2010年11月30日火曜日

ソーシャルメディアの定義をめぐる議論

仕事が立て込んでいるので、後でまとめてじっくり読むためのメモ。

ITジャーナリストの湯川さんが運営されているブログメディア『TechWave』に先週(11月22日)掲載された記事『蔓延する誤った「ソーシャルメディア」の定義【水谷翔】』を発端に、ツイッターやブログで多様な議論が展開されました。


この記事に対する佐々木俊尚氏の反応。

22 Nov @sasakitoshinao


この記事は100%間違っている。そもそもバーチャルの人間関係とリアルの人間関係が融解しつつあるのであって、リアルに固執するのは変。 /蔓延する誤った「ソーシャルメディア」の定義【水谷翔】 http://t.co/kujhF7g

22 Nov @sasakitoshinao


メインストリームを目指してるらしいメディアに掲載されたからです。RT @nob_suzuk: 突っ込みどころ満載だったが、大学生の意見ということでスルーしましたが佐々木俊尚さんは許せなかった模様ですね QT @sasakitoshinao この記事は100%間違っている。

佐々木俊尚氏の上記ツイートに対するツイッター上での反応のまとめ。


佐々木俊尚氏の上記ツイートに対する湯川さんの反応。(12/01追記)


このまとめを受けた津田大介氏の反応。

26 Nov @tsuda


これ明らかに掲載したTechWaveの問題だな。「寄稿」と称して釣りブログ集めてPV稼ぐガジェット通信と同じ手法。 RT @kanose: 「蔓延する「ソーシャルメディア」の定義 大学生が書いたTechWaveの記事への反応まとめ」 http://htn.to/dTbfMH

私が普段購読しているブログでもいくつか反応がありました。とても興味深い。


こうした議論を受けて、湯川さんも反応。


私の周りでも議論がありました。以下は後輩の見解。

今回の問題は、水谷さんの内容うんぬんよりも、掲載されたところが悪かったような気がします。TechWaveバッシング第二章じゃないかと。

水谷さんの主張は、妥当です。CGMとSNSは、「ちゃうよね」という主張は真っ当というか、当たり前すぎるくらいの主張ですし、「ソーシャルなんとか」を売り文句に変な営業活動してる怪しい会社が「日本に多数あるのは、どうかと!」との意見も、「ですよね~」と、うなずける。

要は、「ソーシャル」って言葉が一人歩きして「ガラパゴス野郎は、意味を取り違えんな」ということですね。まあ、それだけなんですけど、流行りですから。昔でいう電気ブランの「電気」とか、舶来カッケーみたいなワードになってますね。そのうち、ソーシャル・ブームに乗って、「ソーシャル主義」とか火がつくかも知れません。

それで、TechWaveなんですが、釣り記事をいっぱい書いたメディアは、もう、メディアとしてはダメなんだと思います(今のTechWaveは、明らかにそーゆう扱い)。今回のケースでは、水谷さんの意見が、「ダメディアの風に載って炎上した」というのが、本当のところなんじゃないでしょうか。TechWaveじゃなかったら、別にここまで、「ナニクソコノヤロウ」みたいな状況には、陥らなかった気がします。「いい情報は出るとこを選ぶ」と、日経さんが常日頃からテレビで口酸っぱく言っていますように…出るところを選ばないと!

単一の情報だけで物事を判断せず、様々な意見に触れたいところ。今回の事象はソーシャルメディアに対する自分なりの考えを確立・熟成させる機会としては申し分ないですね。

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[2010-12-01]

湯川さんの反応記事を1本追記しました。

2010年11月17日水曜日

ソーシャルニュースの未来

「ソーシャルニュース」というサービスをご存知でしょうか?

ソーシャルメディアの一種で、一言で言えば「みんなで(ソーシャルに)作るニュースサイト」。運営者側がニュースを作成する通常のニュースサイトとは異なり、ニュースサイトやブログに掲載されたニュースへのリンクを、読者による人気順に再編成し、読者からのコメントや評価(レーティング)などとともに提供するサービスです。どちらかと言えば、『はてなブックマーク』や『livedoorクリップ』のような「ソーシャルブックマーク」に近いサービスです。ウィキペディアにはそれぞれ次のように定義されています。

ソーシャルニュース - ウィキペディア


専門記者ではなく一般のユーザー(市民記者)が作成するニュースサイトや、専門の編集者をおかずにユーザーによって投稿された記事をニュースとしてのせていく仕組みをとっているニュースサイトのことをいう。

