結集されています。


同紙は、公開前に情報を得ていたこともありますが、一連のウィキリークス報道でも、賛否はともかく、そのデータジャーナリズムのノウハウを駆使し、多くの記事を発信しています。


一方、日本の場合ですが、国内の報道メディアで取り上げられるウィキリークス関連のニュースはその殆どが外電であることから、独自にデータを分析している(できている)ところは少ないのかもしれません。菅原琢氏(@sugawarataku)の著書『世論の曲解』や田村秀氏の著書『データの罠』でも指摘されていますが、データジャーナリズムは日本の報道ディアにとっては比較的弱い領域のようです(両書ともお勧めです)。

影響力のある報道メディアがデータの取り扱いを誤ると、大きな誤解や誤った分析結果を拡散してしまう恐れがります。様々な重要なデータがネットを中心に一般公開されるようになってきていることもあり、報道メディアにおける質の高いデータジャーナリズムに対する必要性は、これから益々高まるのではないでしょうか。

メディアにコントロールされない

先日、ベトナム戦争を題材にしたノンフィクション映画『ウィンター・ソルジャー』と『ハーツ・アンド・マインズ』を鑑賞してきました。場所は恵比寿の東京都写真美術館。あまりにも衝撃が強く、正直なところ、両作品とも自分の中で完全には消化し切れていないのですが、少なくとも、ベトナム戦争の悲惨さを体で感じることはできました。


「東洋人の命の価値は、西洋人のそれよりも軽い。だから殺しても構わない」と言い放つアメリカの仕官。東洋人は「劣った人種」だと刷り込まれ、ゲーム感覚で兵器を操り、兵士・捕虜・民間人、誰彼構わず目の前に居るベトナム人の殺戮を厭わなくなるアメリカ兵。そのアメリカ兵も、戦争によって体も心もズタズタにされ、帰国するころには何のために戦っていたのかわからなくなくなっていた。そして「自由を勝ち取るため」に助けを求めたアメリカに破壊されるベトナム。戦争は人を狂わせ、憎しみを無限増殖させる。戦争だけはやってはいけない…

これが、両作品を通して私が感じた、ベトナム戦争の悲惨さです。

私は映画を観ながら、何故アメリカはこのような、アメリカ市民自身が後悔するような戦争を始めることができてしまったのか、その理由について考えていました。何故戦争へ突き進む政府や軍部を、市民はとめることができなかったのか。

ベトナム戦争以来アメリカの対外政策を批判し続けてきたMITの著名な言語学者ノーム・チョムスキー氏は著書『メディア・コントロール ―正義なき民主主義と国際社会』の中で次のように指摘されています。

場合によっては、歴史を完全に捏造することも必要になる。

それが病的な拒否反応を克服する一つの方法でもある。誰かを攻撃し、殺戮しているとき、これは本当のところ自己防衛なのだ、相手は強力な侵略者であり、人間ならぬ怪物なのだと思わせるのだ。

ヴェトナム戦争が始まって以降、当時の歴史を再構築するために払われた努力はたいへんなものだった。あまりにも多くの人が、本当の事情に気づきはじめていたのだ。多数の軍人だけでなく、事実に気づいて平和運動などに参加した若者もたくさんいた。これはいかにもまずい。そうした危険な考えを改めさせ、正気を取り戻させなければならなかった。

すなわち、われわれのすることはみな高貴で正しいことだと認識させるのだ。われわれが南ヴェトナムを防衛しているからにほかならない。いったい誰から?もちろん、南ヴェトナム人からだ。ほかの誰がそこにいただろう。ケネディ政権はいみじくも、これを南ヴェトナム「内部の侵略者」にたいする防衛と称したものだ。

この言い方は民主党の元大統領でケネディ政権の国連大使を務めたアドレイ・スティーヴンソンなども使っている。これを公式の見解とし、国民にしっかりと理解させなければならなかった。その結果は申し分なかった。メディアと教育制度を完全に掌握していさえすれば、あとは学者がおとなしくしているかぎり、どんな説でも世間に流布させることができるのだ。

翻って日本。半村一利氏の著書『昭和史』には、無謀な戦争へ突き進む軍部を、新聞が後押しし、日本全体が太平洋戦争へと雪崩れ込んでいく様子が描かれています。

戦争は一度始めてしまうと後戻りができなくなる。
決して始めてはいけない。
しかし、メディアは、私たちを戦争へと誘うことがある。
戦争の啓蒙を、メディアがすることがある。
私たち一人ひとりが、メディアの嘘を見抜けるようになる必要があるのではないか。

うまくまとめることができないのですが、私がメディア・リテラシを大切に思う理由が、ここにあります。私たち市民一人ひとりが考える力をつけ、メディアの情報を鵜呑みにしなくなること、メディアにコントロールされないような「情報耐性」を身に付けること、これはとても大切なことなのではないでしょうか。

2010年11月30日火曜日

ソーシャルメディアの定義をめぐる議論

仕事が立て込んでいるので、後でまとめてじっくり読むためのメモ。

ITジャーナリストの湯川さんが運営されているブログメディア『TechWave』に先週(11月22日)掲載された記事『蔓延する誤った「ソーシャルメディア」の定義【水谷翔】』を発端に、ツイッターやブログで多様な議論が展開されました。


この記事に対する佐々木俊尚氏の反応。

22 Nov @sasakitoshinao


この記事は100%間違っている。そもそもバーチャルの人間関係とリアルの人間関係が融解しつつあるのであって、リアルに固執するのは変。 /蔓延する誤った「ソーシャルメディア」の定義【水谷翔】 http://t.co/kujhF7g

22 Nov @sasakitoshinao


メインストリームを目指してるらしいメディアに掲載されたからです。RT @nob_suzuk: 突っ込みどころ満載だったが、大学生の意見ということでスルーしましたが佐々木俊尚さんは許せなかった模様ですね QT @sasakitoshinao この記事は100%間違っている。

佐々木俊尚氏の上記ツイートに対するツイッター上での反応のまとめ。


佐々木俊尚氏の上記ツイートに対する湯川さんの反応。(12/01追記)


このまとめを受けた津田大介氏の反応。

26 Nov @tsuda


これ明らかに掲載したTechWaveの問題だな。「寄稿」と称して釣りブログ集めてPV稼ぐガジェット通信と同じ手法。 RT @kanose: 「蔓延する「ソーシャルメディア」の定義 大学生が書いたTechWaveの記事への反応まとめ」 http://htn.to/dTbfMH

私が普段購読しているブログでもいくつか反応がありました。とても興味深い。


こうした議論を受けて、湯川さんも反応。


私の周りでも議論がありました。以下は後輩の見解。

今回の問題は、水谷さんの内容うんぬんよりも、掲載されたところが悪かったような気がします。TechWaveバッシング第二章じゃないかと。

水谷さんの主張は、妥当です。CGMとSNSは、「ちゃうよね」という主張は真っ当というか、当たり前すぎるくらいの主張ですし、「ソーシャルなんとか」を売り文句に変な営業活動してる怪しい会社が「日本に多数あるのは、どうかと!」との意見も、「ですよね~」と、うなずける。

要は、「ソーシャル」って言葉が一人歩きして「ガラパゴス野郎は、意味を取り違えんな」ということですね。まあ、それだけなんですけど、流行りですから。昔でいう電気ブランの「電気」とか、舶来カッケーみたいなワードになってますね。そのうち、ソーシャル・ブームに乗って、「ソーシャル主義」とか火がつくかも知れません。

それで、TechWaveなんですが、釣り記事をいっぱい書いたメディアは、もう、メディアとしてはダメなんだと思います(今のTechWaveは、明らかにそーゆう扱い)。今回のケースでは、水谷さんの意見が、「ダメディアの風に載って炎上した」というのが、本当のところなんじゃないでしょうか。TechWaveじゃなかったら、別にここまで、「ナニクソコノヤロウ」みたいな状況には、陥らなかった気がします。「いい情報は出るとこを選ぶ」と、日経さんが常日頃からテレビで口酸っぱく言っていますように…出るところを選ばないと!

単一の情報だけで物事を判断せず、様々な意見に触れたいところ。今回の事象はソーシャルメディアに対する自分なりの考えを確立・熟成させる機会としては申し分ないですね。

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[2010-12-01]

湯川さんの反応記事を1本追記しました。

2010年11月17日水曜日

ソーシャルニュースの未来

「ソーシャルニュース」というサービスをご存知でしょうか?

ソーシャルメディアの一種で、一言で言えば「みんなで(ソーシャルに)作るニュースサイト」。運営者側がニュースを作成する通常のニュースサイトとは異なり、ニュースサイトやブログに掲載されたニュースへのリンクを、読者による人気順に再編成し、読者からのコメントや評価(レーティング)などとともに提供するサービスです。どちらかと言えば、『はてなブックマーク』や『livedoorクリップ』のような「ソーシャルブックマーク」に近いサービスです。ウィキペディアにはそれぞれ次のように定義されています。

ソーシャルニュース - ウィキペディア


専門記者ではなく一般のユーザー(市民記者)が作成するニュースサイトや、専門の編集者をおかずにユーザーによって投稿された記事をニュースとしてのせていく仕組みをとっているニュースサイトのことをいう。

ソーシャルブックマーク - ウィキペディア


インターネット上のサービスの一つで、オンラインブックマークサービスの発展形。自分のブックマークをネット上に公開し、不特定多数の人間と共有する事で、これらを有益な情報源とすることができる。

ソーシャルニュースは一度ニュースサイトに掲載されたニュースを、再度流通させる役割を担っているため、ニュースサイトにとっては非常にありがたい存在とも言えます。

国内ソーシャルニュース・サービスの代表的なものとしては、以下のようなサイトが存在しています。海外のサービスでは『digg(ディグ)』が有名ですね。


と、前置きが長くなりましたが、先週、リンクシェアの美谷さん(@hiroumi)主催によるソーシャルニュースの勉強会に参加してきました。




リンクシェアの美谷さん、ミクシィの徳田さん、そして実際にソーシャルニュースサイト『ニューシング』を運営されている藤川さんによる現状把握のためのプレゼンの後、2つのグループに分かれてソーシャルニュースについてディスカッションしました。私は「ソーシャルニュース・ビジネスの未来」をテーマにしたグループに参加、もうひとつのグループでは「利用者から見たソーシャルニュース」がテーマとなっていたようです。

ソーシャルニュースの現状について、私が捉えたポイントは次の通りです。

  • SNSやツイッターの普及により、ソーシャルニュースの利用者は徐々に増えてきている
  • ソーシャルニュース運営社の収入源の大半は広告収入。ポータルサイトへのデータ(URLのレーティング情報など)販売による収入も一部ある
  • ソーシャルニュースはサービス毎にターゲットが異なる(ニューシングは「夕刊フジ的なニュースを好む人」、チョイックスは「ジャーニーズのファン」)
  • ソーシャルニュースの利用者には「ソーシャルニュース」を利用している感覚がない(ニュースサイトだと思っている)人が多い

ディスカッションでは次のような議論が展開されました。

  • ソーシャルニュースはそもそもビジネスとして成り立つか?(ソーシャルニュースに未来はあるか?)
  • ソーシャルニュースをより多くの人に利用してもらうにはどうすれば良いか?
  • 低俗なニュースばかりが流通する現状をどうにかして打開できないか?

