2010年3月31日水曜日

マスメディア企業、浮上の鍵を握る情報システム部門

マスメディア企業の状況は一向に上向く気配が無く、最近では悲壮感すら漂いつつあります。今期はついに赤字に転落する企業も出てきました。マスメディア企業は多くの優秀な人材を抱えています。また、現時点ではまだ資産も潤沢にあります。それにも係わらず、何故いつまで経ってもマスメディア企業は海の底に沈んだままなのでしょうか?何故どこからも良い話が聞こえてこないのでしょうか?

「どうすればマスメディア企業は浮上するか?」この命題についてはあらゆるメディアで多様な議論がなされていますが、私は最大の問題は「現状が把握できていない(すなわちAsIsが把握できていない)」こと、そして「これからどうすれば良いか分からない(すなわちToBeが組み立てられない)」こと、この2つに尽きると考えています。
  • AsIsが把握できていない
    すなわち、自社の編集業務、サービス、そしてシステムの現状が把握できていない
  • ToBeが組み立てられない
    AsIsが把握できず、そして今後テクノロジーはどのように進化していくのか、テクノロジーの進化によって人々の情報摂取の方法はどのように変化していくのかがわからないため、ToBeが組み立てられない
    私は、AsIsを把握しToBeを組み立てるために必要な素養は次の4点であると考えます。
    • 自社編集業務に対する理解
    • 自社サービス(デジタルメディア含む)に対する理解
    • 自社システムに対する理解
    • テクノロジーとソーシャルメディアに対する理解
    多くのマスメディア企業の経営層は編集部門出身の方で占められています。そして残念ながら、どれほど優秀な編集者でも、これら4つの素養を同時に満たすのは非常に困難なのです(私の結論は「不可能」です)。編集業務、そしてサービスまではもしかしたら何とか理解できるかもしれません。しかし、自社システム及びテクノロジーとソーシャルメディアを理解することはどう考えても厳しい。特にテクノロジーは、普段から慣れ親しんでいない限り(そしてそのような編集者は皆無であるため)難しいと思います。従って当然AsIsの把握もToBeの組み立てもできません。

    ではどうすれば良いのか?私はこれら全ての素養を満たす、あるいは満たすことができるのは、情報システム部門の担当者を置いて他に無いと考えます。最も良いのは情報システム部門出身者が経営層に入る事ですが、日本のマスメディア企業の風土ではこれは難しいでしょう。しかし、このまま手をこまねいていたら、座して死を待つのみ、となってしまいます。

    マスメディア企業の情報システム部門の方、一緒に頑張りませんか?

    2010年3月28日日曜日

    フリービジネスアプリ三種の神器

    (updated on 2010-03-29)

    あなたにとってフリーのビジネスアプリ三種の神器は?と問われれば(誰が問うんだ?)、私は次の3つを挙げます(Tweetしたのですが、一応解説まで)。
    これもTweetしたのですが、「FreeMindで問題(AsIs)を分解、整理、分析し、JUDEでToBeを組み立てる、そして雑用はMeadowで効率的に」が私の仕事の一スタイルとして定着しており、もう手放すことはできません。以下、それぞれのアプリについて簡単に紹介します。

    # FreeMind

    マインドマップエディタです。複雑な物事を整理するのにとても便利で、頭を悩ませているときには大抵使っています。とにかく問題を出し尽くしてあらためて整理する(問題整理)、といった作業に最適で、システム構築プロジェクトを開始する前には、必ず問題整理作業をマインドマップを使ってやっています。プライベートでも悩んだときにたまに使います。また、会議中にプロジェクタでパソコンの画面を写し、そこでマインドマップを作成していけば、会議が発散するのを防ぐことができますし、文書形式の議事録よりもはるかにまとまった記録を残すことができます。なお、FreeMindで作成したマインドマップはHTML形式のファイルに変換できるため、配布資料の原本をFreeMindで作成、実際の配布資料はHTMLで、といった使い方もできます。

