以前もこのブログで
取り上げたことのある、米国ニュース専門テレビ局
CNNのニュースサイトが、今や飛ぶ鳥を落とす勢いとなっているようです。
インターネットアクセスの調査会社Ccomscoreの調査によると、2011年1月~3月におけるCNNの全米からの一日平均利用者数は850万人を誇り、テレビ視聴率ではCNNの上を行くFox News Channelの230万人を遥かに超えています。さらにこの数字は、新聞業界最大手のニューヨークタイムズの560万人、そして米国4大ネットワーク(ABC/NBC/CBS/FOX)最大規模、NBCの740万人をも凌駕しています。
そしてここで疑問が湧きます。視聴率ではそこまで数字を取れていない(米国4大ネットワークの下位に甘んじている)にも関わらず、CNNは何故インターネット上のプレゼンスをここまで高められたのか。
ハーバード大学のNieman財団が運営するブログ『The Nieman Journalism Lab』にCNNニュースサイトの分析記事がポストされていました。非常に興味深い内容でしたので、以下、ポイントをまとめておきます。
CNNニュースサイトには、他のニュースサイトには見られない、次のような特徴があるようです。
- 読者の多くが直接アクセスしている
- リピーターが多い
- 読者からの反響が大きい
CNNニュースサイトの読者のうち、実に75%が直接アクセスによるもので、検索サイトやソーシャルプラットフォームなど、他サイトからの流入(間接アクセス)は25%に留まっているようです。また、他のニュースサイトに比べ、リピーターの数が多く、そのロイヤリティも高い(ひと月あたりの訪問回数が10以上、という読者層が最も厚いようです)、との記載もありました。
つまり読者の多くは、
サイトで提供されている記事の閲覧だけを目的として訪れているわけではなく(サイトを単に「記事置き場」として見ているのではなく)、サイトで提供されているサービスを目的に訪れていることがわかります。
さて、こうしたCNNニュースサイトの特徴を支えているのが、「ピラティス戦略」と呼ばれる、読者の知的好奇心を刺激するための戦略のようです。この戦略の骨子は次のようなものです。
- 単にニュースを提供するだけでは足りない
- 知識の探求や、新たな行動、革新、実験に繋げなければならない
そして「ピラティス戦略」のもと、具体的には次のような施策を展開しているようです。なお、詳細については原文をご確認ください。
- ブロガー・ブログメディアの充実
- 市民ジャーナリストとの連携サービス(iReport)の展開
- 動画コンテンツの拡充
- モバイルアクセス機能の高度化
- 通信社ニュースからの脱却
一つ一つを見ると実践しているニュースサイトはあるように思いますが、「読者の知的好奇心を刺激する」という目的のもと、これらをワンパッケージで展開しているようなところは他に無いのではないでしょうか。ちなみに私が衝撃を受けたのは「通信社ニュースからの脱却」。
同じようなニュースがあっても仕方が無い、という理由から通信社のニュースは使っていないようです。
本記事では言及されていませんでしたが、他のニュースサイトがツイッターやフェイスブックなどソーシャルプラットフォームからの流入を呼び込もうと躍起になっているのをしり目に、CNNは以前からこつこつとIT投資を続けており、その成果が無ければこうした施策はそもそも展開できなかったと考えられます。確かな「戦略」と、それを支える「技術」、この二つが合わさって初めて、今のCNNニュースサイトがあるのだと思います。
本記事の最後には、次のような言及がありました。
近年、TVよりもiPhoneやiPadで情報を集める人が増えてきている。若い世代では特にその傾向が強い。このままTVの影響力が低下すれば、いずれFox News ChannelがTVで放送するニュースよりも、CNNがネットで配信するニュースの方が、影響力を持つようになるだろう。
テレビの視聴率がさほど意味をなさなくなる日も近いのかもしれません。