利用者の視点からは「ソーシャルメディアに流通するニュースには同じような傾向のものが多く、これだけでは情報源としては足りない(世の中の流れがわからなくなる)」といった指摘もありました。

日本でソーシャルニュース・サービスが立ち上がり始めた2006年に、AMNの徳力氏が日本におけるソーシャルニュースの普及について興味深い記事を書かれています。


非常に考えるところの多い勉強会でしたので、後日、自分の考えをブログにアップしてみようと思います。

ご参考までに、当日のプレゼン資料の一部がスライドシェアにアップされています。


以下、他の参加者の方によるブログ記事です。


参加された皆さま、夜遅くまでお疲れ様でした。

2010年11月16日火曜日

キュレーターに求められる特性とスキル

前回の記事に引き続き、今回の記事もキュレーションについて。前回同様、Robin Good氏のブログメディア『Master New Media』から、今回は「キュレーターに求められる特性とスキル」です(キュレーションについてはこちらをご参照ください)。Robin Good氏によるキュレーションに関する一連の記事のなかで最も力が入っている印象を受けました。


以下抄訳のため、正確な情報については英文記事をご参照ください。

まずはキュレーターに求められる特性から。

1. 専門性


キュレーターにとって最も重要な特性が、対象分野に対する専門性だ。専門性が無ければ適切な情報を選別することはできない。専門性はキュレーション活動を通してさらに高められる。調査や研究を続けることで、その分野のエキスパートになった人も出てきている。

キュレーターはエキスパートへの登竜門と言える。キュレーターとしての経験を重ねることで、「迅速な情報及びインフルエンサーの特定」、「専門用語や専門技術に対する深い理解」、そして「関連業界における期待や恐れ、トレンドといった雰囲気の把握」が可能となる。エキスパートを目指すキュレーターにとって、これらは全てかけがえの無いスキルとなるはずだ。

2. 関連性


専門性だけでは読者に対して付加価値を与えることはできない(読者に訴求できない)。キュレーターはそこに、読者の理解を促進するための関連性(ストーリー)を与える必要がある。例えば、キュレートした情報が、業界が抱える問題点やニーズと直接関連付けられていれば、読者の満足度は増すだろう(読者の問題解決に繋げられるかどうか、あるいは実用的かどうかが重要)。この関連性の有無が、アカデミックな情報との最大の違いとなる。

3. 信頼性


信頼性は、キュレーターが持つ専門性、一貫性、そして継続性の結果だ。例えばあなたが私にとって価値のある情報を継続的に提供してくれれば、私はあなたを信頼するようになるだろう。従って、信頼性は特定の分野における問題や興味、必要性に直結するコンテンツやテーマをいち早く理解・発見し、これをキュレートすることによって高めることができる。同じ分野のキュレーターやエキスパートに対して敬意を払うことも忘れてはならない。

続いてキュレーターに求められるスキルについて。ここでは全体の鳥瞰を優先し、個々のスキルについて深く言及することは避けました。

1. 検索スキル


主要な検索エンジンを使いこなし、個人のブログやニュースサイトから情報源を探し出して特定するためのスキル。

ここでは検索エンジンから常に有用かつ最新の情報を得られるよう、各検索エンジンの特性(入力可能な検索条件)を把握したうえで、検索条件入力後のURL(検索結果のURL)を管理しておくことが肝要となる。キーワードや日付、言語、などの条件を駆使し、情報を絞り込む作業にも慣れておいた方が良いだろう。

2. メディア・リテラシ


スパムや広告、プロパガンダ、プロモーション情報など、本質的ではない情報を見抜くこと、そして広く流通しているテクノロジーやサービスを使いこなすことがここに含まれる。

3. コミュニケーション・スキル


「複雑な物事を文章で説明するための力」「読者の理解を促進するためのプレゼンテーション力」「絵図を用いて複雑な物事を表現する力」「読者の声を聞いて理解する力」「読者が所属するコミュニティの動向を把握する力」など、キュレーション活動に必要なコミュニケーションのためのスキル。

4. 編集スキル


「情報を選別する力」「読者の理解を促進するようなストーリーを構成する力」「参照情報・引用情報を適切に活用する力」「冗長な表現を要約する力」など、編集作業のために必要なスキル。

5. セマンティック・スキル


情報を整理・分類し、そこからパターン(トレンドや各情報の重要性)や意味、関連性、読者への価値などを見出す力。ここにはSEOに対する理解も含まれる。

6. ソーシャル・スキル


ソーシャルネットワークを構築、あるいは読者とのエンゲージメントを深めるためのスキル。

7. 情報管理スキル


集めた情報を管理(整理・保存)するためのスキル。今直ぐ必要ではない情報についても、適切に管理しておくことで、必要なタイミングで利用できるようになる。

8. 情報技術スキル


情報の収集や公開に必要な情報技術(IT)の特性を理解し、適切に活用するためのスキル。

前回の記事でもご紹介した通り、キュレーターの業務範囲はとても広く、高い専門性が要求されることもあり、多様なスキルが要求されるようですね。ここまで来ると、やはり専門職とすべきなのでしょう。

さて、キュレーションについては本記事で一応一区切りとなります。お読みいただきありがとうございました。コンテンツ・キュレーターの重要性は今後益々高まってくるはずです(『キュレーションの必要性』を参照)。ジャーナリストにとっては、キュレーションに関するスキルは必要不可欠なものになりつつあるのではないでしょうか。本ブログではキュレーションについてこれまでに何本かの記事を書いてきました。これらがこれからキュレーターを目指される人、あるいはキュレーションを導入するメディア企業において、少しでもお役に立ててれば嬉しい限りです。


最後に、ご参考までにキュレーションに関する良記事をピックアップしておきます。こちらも是非。

2010年11月15日月曜日

キュレーターは何をする?

NAVERが『NAVERまとめ』をリニューアルして以降、コンテンツ・キュレーションを実践されている方は徐々に増えきている印象があります。私も使っていますが、これは結構良いですね。


とは言え、キュレーションを実践する「キュレーター」は一般的にはまだ馴染みのない職種であり、本来この職種が最も必要とされるメディア企業においては、ほとんど存在していないのではないでしょうか(いらっしゃったらごめんなさい)。

そこで本記事では、キュレーションについてさらに理解を深めるために、Robin Good氏のブログメディアMaster New Mediaに掲載されていた記事を基に、キュレーターの作業内容について少し具体的に解説してみようと思います。抄訳のため、正確な情報は英文をご確認ください。みなさまのキュレーション活動の参考となれば嬉しいのですが。


Robin Good氏はキュレーション業務を21の作業項目に分解して「シーケンス」として解説されていますが、ここでは理解しやすさを考慮し、21の作業項目をさらに5つの作業単位(「準備」「収集」「編集」「公開」「改善」)に分類・整理して、紹介させていただくことにします。

なお、本ブログでは過去に一度『キュレーションの業務フローと業務プロセス』と題してキュレーション業務の概要をご紹介したことがありましたが、本記事はこれをリファインするような位置付けとなります。

[Step1] 準備


キュレーションのための準備をします。ここには以下4つの作業が含まれます。

  1. キュレーションのテーマ(分野)を特定する
    ある程度のユーザ数が見込め、かつ自分の専門知識を活かせる分野を選定します。
  2. 情報ソースを選別する
    有益な情報を引き出せるニュースサイト、ブログ、RSSフィード、ツイッターアカウント(リスト)、フェイスブックページなどを選別します。
  3. 情報収集ツールを選別する
    RSSリーダやソーシャルブラウザなど、情報ソースから情報を引き出すための最適なツールを選別します。
  4. ネットワークを構築する
    キュレーション対象のテーマに強い専門家や記者やジャーナリスト、熱心なユーザ、インフルエンサーといった人たちのネットワークを構築します。

[Step2] 収集


情報を集めます。ここには以下2つの作業が含まれます。

  1. 情報を集約する(アグリゲーション)
    Step1で選別した情報収集ツールを利用し、情報を集約します。
  2. 情報を選別する(フィルタリング)
    集約した情報からスパム情報や虚偽情報、品質の低い情報を取り除きます。

[Step3] 編集


集めた情報を基に、読者に提供する情報を生成します。ここには以下9つの作業が含まれます。

  1. 提供する情報を選択する
    Step2で集めた情報のなかかから、実際にユーザに提供(紹介)する記事あるはレポートなどを選択します。
  2. 提供する情報を検証する
    ユーザに提供する情報の正確性や、情報源を検証します。
  3. 提供する情報を編集する
    ユーザに提供する情報の体裁を整えます。読者の理解を促進するために、必要に応じて導入文やサマリ文を作成します。参考文献などがあれば、そこへの参照リンクも付与します。
  4. コンテキストを付加する
    読んで欲しい読者の興味を惹くようなコンテキストを付加します。
  5. 独自の視点を付加する
    キュレーター自身の視点や意見を付加します。独自の視点は大きな付加価値となるため、単純な再配信や再掲載との差別化を図るためにも、これは非常に重要な作業となります。
  6. タイトルを付ける
    その情報を必要とする読者が判別しやすいタイトルを付けます。ここで、読者の信用を無くすようなセンセーショナルなタイトルは控えます。
  7. クレジット情報を付ける
    クレジット情報は信頼性を向上させるため、可能な限り付けるようにします。
  8. 掲載場所(掲載順)を調整する
    読者の理解にも関わるため、情報の掲載場所や掲載順はとても重要です。
  9. 情報を整理する
    読者から見つけやすくするために、各情報に属性情報を付与、あるいは情報をまとめておきます。

[Step4] 公開


編集した情報を公開します。ここには以下3つの作業が含まれます。

  1. 情報を更新する
    定期的に情報を更新します。
  2. 自分についての情報を公開する
    キュレーションの対象、自身の専門分野など、キュレーターについて知ってもらうための情報を公開します。
  3. 情報を流通させる
    オンラインメディアやソーシャルネットワーク、アグリゲーションサービスなどを活用し、キュレーションした情報を流通させます。

[Step5] 改善


ここには以下3つの作業が含まれます。

  1. 読者からのフィードバックを得る
    読者からフィードバックを得ながら、読者との信頼関係を構築していきます。
  2. 読者の傾向を分析する
    アクセスログやアクセス解析ツールなどを利用し、アクセス数やセッション数、ユーザ数、サイト滞在時間など、読者の傾向(利用動向)を分析します。
  3. キュレーション業務を改善する
    読者からのフィードバックや読者の傾向を基に、上記全ての作業内容について改善を続けます。

以上がRobin Good氏の記事で紹介されていたキュレーターの作業内容(キュレーション業務の内容)です。作業項目が多く、個々の作業も決して容易なものではなさそうですが、だからこそ「キュレーター」という専門職が必要になってくるのではないかと考えました。

キュレーターが業務を遂行する上で利用できそうなツール(全て英語)が『Master New Media』に紹介されています。こちらもご参考までに。

2010年11月14日日曜日

#book 街場のメディア論

内田樹氏の著書『街場のメディア論』についてブログを書こうとここ1ヶ月ほど悶々と切り口を考えていたのですが、一時断念します。まとまりませんでした。力不足。(それほど私にとって内容が濃密でした)



本書では「何故日本のマスメディアは凋落したのか」「何故凋落したと言えるのか」「本来マスメディアはどうあるべきか」「マスメディアの凋落は日本にどのような影響を与えているのか」など、内田氏の「メディア論」が展開されています。著作権に対する考え方も実に面白い。メディア業界の人だけでなく、メディアに興味のある方ならどなたでも一読の価値があるのではないでしょうか。本書の内容について、色々な方と議論してみたいですね…