    最近ではFreeMind以外にも複数のマインドマップを作成するアプリが出てきていますが、今のところFreeMindが操作性や軽さに優れ、一番バランスが良いように思います。

    # JUDE

    UML図のエディタです。私が良く使うのはユースケース図、クラス図、ロバストネス図、そしてアクティビティ図で、頭の中を「見える化」する際に重宝しています。これらのUML図は、システム開発現場以外でも使え、最近では少し複雑な事象はとりあえずモデリングして把握することもしばしばです。

    JUDEに出会う前は全てPowerPointで作成していたのですが、JUDEを利用するようになってからは格段に作業効率が上がりました。着色やステレオタイプを上手く活用することで、かなり綺麗、かつ精緻な仕上がりとなるため、自分が考えている事を正確に人に伝えるにはこれが欠かせません。以前オフショア開発で中国に行ったときも、これで乗り切りました。有料版ではマインドマップを作成する機能もあるのですが、私は無料版(JUDE Community)を使っています。

    # Meadow

    高機能テキストエディタです(テキストエディタの域を超えています)。学生の頃にMuleに出会い、8年前にMeadowに切り替えて…とEmacs系エディタはかれこれ15年使ってますね…。設定ファイルにLISPで設定を追加していくことで、用途は無限に(ちょっと言い過ぎか…)広がるため、設定のし甲斐があります。少しずつ自分のビジネススタイルに適合させていきましょう。

    私はMeadowをテキストエディタとして利用している他、Javaの開発環境、簡易ブラウザ、HTML/CSSエディタ、FTPクライアント、ディレクトリビューア、などとしても利用しています。テキストエディタの機能は秀逸の一言。もう古い、流石に別のに切り替えよう、と思っても、これを超えるテキストエディタはなかなか出てこないのですよ。

    ※本記事は、気が向いたら追記します。

    2010年3月26日金曜日

    重くのしかかる倫理の問題

    前々回の記事「マスコミ企業がソーシャルメディアを使う目的 (前篇)」で、マスコミ企業が抱える問題は「ビジネスの問題」「経営の問題」そして「倫理の問題」の3つに分類できる、と書きました。ここでは「ビジネスの問題」に焦点を当てていますが、実は最もやっかいな問題が「経営の問題」だと考えています。「経営の問題」の解決は困難極まりなく、また、あまりにも影響が大きいため、「ビジネスの問題」を解決したところでどれほどの効果があるかわかりません(「ビジネスの問題」を解決するためのボトルネックになる可能性もあります)。

    今週奇しくも @kazu_fujisawa さんがご自身のブログで次のようなことを書かれていました。
    日本にはマスメディアの危機なんてない。あるのは社員の高すぎる給料だけだ。 / 金融日記

    日本のマスメディアに危機なんて存在しないのだ。
    そこにあるのはただ単に高すぎる社員の給料だけなのである。
    「高すぎる社員の給料を低くする」ことは「経営の問題」を解決するための施策で、正に正論だと思います。しかし、GMやJALの例からも分かる通り、これは非常に難しい。

    一方でこの事は、指摘されずとも中の人は誰でも薄々は感じていることで、この業界に居続ければ最終的に給料が半額になる、ぐらいのことは皆覚悟しているのではないでしょうか(少なくとも私は覚悟してます)。しかし、何もやらずに「はいそうですね」と受け入れるのは実につまらない。どうせ駄目なら、その前にやれるだけのことをやった方が余程面白い。という事で、私は悪あがき。

    さて、ここで本当は多くの方々に「マスコミ企業の再生」について建設的な意見や議論をお願いしたいところなのですが、それが出来ないのが歯がゆいことろです。原因は「倫理の問題」にあります。マスコミ企業がこれだけ攻撃の標的になる背景には、「倫理の問題」の影響が過分にあることは想像に難くありません。まずはここに手を入れなければ、建設的な意見を募る資格も無いのでしょう。