一点だけ。

本書の第5章『メディアと変えないほうがよいもの』において、内田氏は「医療」「教育」そして「メディア」は金儲けをするためのものではない(市場原理を持ち込むべきではない)、と指摘されています。これについて、私は大いに同意します。メディア(もちろん、医療と教育も)は「金儲け」ではなく「持続させること」をまず第一に考えるべきだと。そしてそれこそが社会的な責任なのではないかと。その理路については、また後日。

2010年11月12日金曜日

ツイート記事アーカイブ(2010年10月)

今月から私がツイッターでツイートした記事のうちメディア業界に関する記事を中心に、過去1カ月分を読み直した上で、毎月1回ブログにまとめることにしました。メディア業界関連の記事は社内の勉強会で議論するためのネタにしようかと考えており、メディアに関する普遍的な論考やメディア業界の大きな流れを掴めそうな記事を中心に選定しようと思います。また、テクノロジーや社会問題など、個人的に興味のある分野についても最後の方でまとめてみようと思います。

それでは早速。先月(2010年10月)ツイートした記事は51本ありました。以下、これらの中からいくつかピックアップしてご紹介します。

まずはメディアやメディア業界に関する記事から。

先月公開された内田樹氏によるマスメディアに関する記事は実に示唆に富んでおり、氏の著書『街場のメディア論』と合わせ、是非読んでおきたいですね。マスメディアに在籍するものとしては手厳しい話がいくつも内包されておりますが、それらは全て真摯に受け止めたいと考えています。


テクノロジーが進化し、フェースブックやミクシィを始めとしたSNS、ユーチューブやツイッターといったソーシャルプラットフォーム(「ソーシャルメディア」「ソーシャルウェブ」との表記もありますが、今後は「ソーシャルプラットフォーム」で統一してみたいと思います)の普及が進んでいます。こうした現状を踏まえ、ではこれからどのように情報の流通形態が変化していくのか、その論考を深めていく必要があると考えています。そしてその上でインプットになりそうな題材として、今月は以下の記事に注目してみました。


続いて国内外のメディア業界の動向に関する記事。

先月は海外のメディア事情について気になった記事が2本ありました。いずれもニューズウィーク日本版のサイトから。


国内メディア企業の動きについて2本。


その他、以下の記事に注目してみました。


メディアに関する記事は以上です。ここからは個人的に興味のある分野の記事からいくつかご紹介します。

先月は国内の貧困問題に言及する記事をいくつか目にしました。この分野の記事については今月以降も気になるものがあれば紹介していこうと思います。


フォトジャーナリストの佐藤慧さん(@KeiSatoJapan)とは、以前『「8月15日を撮る」プロジェクト』でご一緒させていただいたのですが、とても魅力的な方です。熱意と行動力が素晴らしい(羨ましい!)。慧さんが扱われている分野が私の興味分野と重なっていることもあり、慧さんの取材活動には今後も注目していきたいと思います。


今月は、他にも以下のような記事に注目してみました。


ここでピックアップした記事について、もしご意見などあればお聞かせください。ブログのコメント欄でも良いですし、ツイッターで話しかけていただいても構いません。

読み直したり編集したりと若干手間はかかるのですが、この取り組みは少し続けてみようと思います。

2010年11月8日月曜日

文章を読み取る力をつける

毎月恒例のmixbeatワークショップ、今月のテーマは「文章を読み取る力をつける」でした。人によって経験や知識、感性は異なるなめ、同じ文章を読んでも文章の読み取り方、例えば気付くことや思うこと、疑問を持つことは様々です。本ワークショップの狙いは、この「文章の読み取り方(着眼点)」の違いを可視化し、自分と他者を比較しながら他者の良い部分を取り入れることで、最終的に文章を読み取る力をつけよう、というものです。

ワークショップのおおまかな流れは以下の通り。

  1. 参加者全員で一斉に同一文章を読み、着眼点を制限時間内に書き出す
  2. それぞれが書き出した着眼点を参加者全員で共有する
  3. 共有された着眼点をもとに参加者全員でディスカッションする

当日はこれを2回実施しました。詳細については『mixbeat活動報告ブログ』を是非ご参照ください。


ここからは少し当日の様子をご紹介します。

まずはルールの説明から。



一通り質疑応答を終えたら、いざ実践。A4用紙で2~4ページぐらいの比較的短い文章を一斉に読みはじめ、着眼点を書き出します。この日提示された文章は「旅行記」「教科書からの抜粋」「専門雑誌の記事」など、普段殆ど読まない類のものばかり。参加者全員にとってあまりなじみの無い文章が良い、との判断から、こうした文章が選択されました。制限時間は15分。質よりも量を重視し、とにかく着眼点を書き出します。普段しない読み方で結構疲れましたが、良いトレーニングになったと思います。



続いて、書き出された着眼点の共有&ディスカッションタイム。バラエティに富んだ他者の着眼点に触れ、多様性は感じることはできました。しかし、着眼点そのものが議論の主題となってしまい、(私にとっては肝心の)「何故そこに着目したのか(理由)」について殆ど言及されず、残念ながら午前の部は消化不良のまま終了しました。



ということで、昼休みに主催者と参加者で話し合い、午後からは少しルールを変更。こうした柔軟さは私も見習いたい。当日変更がきく、ということは、ワークショップの骨組みがしっかりしているからだと思います。

お弁当。私は午前の部で最も多く着眼点を出せたため、優先的にお弁当を選ぶことができました。迷わず山形牛のハンバーグ弁当を選択。



そして午後の部。ディスカッションの進め方は、午前の部と比較すると改善されたと感じたのですが(塾長は「改悪だった」と指摘)、やはりまだ消化不良でした。



とは言え、今回のワークショップはかなりよく出来ていました。主催者の入念な準備があってこそだと思います。進行でストレスを感じる事もなく、最後まで集中できました。また、テーマも良かったと思います。他者の視点を知り、それと自分の視点とを比較することで、個人的に大きなテーマの一つ、相対化も一歩進めることができたように感じました。「着眼点を視覚化して共有する」仕組は読書会やソーシャルリーディングでも応用できるのではないでしょうか。

さて、ワークショップ終了後、消化不良を解消するには何をどうすれば良かったのだろう…と思案を重ねていたら、塾長がご自身のブログに目の覚めるような改善策を提示されていました。

その人の視点や視座の可視化はたしかに難しいんだけど、ぼくがやるなら「何を選ぶか(選ばないか)」をもっとわかりやすくするかな。
たとえば5つの文章を読んでおもしろい順に並べ替えさせてその理由を問うとか、ベストとワーストについて聞くとか。
あるいは同じ映像を見せた後、それぞれ別室に呼んで各自1分で要約させることでどこが印象に残ってるのかを明らかにするとか(もちろんそれも撮影してあとで全員で共有する)。

昨日のは玉石混淆であることを自覚しながら、それを広げただけで終わったので、もう少しそこから玉を拾い上げる工夫がいるだろうな。

そうなのですよね、「何を選ぶか(選ばないか)」が重要なのですよね。当日、面白い視点はいくつかあったのですが、「自分も取り入れたい」と思えるような視点はそれほどありませんでした。ただそれは自分の価値観をもとにしたからであって、他の人の価値観を聞く事で、もしかしたら自分の考え方も変わったのかもしれません。自分の今の視点は自分の価値観をベースに造られたものであるため、これを変えるとなると、まず自分の価値観を変える必要がある、というのは当然の帰結だと思います。自分の価値観を変えなければ、他者の視点の良さを感じることはできません。

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[2010-11-12]

このワークショップを主催したまっちゃんのブログに、テーマ選定の経緯がまとめられています。


背景を知ることで、テーマへの理解も深まると思います。

2010年11月5日金曜日

腐らない文章

内田樹氏が著書『街場のアメリカ論』のあとがきで「腐らない文章」という概念に言及されています。

文章においては「しばらくすると腐る」ところと「なかなか腐らない」ところがある。「風穴」があいていると文章はなかなか腐らない。

<中略>

きちんとパッケージされていて、理路整然、博引旁証(はくいんぼうしょう)、間然するところのない文章であっても、「風穴」があいていないと経時的変化とともに、「酸欠」になって、腐り始める。

<中略>

「腐る」というのは言い換えると「経時的に汎用性がない」ということである。つまり、例えば、今から二十年前の読者や今から二十年後の読者というものを想定したときに、その人たちにもこちらの言いたいことが「伝わる」かどうかということである。その程度の広がりの中なら、十分に読解可能であるのは「腐らない文章」である。

「二十年前、あるいは二十年後の読者に伝わる」という視点はとても新鮮でした。一方で「腐る文章」については次のように言及されています。

メディアがもてはやす「切れ味のよい文章」はたいていの場合、「同時代人の中でもとりわけ情報感度のよい読者」を照準している。二十年前や後のことなんかあまり考えない。ファッショナブルな月刊誌の場合などはしばしば先月号の読者を「時代遅れ」と冷笑して切り捨てることさえ厭わない。

でも、その気遣いの欠如(そのクールさが外形的には「かっこいい」のだ)が文章を腐りやすくする。同時代のさらに狭いサークルでの「内輪の語法(ジャルゴン)」が通じるような少数の読者にのみ限定するような文章が、時代も場所も状況も違う読者にとっても読解可能であるかどうか。考えてみれば誰にもわかる。

「切れ味のよい文章(腐る文章)」がもてはやされる背景には、「読者側からの要求」もあるようですね。

どうもファッショナブルで「メンバーズ・オンリー」的な排他性をたたえた文章を書きたがる人も読みたがる人も後を絶たない。たぶんそのような排他的なポーズが読者の欲望をそそるということをみんな知っているからだろう。

ネット上に溢れる文章情報について、個人的な印象としては「腐る文章」が溢れているように感じます。新旧メディアが乱立する中、多くのメディアは何とか多くの人の注意を引くために、あるいは日銭を稼ぐために「腐る文章」を量産してしまっているのではないでしょうか。これが悪いことだとは言えませんが、腐る文章を量産するようなメディアが長生きできるとも到底思えません。

このブログでは「文章で伝えること」について、これまでに何本か記事をポストしてきました。


並行して私自身色々と試してはいますが、なかなか「伝わる文章」を書けている実感が湧きません(恐らくこの文章自体も「伝わる文章」からは程遠いのですよね)。そもそも何を目指せば良いのかがわかりませんでした。しかし今、少し方向性が見えてきたような気がしています。

私はこのブログで「腐らない文章」、すなわち「十年後・二十年後の読者にも伝わる文章」を目指してみようと思います。そしていつかは「腐らない文章」(百歩譲って「腐りにくい文章」)が書けるようになりたいものですね。

あとがきについてのみの記事となってしまいましたが、『街場のアメリカ論』の本編も是非どうぞ。内田樹氏による「日本人に根付くアメリカ観」に関する考え方はとてもユニークで面白いですよ。



本当に勉強になります。

2010年11月4日木曜日

ジャーナリストのためのmTurk利用ガイド

アマゾンが展開している Amazon Mechanical Turk(mTurk)というサービスはご存知でしょうか?


コンピュータプログラムで処理するにはハードルが高い単純作業を、世界各地の登録作業者に分散して処理してもらうサービスです。「人力Hadoop」といったところでしょうか。もともとはアマゾンが「商品説明ページの重複を見つけるために」開発したようなのですが、2005年11月に一般向けに公開されました。mTurkは例えば大量の写真に対してタグ付けしてもらうような画像処理に向いているようです。まだ英語版しか無いのですが、日本でも既に利用されている方もいらっしゃいます。


結構評判は良さそうですね。ちなみにオープンソースでJAVA版APIも存在します。


今年オンラインメディアとして初めてピューリッツアー賞を受賞した米国の調査報道NPOプロパブリカ(ProPublica)は、このmTurkを活用し、調査(取材)に掛かるコストを圧縮しているようです。そして実際にプロパブリカで利用しているmTurkの「ジャーナリスト向け」利用ガイド(英語)が、Robin Good氏のブログMaster New Mediaで公開されました。


今後もメディア企業に対する記事作成コストの圧縮圧力は高まることが予想されます。そうした中、mTurkのような「取材活動に掛かるコストの低減を期待できるサービス」の利用は、検討する価値があるのではないかと考えました。機会があれば是非一度試してみたいですね。

2010年11月1日月曜日

ソーシャルメディア・リテラシ

先日、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)で開催されている『「ネットの力、みんなのチカラ」プロジェクト』に参加してきました。


私が受講したのは、ブログ『ガ島通信』を運営されているジャーナリスト・藤代裕之氏(@fujisiro)による講義『ソーシャルジャーナリズムの可能性。私たちに何ができるのか』です。



テクノロジーが進化し、ブログやツイッター、ユーチューブ、フリッカーなどのソーシャルメディアが普及したことで、ある程度のリテラシがあれば誰もが情報を発信できるようになりました。つまり、ジャーナリストの定義を「メディアに記事や素材を提供する人」とするのであれば、誰もが「ジャーナリスト」になれるわけです。本講義ではこうした現状を踏まえ、「ソーシャルメディアで情報を共有するとき、何を気をつければ良いか」について、ディスカッションが行われました。ユーストリーム中継もあったため、結構活発な議論になっていたと思います。

議論の冒頭ではまず「日本の従来マスメディアが報道目的でソーシャルメディアを巧く利用できていない現状」が紹介されました。日本のマスメディア企業、実は結構ソーシャルメディアを使っています。例えばブログ。産経新聞の『イザ』や神奈川新聞の『カナロコ』など実に38サイトあります。SNSも9サイトあります。最近では毎日新聞がツイッターと連動した新聞『毎日RT』を発刊したことも記憶に新しいと思います。また、アサヒコムは『はてなブックマーク』と連携するようになりました。しかし残念ながらどれも上手くいっておらず、インターネット上の情報流通において主流になれていない…

本来であればここを出発点に「日本のマスメディア企業がソーシャルメディアを巧く利用できない理由」について考えを深めた上で、「日本のマスメディア企業を反面教師とし、それでは我々はどのようにソーシャルメディアを利活用すれば良いのか(解決策)」について議論を進めるような流れだったのですが、時間切れとなってしまいそこまで深い議論はできませんでした。この日主に議論できたのは以下2点です。

  1. ソーシャルメディアで情報を収集するとき、情報の信頼性はどのように確保するか?
  2. ソーシャルメディアで情報を発信するとき、何を気をつければ良いか?

1番目の論点では、会場から「発信者のソーシャルグラフを確認する」「発信者が過去に発信した情報を確認する」「発信者の肩書きや経歴を確認する」「実名で情報を発信しているかどうかを確認する(実名であれば信頼度が増す)」などの方法が提示されました。ツイッターであれば「フォロワーの数」、ブログであれば「人気ランキング」も参考になる、との話もありました。藤代氏は「近い将来、信頼度が数値化されるのではないか」とも話されていました。みなさんはどのような方法で取得する情報の信頼性を確保されていますか?

2番目の論点では、藤代氏から「ソーシャルメディアで情報を発信している人の中には、従来マスメディア企業と同じ過ちを犯している人たちが居るのではないか?」との問題提起がありました。例えば「センセーショナルに情報を発信する」「実名を出さずに言いたいことだけ言う」などです。こちらについてはみなさん、いかがでしょうか?

ちなみに2番目の論点において、私がマスメディア企業にとって大切だと考えるのは「想像すること」です。より具体的には「デジタルディバイドを想像する(それを読めない人が居ることを想像する)」「情報流通経路(どのように情報が伝播していくか)を想像する」「情報の摂取方法(どのような方法で情報を取得しているか)を想像する」「読者の心や考え方に与える影響を想像する」などです。そしてこれらを想像するためには「情報を上から下に流す」という考え方を変える必要があると考えます。この辺はもう少し自分の考えを整理したうえで、あらためて書いてみることにします。

メディアリテラシについても改めて考えてみたいですね。


なお、本講義の模様はこちらから確認できます。


講演はあと3回あります。豪華な講師陣。時間があれば参戦したいところ。

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[2010-11-05]

少し前の朝日新聞グローブにメディアリテラシに関する特集が組まれていました。ご参考までに掲載しておきます。


ここでは「行動規範」について言及されていますね。これについても今後考えて行く必要があるものと考えます。

2010年10月29日金曜日

CNNのデジタルメディア戦略

アドテック東京(2010年10月28日・29日)の2日目に、CNN.comの上席副社長 Kenneth "KC" Estenson 氏による「革新的デジタルメディア戦略 消費者が求めるデジタルメディアとは?」と題されたプレゼンがあり、私はこれに出席してきました。


ここで紹介されたCNNのデジタルメディア戦略が非常に興味深いものでしたので、拙い文章で恐縮ですが、ここに概要をまとめておきます。

■ CNNが捉えている時代の変化


CNNは次のように時代の変化(テクノロジーの進化)を捉えている。

  • デジカメの進化、ウェブサービスの充実などにより、リポーターが一人で出来る事が増えた
  • ケータイ電話やスマートフォン、モバイル端末、PCの普及により、同時に複数のメディアに接触できるようになった(そのため、メディアへの接触時間は増えている)
  • 多様な新興メディア企業が登場したことにより、競合他社が細分化してきている(これまではテレビ局同士の戦いだった)
  • ソーシャルメディアの普及により、聴視者の反応がリアルタイムに分かるようになり、また、聴視者とのコミュニケーションが取れるようになった

こうした時代の変化を背景に、CNNは「報道の質を向上させること」「コンテンツをデバイスに最適化させること」そして「聴視者とのエンゲージメントを深めること」に注力している。例えばニュースの掘り下げや分析、インタビューを増やしたり(報道の質の向上)、デバイスへの接触方法を考慮してコンテンツを配置したり(デバイス最適化)、市民記者との協力体制を築くなど(エンゲージメントの深化)、といった施策を進めている。

■ CNNのデジタルメディア戦略


CNNのデジタルメディア戦略の肝は次の3点にある。

  • 編集部門の拡充
  • ソーシャルメディアの取り込み
  • プラットフォームの活用

競合企業が細分化した今、速報記事だけでは勝負にならない。フィーチャー記事(読み物的な記事)や分析記事といった内製コンテンツを強化するとともに、市民記者から投稿される動画コンテンツなども強化していく必要がある。そしてそのために編集部門を拡充している。CNNでは市民記者から投稿された動画コンテンツには全て目を通し、チェックを通ったものだけを採用している。

ソーシャルメディアは今や必要不可欠なツールだ。自社のコンテンツをより多くの聴視者に見てもらうに、聴視者同士のソーシャルネットワークを活用する。CNNはソーシャルメディアを恐れない。フェイスブックコネクトは早速導入した。また、ツイッターなどで聴視者の動向をチェックし、その結果をリアルタイムにサイトへ反映させる(コンテンツの配置をリアルタイムに変更する)仕組を採り入れている。

(注:「プラットフォームの活用」についてはあまり言及されていなかったのですが、恐らく「自社で全てのシステムを作るのではなく、ツイッターやフェースブックといった外部サービスも利用する」あるいは「メディアに必要な機能をある程度パッケージ化しておき、新規メディアを立ち上げるコストを低減させる」といったことだと思います。どなたか情報をいただけると助かります。)

■ iReport、市民記者について


CNNは市民記者からニュースソースの投稿を受け付けるサービス「iReport」を通して、市民記者との信頼関係を築きあげている。現在iReportには、全世界で約60万人の市民記者が登録している。市民記者からはこれまでに50万件以上のニュースが投稿されたが、その全てに目を通した。そして編集者のチェック(裏取り)に通ったものだけを、サイトやテレビに採用している。

CNNのリポーターが行けないところにも市民記者は居る。テクノロジーの進化により、市民記者も品質の高いコンテンツを作れるようになった。ハイチ地震では市民記者から投稿されたコンテンツ、特に安否情報は役立った。

iReportは2006年にサービスを開始したが、それまでに紆余曲折があった。当初はプロのジャーナリストからの反対もあった。しかしそれを乗り越えた。

CNNはテクノロジーに相当力を入れている印象を受けました。ここまでソーシャルメディアを活用し、さらにはニュースサイトをインタラクティブに作り上げているメディア企業は、世界中を見回してもなかなか無いのではないでしょうか。また、市民記者への取り組みは、日本の状況と比較すると特筆すべき点だと考えます。


Estenson氏は他に次のようなことにも言及されていました。

  • 若者へのアプローチを工夫している
  • 今後はモバイルに力を注ぐ
  • グローバル戦略においてローカルの文化を大切にする
  • ブランドイメージを大切にするために、CNN.com上の広告は全て自分達で調達している。アドネットワークは使わない

日本のメディア企業にも是非頑張って欲しいですね…

以下は会場で配布されていた冊子に掲載されている本プレゼンの紹介です。参考までに転載しておきます。

伝統的であろうと新興であろうと今日のメディア企業は、デジタル分野のグローバライゼーションを常に見据え、新規のユーザ獲得という命題を抱えつつ既存の消費者とのつながりをいかに維持していくかという難問と日々格闘しています。ユーザ参加型コンテンツやソーシャルネットワーク、ロケーションベースのサービス等がもたらすパラダイムシフトに取り組みながらも、メディア企業は革新的かつ収益をもたらす理想のバランスを追求するパートナーシップを模索しなければなりません。CNN.com上席副社長兼ジェネラル・マネージャーのKCエスタンソンが、収益の強化とCNNブランドの持つブランド力の維持を実現する一方で、いわゆる「旧メディア」ブランドに新たな革新の精神と失敗を恐れない実験という新たな風を吹き込むことに成功してきたのかを語ります。

また、講演内容に関するツイッターのツイートをTogetterにまとめておきました。断片的で恐縮ですが、当日の雰囲気や話の流れを掴んでいただけるのではないかと思います。


CNNのデジタルメディア戦略について、もっと調べてみたいですね。

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[2010-10-30]

ブログ『メディア・パブ』に、iReportに関する詳細な情報がありました。


ご参考までに。

2010年10月28日木曜日

日本に市民ジャーナリズムが定着しない理由

少し前、2010年6月21日にNYタイムズに掲載された日本のジャーナリズムに関する記事が非常に興味深い内容でした。


JANJANやオーマイニュースなどを例に、日本で市民ジャーナリズムや新興メディアが勢力を伸ばせない理由について言及されています。なかなか読み応えのある記事でしたので、以下、抄訳を掲載しておきます。もし誤訳を発見されましたら、ご一報いただけると助かります。

日本のメディアの現状


オンラインニュースメディアJANJANは過去数年間、市民記者による捕鯨やマスメディアと政府の共謀といったタブーに切り込む記事を提供することで、日本の体制に従順な生ぬるい報道機関に対し果敢に挑戦を続けていた。しかしこのサイトは最後まで十分な読者、十分な広告を得る事ができず、3か月前(注:2010年3月)についに閉鎖へと追い込まれた。(注:JANJANは今年4月24日から「JANJAN Blog」として新たにスタートを切っています)

未来を嘱望された市民ジャーナリズムによる日本の主要なオンラインニュースメディアは、過去2年で全て閉鎖(JANJAN、オーマイニュースツカサネット新聞)、あるいは規模を縮小(PJニュース)したことになる。

これは単に市民ジャーナリズムが失敗しただけでなく、未だ日本には画一的で硬直化したニュースメディアへの対抗軸が存在していないことを意味する。

JANJANを設立した竹内氏は「日本はまだ(市民ジャーナリズム受け入れる)準備が出来ていない」と話す。「日本でオルタナティブなニュースメディアを立ち上げるのはとても難しい」

日本は、長期に渡った経済的不調の末の政権交代を機に、「戦後的な構造」の解体が徐々に推し進められようとしている中、同じく「戦後的な構造」であるニュースメディアは、これまでのところ「変化」の外側にある。民主党は排他的な記者クラブの解放を推し進めようとしてはいるが、これではまだ抜本的な改革とは言えない。

米国を含めた先進国のニュースメディアで起きているデジタル革命を起点とした変化は、日本では文化的、あるいは経済的な理由などにより、まだ起きていない。日本のニュースメディアは、昔から存在している読売新聞などの旧来からの巨大メディア企業によって支配されているのが現状だ。

特定の人たち向けのブログやショッピングサイト、チャットルームなどは日本でも流行している。しかし、ニュースサイトには多様性が無く、そしてその殆どは旧来からの巨大メディア企業がほんの付け足し程度に運営しているものだ。

他の国々では、例えばアメリカのハフィントンポストのような、影響力を持った新興ニュースメディアが誕生してきている。日本にもJ-CASTニュースThe JOURNALのような新興メディアは存在しているが、これらは十分な読者(影響力)を獲得しているとは言えない。

市民ジャーナリズムサイトはタブーに切り込むことで多くの注目を浴びてきたが、繁栄することはできなかった。JANJANより前、オーマイニュースは2年前に閉鎖、そしてツカサネット新聞は昨年9月に閉鎖した。また、PJニュースは規模を縮小し、今では専用のオフィスすら持ち合わせていない。

先の竹内氏も含めこれらのオンラインメディアに従事してきた人達は、収入面、運営面からいくつもの失敗理由を挙げているが、その中で竹内氏は、突出することを嫌う「日本的な文化」にも原因があるのではないかと考えている(目立つ人、人とは異なる事をやる人を軽蔑する日本の文化が、「市民記者制度」にマッチしない)。

日本の隣国、韓国と比べてみよう。オーマイニュースは市民ジャーナリズムで旧来からある巨大メディア企業に挑み、韓国のメディア業界に変革をもたらした。そして2002年、韓国大統領選に大きな影響を与えた(オーマイニュースがノ・ムヒョン氏を支持、そのまま大統領に選出された)。その後オーマイニュースは62,700人の市民記者を抱え、運営サイトのページビューが200万PV/日を誇る強力なメディア企業となった。日本の3分の1の人口であるにもかかわらず…

しかしそのオーマイニュースでさえ、日本では成功しなかった。ページビューは高々40万PV/日、市民記者の数も4,800人に留まった。

日本オーマイニュースの元社長・元木氏などは、日本人がオルタナティブなニュースメディアに対して抵抗する理由として、社会性・政治性の欠如(社会や政治に対する関心の低さ)を挙げる。韓国人の政治への関心の高さがあったからこそ、オーマイニュースは韓国で成功できた。

日本のジャーナリスト、佐々木俊尚氏は「利害の衝突を自覚したときにのみ、その社会は新たな視点や情報を求めるようになる」と話す。

メディアの専門家は「日本人はまだ旧来メディアに対して強い疑問を抱いていない。ほとんどの日本人は未だ旧来メディアからの情報を受動的に受け付けている」と話す。

それでも日本のニュース業界には変化の兆しがある。特に日本の若者の間では、新聞の影響力が低下してきている。

例えば世界第2位の発行部数を誇る朝日新聞の発行部数は、過去10年間毎年3%ずつ減り続け、今や800万部強にまで落ち込んだ。

竹内氏が7年前にJANJANを設立したとき、彼は、政府に対して無批判あるいは批判する力のない日本の旧来メディアをひっかき回そうと考えていた。

設立当初のJANJANは、捕鯨問題など旧来メディアがあまり取り扱わないトピックをぶち上げ、関心を引いたこともあった。しかし、世界的な景気後退や広告収入の低下のあおりを受け、会社を維持するために必要な収益を得ることができなかった。そして今、竹内氏はブログメディアを新たに立ち上げ、再スタートを切った。

竹内氏の最大の挑戦は記事の品質を確保することだった。読者から投稿される記事の殆どは「主要メディアが配信した記事を焼き直したものに自分の意見を追記する」形式を取っていた。

経験豊富なジャーナリストの多くは、自身が所属する大企業から先の見えない新興企業へ転身することに躊躇した。そのため、竹内氏は彼らを雇うのは困難を極めた。しかし、アメリカのように旧来メディア企業が凋落し、ジャーナリストのレイオフやメディア企業の倒産が増えてくることで、今後は少し状況が変わってくるのではないかと、メディアの専門家は予想する。

東大教授の望月氏は「JANJANは失敗した。しかし、JANJANは日本に種を蒔いた。今後も新たな挑戦が行われるだろう」と話す。

JANJAN、そして竹内氏とは以前に選挙報道関連のプロジェクトをご一緒させていただいたこともあり、JANJANの休刊はとても残念でした。しかしこの記事にあるように、規模は縮小したといえど、まだその挑戦は続いています。PJニュースも然りです。



私も現在の日本のジャーナリズムに対して大きな問題意識を持っていますが、残念ながらまだまだ自分の言葉でそれを説明できるほどの材料を持ち合わせていません。しかし今後も「日本のジャーナリズムのあるべき姿」について考えて行きたいと思います。

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[2010-10-31]

世界で市民ジャーナリズムを牽引しているメディア、CNNとAllVoiciesは押さえておきたいところ。


特にAllVoiciesは注目です。

2010年10月25日月曜日

「本好きに悪人なし」

紀伊國屋書店新宿南店の4階で「内田樹を形作った本たちフェア」と題され、内田樹氏厳選の100冊が紹介されていました。




私は最近内田樹氏のファン状態にあり、氏のブログ記事は欠かさず読むようになりました。『街場のメディア論』はあまりにも面白く、現在2周目。併せて『街場のアメリカ論』も読んでいます。これまた実に面白い。考え方がとてもしっくりきます。


と言う事で、「内田樹を形作った本たち」から2冊を購入しました。フェア中は(在庫があれば)内田氏のサイン入り紙カバーで包んでくれます。



新宿南店のフェアは残念ながら昨日(10月24日)で終了してしまったのですが、他の店舗ではまだ開催中のようです。もしご興味のある方は是非確認してみてください。


私の確認できた範囲で恐縮ですが、このフェアで紹介されていた本をNAVERまとめにまとめておきました。シリーズものの本については最初の巻だけを掲載しています。内田樹氏によるコメントがあったものについては、これも掲載しておきます。チェックしたのが新宿南店の最終日(10月24日)だったので、もしかしたら漏れがあるかもしれません…正確な情報をお持ちの方はコメントいただけると助かります。

会議中の振る舞いについて考える by mixbeatゲーム

先週土曜日に、mixbeatの先輩と同期が主催するワークショップ『mixbeatゲーム』に参加してきました。


みなさんはディスカッション、例えば会社の会議などで、自分の振る舞いが第三者からどのように見られているか意識されたことはありますか?ディスカッションにおける自分の振る舞いの傾向、そして他人の話の進め方や価値観の多様性を知ることは、今後自分がディスカッションでどのように振る舞えば良いのかを考える起点となります。そしてmixbeatゲームはこの「考える起点」を、アクティビティを通して様々な形式で提供してくれます。

mixbeatゲームはコンセンサスゲーム(「NASAゲーム」「砂漠ゲーム」とも呼ばれる)をベースにmixbeatで作り上げられてきたものです。コンセンサスゲームとの最大の違いは、ディスカッションそのものよりも、ディスカッション後の振り返り作業に重点を置いているところにあります。そのため、ディスカッションそのものを分析するためのアウトプットの点数が若干多く、コンセンサスゲームよりも事前準備は大変かもしれませんが、その大変さを補って余りある大きな、そしてより実践的な収穫を得ることができます。

コンセンサスゲームについては、以下のサイトが参考になると思います。


少々前置きが長くなってしまいましたが、ここからは当日の様子を少しご紹介します。

写真はワークショップ当日の流れ。振り返り作業に重点が置かれているのがわかります。当日はこれを2セット実施しました。



1回目のディスカッションのテーマは「全国30歳~39歳の男性、単身勤労世帯のおうちにあるものランキング」。



一通り説明が終わったら、いよいよアクティビティ開始。まずは個人テストで自分なりにランキングを予測します。



個人テストの結果をもとに、いざディスカッション。ディスカッションメンバーで話し合いをし、規定時間内(今回は30分)にメンバー間の同意を得ます。ちなみにワークショップの参加者は「ディスカッション参加者」と「記録係」に別れます。1回目、私は「ディスカッション参加者」となりました。そして私の振る舞いを記録してくれたのはなんと塾長。振り返りのときのコメントが楽しみです。



ディスカッションの結果、このようになりました。



ここからmixbeatゲームの肝となる振り返りタイム。塾長から鋭い意見。私には「自分の意見に全体を誘導する(自分の意見をねじこむ)傾向」があることを指摘されました。以前も指摘を受けたことがあったので今回はかなり気を付けていたのですが、まだまだ出来ていませんでしたね。



昼食をはさんでの2回目、私は塾長の記録係を担当しました。何とか鋭い意見を言おうと必至に塾長の言動を観察していたのですが、果たして、どうだったのでしょうか…



今回新たに気付いたのは、ディスカッションを上手く進めるには「ディスカッション参加者間における自分の影響力を客観視する必要がある」ことと「人によって言葉に対するイメージに違いがあることを考慮する必要がある」ことです。今後はこれらを意識しながらディスカッションに臨んでいきたい。

今回のワークショップは自分を客観視する絶好の機会となりました。私が最近会社の会議などで意識しているのは「自分の理論が間違っていることを前提に人の理論に耳を傾ける」です。しかし上述したように、第三者の視点を通すと全然出来ていないことがわかります。日常生活を送っているだけではなかなか気付けないことに気付ける。これこそワークショップのだいご味だと感じました。

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[2010-10-27]

『mixbeat活動報告ブログ』にmixbeatゲームの詳細な情報がアップされました。こちらも是非参照してみてください。

2010年10月22日金曜日

キュレーションを実践しているニュースサイト

以前もご紹介したRobinGood氏(@RobinGood)のブログメディアMasterNewMediaにおいて、キュレーションを実践しているサイトが紹介されています。


既に様々な形式の「キュレーション・サイト」が存在していることがわかります。この中で私が注目したいのはキュレーションを実践しているニュースサイトです。本記事で紹介されているニュースサイトは以下の通り(全て英語サイト)。


いずれも「リンク集」の色合いが濃い中、HuffingtonPost(ハフィントンポスト)が異彩を放っています。ハフィントンポストは今やニューヨークタイムズに次ぐアクセス数を誇る強力なニュースサイトとなっており、そのビジネスモデルはニューズウィークでも紹介されたことがあります。


GoogleニュースやDiggなどのニュース「アグリゲーション」サイトでは情報を「収集」「選別」「共有」しているだけですが、ハフィントンポストを筆頭としたニュース「キュレーション」サイトではここにさらに「関連付け・意味付け」を加えており、そしてこれがキュレーションの肝となっているのです。

ハフィントンポストはキュレーション以外にも様々な「記事が見られる工夫」を凝らしています。こうした取り組みは、日本でニュースサイトを運営されている方々にも大いに参考になるのではないでしょうか。NAVERまとめにハフィントンポストに関する日本語の記事をまとめてみましたので、是非ご活用ください。

2010年10月20日水曜日

オープンエデュケーションの可能性

「グローバルに職を求めて競争する準備のために教育がある」

米国ではオバマ大統領就任時のこの言葉が原動力となり、東西の教育機関や研究機関、そしてベンチャー企業が中心となって、今、もの凄い勢いで「オープンエデュケーション」に取り組まれています。そしてオープンエデュケーションに熱意を持って取り組んでいる人達の根底にあるのは「(世界中の)すべての人に、平等な教育の機会を与える」という信念…

このエピソードは『ウェブ進化論』の著者・梅田望夫氏と、現在MITでご活躍されている飯吉透氏の共著『ウェブで学ぶ』にあったものです。本書では、インターネット上に無料で公開されている動画やテキスト、画像などの教育教材や、学習を支援するオンラインサービスを利用して学習することを「オープンエデュケーション」としています。


現時点でも、英語とインターネットさえ使えれば、膨大な数の学習教材や、高品質な学習システムを、無償、あるいは低コストで利用可能なようです(本記事の最下部に、本書で紹介されていた各種オンラインサービスをまとめておきました)。

私は本書を読むまで、オープンエデュケーションについてほとんど何も知りませんでした。最近仕事で教育関係のプロジェクトに関わるようになり、初めは興味本位で読み始めたのですが、オープンエデュケーションが秘めるポテンシャルに理解が及ぶようになると、たちまち引き込まれてしまいました。

オープンエデュケーションを構成する基本的な要素は「オープン・コンテンツ」「オープン・テクノロジー」そして「オープン・ナレッジ」で、アメリカを中心に世界各国でそれぞれの分野について様々な取り組みがなされているようです。

  • オープン・コンテンツ
    無料で使える学習教材。マサチューセッツ工科大学の Open Course Ware や、アップル社の iTunes U などが有名。
  • オープン・テクノロジー
    無料で使える学習システム。
  • オープン・ナレッジ
    無料で使える学習ノウハウ。教師向け(教える側)のノウハウと、生徒向け(学習する側)のノウハウとがある。

これらとは別に、教育者同士や生徒同士、そして教育者と生徒を結び付けるオンライン上の学習コミュニティも存在し、ここで情報を交換しながら、世界中で多様な「学び」が実践されているようです。

ITジャーナリスト・佐々木俊尚氏は、自身のメルマガ110号(9月27日号)において、本書でも紹介されていたカーンアカデミーを引き合いに出し、オープンエデュケーションについて次のような見解を述べられています。

これはオープンエデュケーションの典型的なケースです。こうした形で、教育の内容のコンテンツがオープン化していき、世界中の人々がそれを共有していく。素晴らしい講義をウェブで共有するTEDのプログラムのように、日本語も含めた各国語の字幕を付けるプロジェクトがもしカーンアカデミーと結びつけば、英語圏でなくフランス語圏や中国語圏、日本語圏でもカーンアカデミーのコンテンツは普及していくかもしれません。

オープンエデュケーションという考え方は、まだスタートしたばかりで今後の方向性の全容は見えてきていません。そもそも教育というのは非常に巨大な生態系で、教育内容(コンテンツ)と、その教育を実際に教えるシステム(プラットフォーム)、さらにはそこに教師がどのように参加していくのか、そしてその教育はどのような場で行われていくのか、と多岐にわたっています。

カーンアカデミーのような試みは、とりあえずコンテンツの部分をオープン化しようという「オープンコンテンツ」の試みであり、今後はこれが教育のプラットフォームそのものをも既存の学校から解き放ってオープン化していこうという「オープンプラットフォーム」へと進んでいくのかもしれません。

オープンエデュケーションにはまだまだ多くの課題があるようなのですが、それでも「教育の形」は今後大変な勢いで変化(進化)していきそうな予感がします。

教育にお金を掛ける余裕が無い途上国が、オープンエデュケーションに掛ける期待はとても大きいようです。最近、20億の人たちがインターネットにアクセスできるようになったようですが、このように少しずつ世界中の人たちの手にインターネットが広がっていき、オープンエデュケーションへの参加障壁が低くなることで、世界の教育格差が縮まっていく事が期待されます。


ところで日本でも東京大学や京都大学、名古屋大学などを中心にオープンエデュケーションに取り組まれている例はあるようです。しかし世界から見るとまだまだ遅れている状況で、特に初等教育や中等教育での取り組みは残念ながらほとんど確認できませんでした。

今のところオープン・コンテンツやオープン・テクノロジを活用して独学を進めるには、やはり英語は必要不可欠ですね。本書を読みながら、「英語で学ぶ」ために「英語を学ぶ」必要性を痛切に感じました。

なお、『ウェブで学ぶ』については、以下のブログ記事(書評)が参考になると思います。


おまけ。NAVERまとめに本書で紹介されていた海外のオープンエデュケーションへの取り組み事例をまとめてみましたので、是非アクセスしてみてください。

2010年10月18日月曜日

教育とソーシャルメディア

はてながリリースした小中学生向けのSNS『はてなランド』が、サービス開始後わずか2週間で終了してしまいました。


はてなのHPには「ユーザーの皆様が安心して楽しんで頂けると同時に、保護者の皆様にも安心してお子様に勧めて頂けるサービスとして運営していくために、サービス内容を一から見直し、新たに別のサービスとして検討をしていく方針とさせて頂きました」とありますが、終了の詳細な理由については今もって明らかにされていないようです。

国内における学校教育、特に小中学生向けのソーシャルメディア利活用の事例はこれまであまり聞いたことはありませんでした(もしご存知の方がいらっしゃれば是非ご一報ください)。ソーシャルメディアに対するマイナスイメージが先行しているせいなのでしょうか。教える側のソーシャルメディアに対するリテラシが追いついていない、という理由も考えられます。

米国では学校教育の現場にソーシャルメディアが徐々に浸透してきているようです。米国のブログメディア Mashable に先月ポストされた記事「The Case For Social Media in Schools / 学校教育におけるソーシャルメディアへの取り組み」に、オレゴン州のある中学校の事例が紹介されていました。この中学校では、学校教育にソーシャルメディアを導入することによって、登校拒否の生徒数を3分の1まで減らすことに成功したようです。


学校教育にソーシャルメディアを組み込むことについては米国でも賛否両論で、その是非を巡って今も議論は続いているようです。反対意見も多いようですが、本記事ではそれでもなお、ソーシャルメディアを学校教育に組み込んだ方が良いのではないか、と提起しています。以下、本記事に掲載されている「学校教育にソーシャルメディアを組み込むべき理由」をご紹介します。

  1. ソーシャルメディアは社会の一部になってきている
    現在既に(米国の)4分の3の中高生は何らかのソーシャルメディアに参加しており、現在小学生の子供たちが社会に出る頃には、今以上にソーシャルメディアは社会に浸透しているだろう。そしてこの趨勢に対抗することはできない。であれば、学校教育でもソーシャルメディアと戦うのではなく、ソーシャルメディアを受け入れる方向で考えてみてはどうだろうか?
  2. より良く学べるようになる
    ブログを介して先生と生徒が意見を交換させている事例がある。ミネソタ州で小学校3・4年生を受け持っている Matt Hardy は、学校教育にブログを導入したことで、生徒から活発な意見が出てくるようになった、と話す。これまでは「先生-生徒」間に閉じていたやりとりを、他の生徒にもオープンにすることで、生徒は自分の意見を「先生に見てもらうこと」だけでなく「他の生徒にも見てもらうこと」も意識するようになったようだ。
  3. 安全かつ無料の子供向けソーシャルメディアが存在する
    多くの(米国の)学校ではフェイスブックやマイスペースへのアクセスが制限されている。しかしその一方で、kidblog.org のような無料で、かつ安心して利用可能な学校教育専用のソーシャルメディアも登場してきている。
  4. 子供たちの時間の使い方を改善する
    子供たちがインターネットに費やす時間は年々増加している。こうした状況を有効に活用、すなわちこの時間に学校側が用意したソーシャルメディアを利用してもらう、という戦略はどうだろうか?ソーシャルメディア上に先生が「子供たちに議論を促すための議題」を定期的に提示することで、フェイスブックやマイスペースに費やしていた時間を減らすことに成功した事例も報告されている。
  5. 協調性の向上を促進する
    人は社会に出ると他の人と協調しながら仕事を進めなければならない。しかしその一方で、これまでの学校教育では「人と協調する」ことを学ぶ機会はとても少なかった。このギャップを埋める目的で、ソーシャルメディアが活用できるのではないだろうか。

日本の状況はどのようになっているのでしょうか?残念ながら身のある関連情報は見つけられませんでした。小中学校におけるパソコンやインターネットの普及率(文部科学省の資料参照)を見ていると少し心配になってきます。議論だけでもなされていれば良いのですが。

2010年10月16日土曜日

#book 人を動かす文章

自分の考えを文章で人に伝えるのは本当に難しいですね。ブログを書き始めて半年が経過しますが、文章力が付いてきているとは全く思えず、日々自分の文章力の無さを痛感しています。文章力が低いがためにコミュニケーション不全を起こし、惨事を招いたこともありました。以前はそれほど意識することは無かったのですが、メール、ブログ、ツイッター、そしてSNSなど、文章によるコミュニケーションの機会が増えてきたこと、そして人に何かを伝えたいと切実に思うようになってきたことと関係があるのかもしれません。

先月のmixbeatワークショップのテーマは「伝える力~メールのコミュニーケーションで伝え上手になる~」だったのですが、これを主催した同期生から『人を動かす「文章術」』という本を紹介してもらいました。


本書は文学作品のような綺麗な文章の書き方ではなく、「うまく伝わり、実際に人を動かす、ビジネスで活かせる文章」の書き方に焦点があてられています。具体的には、企画書やビジネスメール、お礼状、ビジネスブログなどを対象とし、人を動かすことを目的とした文章を「仕事文」と定義したうえで、良い仕事文の条件、及び良い仕事文を書くための文章力の鍛え方が紹介されています。著者は編集者としての経験を積まれた後、現在は「読み・書き・伝える」を専門にしたコンサルティング会社『スカイライター』の代表取締役としてご活躍されているようです。

以下は、本書で紹介されている「文章が仕事文として機能するための6つの要素」です。

  • 書き手の主人公は誰か / who
  • 読み手は誰か / whom
  • 何を語っているのか / what
  • どんな方法(特徴)か / how
  • それはいつか / when
  • どんな文脈があるのか / context

これらの要素を上手く使えるようになると、良い仕事文が書けるようになるようです。

ところで本書では、文章力だけを鍛えても仕事文が書けるようにはならないとしています。書くことはコミュニケーションの一部であり、仕事文を書けるようになるには、それ以外の読む、聴く、話す力も同時に鍛える必要がある、と力説しています。コミュニケーション能力を総合的に向上させていかないと駄目なようですね。

ツイッターやフェイスブック、ミクシィなどのソーシャルメディアを利用するようになると、自分の考えを文章で伝える機会はどんどん増えてきます。ここでのミスコミュニケーションはストレスの原因にもなりますし、出来れば避けたいのではないでしょうか。また、自分の考えを上手く表現できれば、共感・賛同してくれる人と繋がり易くなるかもしれません。私は今後益々文章力が求められてくるのではないかと考えています。そんな先を見据えて、本書をご一読されてみてはいかがでしょうか。



少し前に本ブログでご紹介した池上彰氏の『伝える力』もお勧めです。

2010年10月15日金曜日

キュレーションの必要性

イタリアのコミュニケーションデザイナー Robin Good(@RobinGood)氏のブログ MasterNewMedia において、現在、キュレーションに関する記事が連載されています(※10月15日までに全7本のうち6本までアップされています)。本連載の第1回目で、キュレーション(リアルタイム・ニュース・キュレーション)が必要な理由について次のようにまとめられていました。


  1. 情報の量は日々凄まじい勢いで増え続けている
  2. ブログやメディアサイト、新たなソーシャルメディアなど、情報チャンネルも日々増え続けている
  3. 情報を発信する個人も増え続けている
  4. 貴重な情報が増える一方、スパムや広告など不要な情報も増え続けている
  5. ツイッターなどのソーシャルメディアで広まる情報には不確かなものや品質が低いものも多い
  6. ネット初心者にとって、マーケターやスパマーから発信される情報の真贋を見抜くのは難しい
  7. 情報の真贋を見抜くのは高度なスキルであり、さらにそのスキルで対応するとしても不要な情報があまりにも多すぎる
  8. コンテンツに付与されるタイトルやメタ情報の中には、間違ったものや誇張されたものも含まれている
  9. 人が情報収集に使える時間には限りがある
  10. 特殊なスキルを持たない限り、新しい情報源やニュースに辿りつくのは難しい
  11. 特定の情報源からのみ情報を取得していては視野が狭くなる
  12. ニュースを読み解くにはその背景にある情報も必要となってくる

Robin Good氏は、こうした状況下で事態を打開するには(自分にとって必要な情報だけを多大な時間・コストを掛ける事無く集めるには)、GoogleニュースやRSSリーダ、ツイッターやフェースブックなどのソーシャルメディアでは難しく、キュレーションが必要不可欠であると示唆しています。

ここでは、既存のサービス、特にソーシャルメディアでは事足りない理由として、以下の8点を挙げています。

  1. 自分が必要とする情報の発信者を見つけるのは楽な事ではない
  2. 自分が必要とする情報を発信する全ての情報源を日々フォローするには、多大な労力が必要となる
  3. 複数の情報源から情報を集める場合、重複する情報を排除する労力が必要となる
  4. 個人が発信する情報には、しばしば自分が必要としない個人的な情報が含まれている
  5. 個人が発信する情報には断片的なものが多く、例えば背景情報を知るためには別の情報源を調査する必要が出てくる
  6. オリジナルの情報源を見分けるのが難しい
  7. 常に信用できるわけではない
  8. 単に共有されるだけの情報から、付加価値が与えらる情報まで、キュレーションのレベルは人によって異なる

そしてキュレーションは、ユーザにとっては「多くの時間を節約できる」「自分が興味のある分野の重要な情報を見逃さないようになる」「情報の信頼性を一々気にする必要がなくなる」などの恩恵があり、キュレーターにとっては「他人には真似できないオリジナルの情報発信チャンネルを確立できる」「特定分野のオーソリティになることができる」「無駄なコンテンツ(記事)を作成する必要がなくなる」などの恩恵がある、としています。

ITジャーナリスト・佐々木俊尚氏が発行されているメルマガ「佐々木俊尚のネット未来地図レポート」の106号(8月30日号)では、キュレーションの必要性について次のように言及されています。

ネットの情報の質も量も爆発した結果、必然としてマスメディアの記事の重要性は相対的に低下してきました。読者・視聴者の側も情報があふれかえってしまって「おなかいっぱい」の状態になっているわけです。そうなると読者の側にとっては、一次情報を次から次へと与えられることよりは、それら多くの情報の中から良い情報を選別してくれる方がありがたい、というような気持ちになってくるのは当然の流れでしょう。つまり、読者にとっては情報を提供してくれるメディアよりも、情報を選別してくれるサービスの方が価値が高いという逆転現象が起きてくるということなのです。

だからこそキュレーションという概念に注目が集まるようになり、以前よりもアグリゲーションサイトの重要性が高まってきています。

アメリカでは既にキュレーションを実践しているメディアが出てきているようですが、日本ではまだまだのようで、ビジネスチャンスはありそうです。キュレーターを支援するためのサービスも登場したようですね。


キュレーションについては、過去のエントリもご参照ください。


MasterNewMediaに掲載されているキュレーションに関する残りの記事の内容についても、今後ご紹介できればと考えています。

2010年10月14日木曜日

ジャーナリストによるソーシャルメディアの利活用(米国の事例)

ジャーナリストはソーシャルメディアをどのように利用できるのか。

少し古い(2010年4月)Mashableの記事「How Journalists are Using Social Media for Real Results / ジャーナリストによるソーシャルメディアの利用法」に、米国のジャーナリストによるソーシャルメディア利活用事例が用途別に紹介されています。


以下、各用途の概要を簡単にご紹介します。意訳している部分、省いている部分が多々ありますので、正確な情報を知りたい方は原文を参照してください。

[用途1] 情報/トレンドのフィルタ


ネット上には今こうしている間にも様々なトピックに関する大量の情報が同時多発的に次々とアップされており、ジャーナリストがネットからニュースとなりそうな情報やトレンドを切り出すのはとても困難な作業だ。ここでツイッターやフェースブックなどのソーシャルメディアの出番となる。ソーシャルメディアを情報フィルタとして巧く活用した事例を紹介しよう。

Pairate Cat Radio のDJ、Aaron Lazenby はある夜ツイッター上で #iranelection というハッシュタグ(ツイッター上のトレンド)を見つけた。興味を覚えた Lazenby はツイッター上で取材を開始、この動きをCNNがキャッチし、世界中にイランの選挙に関するニュースが広がることとなった。

USA TODAY の Brian Dresher はツイッターをニュースの情報源として捉え、これまで数々の実績を重ねてきた。そして今ではツイッターから情報をキャッチするためのスキルを社内のジャーナリストに教育している。彼は、ジャーナリストはツイッターからリアルタイムにトレンドを掴み、さらに情報を発信している人に対する取材を通して、そのトレンドを深堀りしていくことができる、としている。

[用途2] 情報源へのコンタクト


いつの時代も適切な情報源(一次情報の発信者)に辿りつくのは非常に難しいが、フェースブックはこの作業を少し楽にしてくれる。フェースブックには四億人以上の個人情報が登録されており、名前や職業などをキーに検索でき、さらに写真などをもとに特定の個人情報の確認も可能だからだ。

シカゴの新聞 RedEye の記者 Tracy Swartz は輸送システムに関する記事を執筆する際、フェースブックでバスの運転手を探し出し、直接取材することに成功した。The Associated Press の Lauren McCullough もフェースブックを情報源へのコンタクトツールとして利用している。彼女はフェースブックからニュースとなりそうな情報を入手し、さらにその情報源となっている人物にコンタクトを取っている。

[用途3] クラウドソーシング


ソーシャルメディアは、単一の事象に関する不特定多数の人から情報を集める「クラウドソーシング」のツールとしても利用できる。


USエアウェイズがハドソン川に不時着したとき、先の McCullough は直ちにツイッター、フェースブック、フリッカー、そしてユーチューブにアクセスし、今ではすっかり有名になった Janis Krum が撮影した写真を探し出した。

クラウドソーシングが常に最新のニュースの出所となるわけではないが、ニュースを補足するための情報源としても利用できる。Huffington Post の記者 Susanna Speier は自分の記事をアップした後、フェースブックやツイッターで記事に対する反応を確認している。また、記事の書き手と読み手を繋ぐサービス「HARO」も利用している。

※「HARO」というサービス、非常に面白そうです。時間があれば少し調べてみたいですね。

[用途4] 声なき声の発信


クラウドソーシングはジャーナリストが世の中に浸透していないトピックを扱っている状況において強力な武器となる。

UC-Berkeley のブロガー James Karl Buck が取材中にエジプト当局に拘束されたとき、その窮状をツイッターでツイートし、そこから解放に至った事件は記憶に新しい。彼は、エジプトの新聞やジャーナリストが抑圧されている状況、そして抑圧されている中でツイッターを使ってその「生の声」を発信している状況について語った。「人々は権力に抑圧されている中でも、ツイッターを使って声を挙げている。そしてジャーナリストはその声を直接聞くことができる。」

同様に、ユーチューブはイラン選挙の抗議中に素晴らしい情報源となった。動画共有サイトのマネージャ Olivia Ma は現地で起きている状況を衝撃的な映像で知ることとなる。彼女は、外国人ジャーナリストの入国が禁止されていた状況において、現地から共有される映像は強力な情報源になる、と語っている。

[用途5] ニュースの共有/審査


ソーシャルメディアは記事共有のツールとしても有用だ。ジャーナリストはフェースブックやツイッターを利用して自分が書いた記事に対する反響を直接集めることができる。

New York Times の記者 Brian Stelter は記事作成のフローにツイッターとブログを組み込んでいる。彼は自分の記事を草案の段階でブログにアップ、その反響をツイッターで確認したうえで、記事をブラッシュアップ(記事に読者の意見を組み込むなど)し、最終出稿している。

Mashable ではフェースブックやツイッター、Googleバズなどを使って記事を多くの人に共有している。そして個々の記者は、自身が運営しているブログにも同じ記事をポストし、より多くの人に記事を読んでもらい、反響を受けるようにしている。

[用途6] コミュニティ/ブランドの形成


ジャーナリストのブランディングとは、ジャーナリスト自身がコミュニティを形成し、そのコミュニティにおいて専門分野を確立することだ。そしてソーシャルメディアはこの用途にとても有用だ。

先のシカゴの新聞 RedEye はフェースブックと GoogleWave を活用して、読者の獲得とコミュニティの形成に成功している。RedEye はオンライン・オフラインでの読者とのコミュニケーションを大切にし、紙面にはオンラインコミュニティに投稿された読者の意見も掲載される。

最近では日本のメディア企業や個人で活躍されているジャーナリストの方々の中でもソーシャルメディアは徐々に使われるようになってはきましたが、用途によってはまだまだ活用されているとは言い難い状況だと捉えています。ただ一方で、日本は米国のようにソーシャルメディアが浸透しているわけではないため、ソーシャルメディアを上記全ての用途で直ちに利用できるような環境にも無いと考えます。

一先ずは今現在海の向こうで起きていることを認識しておくぐらいにとどめ、今後効用などを見極めながら、少しずつソーシャルメディアの利活用に取り組んでいければ良いのではないでしょうか。

2010年10月13日水曜日

Googleニュースのクリエイターが予測する「ジャーナリズムの5年後」

米国ブログメディア TheNextWeb に、Googleニュースの生みの親であるBharat氏のインタビュー記事が、少し前(2010年6月)に掲載されていました。


私はGoogleニュースをそれほど使いませんが、最近も着々と機能を充実させているようです。以下、Googleニュースの解説ページからの抜粋です。

Google ニュースはコンピュータが生成するニュース サイトです。610 以上のニュース ソースから記事見出しを収集し、類似した内容の記事をグループにまとめて、読者一人一人の関心に合うような記事を表示しています。

これまでニュースを読む時には、メディア サイトを決めてから記事を読んでいませんでしたか? Google ニュースの特長は、読者ごとにカスタマイズできる表示オプションと、1 つの話題についてさまざまな観点から書かれた記事の選択肢を提供していることです。 Google ニュースでは 1 つのニュースについて複数の記事をリンクしているので、気になる話題について、様々なニュース ソースから提供される記事を読むことができます。 記事の見出しをクリックすると、そのニュースの提供元サイトにアクセスして全文を読むことができます。

Google ニュースの記事は、記事の表示頻度、掲載サイト、およびその他数多くの要素をコンピュータが評価することでランク付けされています。 その結果、政治的観点やイデオロギーに関係なく記事が分類されるので、同じニュースについてさまざまな観点から情報を得ることができます。 Google では、ニュース ソースの追加、技術的な改善、提供地域の拡大など、Google ニュースの改善に努めています。

少々前置きが長くなってしまいましたが、Bharat氏はこのインタビュー記事の中で「ジャーナリズムの5年後」について言及されています(個人的には「ジャーナリストの5年後」というよりかは「ニュースを取り巻く環境の5年後」の方がしっくりきます)。その「ジャーナリズムの5年後」の特徴は以下の通り。

  1. 特化
    個々のニュースメディアは今後益々特定の分野や地域に特化していく。
  2. ソーシャルネットワーク
    ジャーナリストは今以上にソーシャルネットワークを利用するようになる。
  3. 課金システム
    より効果的な課金システムこそが肝となる。今後課金システムの利便性は向上し、読者はより簡単に目的の記事を見つけ、そしてより簡単にお金を払えるようになる。
  4. 広告
    聴視者の嗜好に合わせてより効果的に記事と広告を連動させることができるようになる。
  5. パッケージング
    聴視者の嗜好に合った推奨記事をパッケージ化(パッケージング)して提示できるようになる。

なるほど、どれも頷けますね。米国では「1.特化」の兆候は既に表れていますね。今後は何かに特化できないニュースメディアはもはや生き残れない、ということなのでしょう。現在のテクノロジーの進化スピードからすると「2.ソーシャルネットワーク」「3.課金システム」「4.広告」「5.パッケージング」などは、5年を待たずにダイナミックな変化が起きそうな予感があります。

さて、インタビュアーはここにさらに二つのトピックを追加しています。

  1. ニュースリーダの台頭
    ニュースサイトを直接見るのではなく、ニュースリーダ経由でニュースを読む人が増える。
  2. アプリケーションの普及
    ニュースメディアは、自社のニュースサイト上だけでなく、iPhoneやiPad、Androidなどのアプリケーション経由でも自社のニュースを読んでもらえるようになる(課金システム付きで)。

メディア企業のエンジニアとしては、今後起こるであろうこうした変化を見据えて新しいサービスシステムや編集システムの仕組を考えていきたいところ。

肝心なのはニュースの中身なんですけどね。

2010年10月8日金曜日

8月15日を撮るプロジェクトを終えて

少し遅くなってしまいましたが、8月15日を撮るプロジェクトの結果をご報告。

準備期間が非常に短かったにも関わらず、多くの方にご協力いただいたおかげで、何とか無事にプロジェクトを終えることができました。「8月15日を多角的視点から覗いたら何が見えるか」という問いかけから誕生した本プロジェクトでは、「2010年8月15日に撮った写真であること。」というテーマに沿った写真を、メール及びツイッター経由で100名以上の方から200枚以上の写真を集めることに成功しました。我々が本プロジェクトで集めた写真は、現在も以下のページから閲覧することができます。写真をお送りいただいた皆様、本当にありがとうございました!


今回は、日本人にとって特別な日に、主催者側が特に「戦争」を意識させるアクションを取るこることなく、老若男女、プロ・アマを問わず幅広く写真を集めたわけですが、全ての写真を改めて見ていると本当に面白い。撮影者のひとたちは、何を思いながら写真を撮影したのだろう?8月15日に撮影されたこれらの写真を見る人達は、何を思うのだろう?そんなことをふと考えてしまいます。

何かイベントを開催するとき、主催者はイベントに対して意味や意義を明確に与えます。そしてその意味や意義に共鳴した人がイベントに参加します。しかし本プロジェクトには明確な意味や意義ががありませんた。我々が提示した一遍の詩のような文章を読まれ、そこから意味や意義を見出した人が参加する、というスタイルをとったのです。そしてここに本プロジェクトの面白さがあるような気がしています。

個人的にお気に入りの写真。



2010年10月5日火曜日

質問の意図を正確に把握する

毎月恒例のmixbeatワークショップ、今月のテーマは「(見知った人同士のコミュニケーションにおける)質問、問題、課題の意図を分解して理解する」でした。



午前の部では座学で理論を学び、午後の部で理論を実践する、という比較的オーソドックスな構成。



ワークショップの企画・運営は同期のふさおさんとなっこ。



本ワークショップでは、質問の内容(what)ではなく、質問の意図(why)にフォーカスは絞られます。「人は余裕が無いときに複雑な質問を受けると、質問者の意図をくみ取れず、質問者が意図しない回答をついしてしまうことがある」という問題意識に対して、「一旦落ち着いたうえで、質問の意図を『早さ』『関係』『期待』『内容』の4要素に分解してそれぞれ深く考え、その中でミスコミュニケーションしそうな要素があれば聞き返そう」という解決策が提示されました。

< 質問の意図を把握するための要素 >
  • 早さ:質問者はどの程度の緊急性をもっているか?(緊急性)
  • 関係:質問者と回答者の関係はどのようなものか?(関係性)
  • 期待:質問者は回答者に対してどの程度回答を期待しているか?(期待度)
  • 内容:質問の内容はどのようなものか?

「質問の意図を把握するための要素」は上記4つ以外にもいくつかあるようですが、特に重要ななのがこれらのようです。



午前の部の座学では問題意識と解決策を共有。参加者から様々な質問が飛び交い、予定時間を1時間ほどオーバーして座学終了。私もいくつか質問をしましたが、「質問の意図を把握するための要素」に何故「内容」が含まれているのか、4要素はどのようにして導出されたのか、4要素には妥当性があるのか、聞き返す以外にも何かできるのではないか、などの考えがぐるぐる回り、残念ながら解決策の理論に得心がいきませんでした。少し消化不良のまま昼食タイムへ。



午後の部は午前の座学の内容(理論)を踏まえてのアクティビティ(実践)。「二人一組になって、回答者が質問者に質問して質問者の質問の意図を当てる」というゲームに挑戦しました。



ゲームの詳細に興味があればmixbeatの活動報告ブログを参照してみてください。


座学の内容はあまり活かせませんでしたが、アクティビティ自体は結構面白かった。アクティビティはワークショップのだいご味ですね。



問題意識(人は余裕が無いときに複雑な質問を受けると、質問者の意図をくみ取れず、質問者が意図しない回答をついしてしまうことがある)についてはうなずけるものはありましたが、やはり最後まで提示された解決策に納得することはできませんでした。午前中の座学でもう少し論理的な説明があればまた違ったかもしれませんが、取り扱われたテーマ自体、ワークショップで扱うには少々大きすぎるのではないかと思いました。


最後に少し余談。今回のワークショップの会場となった「武蔵小山創業支援センター」は起業家の支援がメイン事業となっていますが、ここの貸し会議室も結構お勧めです。今年8月にオープンしたばかりで清潔感もあり、備品類も充実しています。




近くにあるケーキ屋さんも合わせてご活用ください。同期のムタが推薦。私もワークショップの帰りに3つほど購入。本当に美味かったです。


※ mixbeatでは第4期生を募集します。ご興味のある方は是非こちらでメールアドレスの登録を!


ワークショップの企画・運営、ワークショップへの参加、塾生間のコミュニケーションを通して、多くのことを学べる絶好の機会となるはずです!

2010年9月15日水曜日

「自分の考えを伝えること」の難しさについて

私は今年6月に、ブログ「smashmedia」や「マーケティングis.jp」の運営者である河野さん(@smashmedia)が主催されている私塾mixbeatに第3期生として入塾、これまでに3回のワークショップに参加しました(3回のうち1回は私が主催、そして見事に失敗)。


さて、第3回のワークショップのテーマは「伝える力~メールのコミュニーケーションで伝え上手になる~」だったのですが、日頃から(最近は特に)「伝えること」の難しさを感じていたので、本ワークショップは「伝えること」について改めて考える非常に良い機会となりました。本ワークショップの内容や様子については以下のブログ記事をご参照ください。


本ワークショップでは「メールに費やす時間、長くないですか?」「メールの内容、誤解されていませんか?」といった普段のビジネスメールのやりとりにおけるちょっとした問題にスポットを当てていたのですが、私はこれを機に改めて「伝えることが難しいな」と感じているシーンについて考えてみました。

私は「情報システム部門のエンジニア」という職業柄、社内の情報システムに対する要望をまとめたり、それをシステム構築会社に説明したりと、普段から多様なビジネスパーソンとビジネスメールのやりとりをしていますが、ここではさほど問題を感じたことはありません(なので、それほど不器用なわけではないと思います)。

しかし、それ以外の何かを伝えるシーンでは、結構苦労します。例えば家族や友達に自分の仕事の内容を説明したり、自分が読んだ本の内容を説明したりするときなどです。不特定多数の読者を対象としたブログ記事を書くのにも苦労します。つまり、私が「伝えるのが難しいな」と感じるのは、「自分とは文化の異なる人に自分の考えを伝える」ときではないかな、と考えました(ここで言う「文化」には「職種」「専門」「興味」などが当てはまります)。仕事で出会う人の文化は自分の文化と似ている傾向がありますからね。

ということで、自分の問題は「文化が違うと伝わりにくくなるのは当然で、これを乗り越えるだけの"伝える技量"が足りない」だと定義してみました。

具体的には例えば「抽象化」。私達は複雑なもの・ことを説明する際、聞き手の理解を促進するために「抽象化」の技術を使いますが、抽象化されたものが相手の文化にそぐわず、逆に相手が???となってしまうことがままあると思います。このケース、私はよくあります。抽象化のスキルを上げたいなぁとはいつも思います。

専門用語の乱用も同じですね。相手のことをあまり知らないうちは、横文字や短縮英語の利用は控えるようにするようにしたいところです。ただ、専門用語って説明するの難しいですよね?私は抽象的にものごとを捉えてしまう傾向があるため、「だいたいこんな感じの意味だろう」ぐらいの理解でついつい使っていました。相手が同程度以上の理解を持ち合わせていればそれで通じるのですが、文化が異なる相手だとそうはいきません。ふたりそろって???になってしまいます。と、いうことで、「専門用語(などの難しい言葉)をわかりやすく説明できるようになりたい」ともいつも思います。

みなさんはどうでしょうか?何か良いアドバイスがあれば是非お願いします。

最近テレビなどでご活躍されている池上彰氏の説明力は本当に素晴らしいなと思います。ということで、氏の著書「伝える力」もお勧めです。


※ mixbeatでは第4期生を募集します!ご興味のある方は是非こちらでメールアドレスの登録を!