ソーシャルブックマーク - ウィキペディア


インターネット上のサービスの一つで、オンラインブックマークサービスの発展形。自分のブックマークをネット上に公開し、不特定多数の人間と共有する事で、これらを有益な情報源とすることができる。

ソーシャルニュースは一度ニュースサイトに掲載されたニュースを、再度流通させる役割を担っているため、ニュースサイトにとっては非常にありがたい存在とも言えます。

国内ソーシャルニュース・サービスの代表的なものとしては、以下のようなサイトが存在しています。海外のサービスでは『digg(ディグ)』が有名ですね。


と、前置きが長くなりましたが、先週、リンクシェアの美谷さん(@hiroumi)主催によるソーシャルニュースの勉強会に参加してきました。




リンクシェアの美谷さん、ミクシィの徳田さん、そして実際にソーシャルニュースサイト『ニューシング』を運営されている藤川さんによる現状把握のためのプレゼンの後、2つのグループに分かれてソーシャルニュースについてディスカッションしました。私は「ソーシャルニュース・ビジネスの未来」をテーマにしたグループに参加、もうひとつのグループでは「利用者から見たソーシャルニュース」がテーマとなっていたようです。

ソーシャルニュースの現状について、私が捉えたポイントは次の通りです。

  • SNSやツイッターの普及により、ソーシャルニュースの利用者は徐々に増えてきている
  • ソーシャルニュース運営社の収入源の大半は広告収入。ポータルサイトへのデータ(URLのレーティング情報など)販売による収入も一部ある
  • ソーシャルニュースはサービス毎にターゲットが異なる(ニューシングは「夕刊フジ的なニュースを好む人」、チョイックスは「ジャーニーズのファン」)
  • ソーシャルニュースの利用者には「ソーシャルニュース」を利用している感覚がない(ニュースサイトだと思っている)人が多い

ディスカッションでは次のような議論が展開されました。

  • ソーシャルニュースはそもそもビジネスとして成り立つか?(ソーシャルニュースに未来はあるか?)
  • ソーシャルニュースをより多くの人に利用してもらうにはどうすれば良いか?
  • 低俗なニュースばかりが流通する現状をどうにかして打開できないか?

利用者の視点からは「ソーシャルメディアに流通するニュースには同じような傾向のものが多く、これだけでは情報源としては足りない(世の中の流れがわからなくなる)」といった指摘もありました。

日本でソーシャルニュース・サービスが立ち上がり始めた2006年に、AMNの徳力氏が日本におけるソーシャルニュースの普及について興味深い記事を書かれています。


非常に考えるところの多い勉強会でしたので、後日、自分の考えをブログにアップしてみようと思います。

ご参考までに、当日のプレゼン資料の一部がスライドシェアにアップされています。


以下、他の参加者の方によるブログ記事です。


参加された皆さま、夜遅くまでお疲れ様でした。

2010年11月16日火曜日

キュレーターに求められる特性とスキル

前回の記事に引き続き、今回の記事もキュレーションについて。前回同様、Robin Good氏のブログメディア『Master New Media』から、今回は「キュレーターに求められる特性とスキル」です(キュレーションについてはこちらをご参照ください)。Robin Good氏によるキュレーションに関する一連の記事のなかで最も力が入っている印象を受けました。


以下抄訳のため、正確な情報については英文記事をご参照ください。

まずはキュレーターに求められる特性から。

1. 専門性


キュレーターにとって最も重要な特性が、対象分野に対する専門性だ。専門性が無ければ適切な情報を選別することはできない。専門性はキュレーション活動を通してさらに高められる。調査や研究を続けることで、その分野のエキスパートになった人も出てきている。

キュレーターはエキスパートへの登竜門と言える。キュレーターとしての経験を重ねることで、「迅速な情報及びインフルエンサーの特定」、「専門用語や専門技術に対する深い理解」、そして「関連業界における期待や恐れ、トレンドといった雰囲気の把握」が可能となる。エキスパートを目指すキュレーターにとって、これらは全てかけがえの無いスキルとなるはずだ。

2. 関連性


専門性だけでは読者に対して付加価値を与えることはできない(読者に訴求できない)。キュレーターはそこに、読者の理解を促進するための関連性(ストーリー)を与える必要がある。例えば、キュレートした情報が、業界が抱える問題点やニーズと直接関連付けられていれば、読者の満足度は増すだろう(読者の問題解決に繋げられるかどうか、あるいは実用的かどうかが重要)。この関連性の有無が、アカデミックな情報との最大の違いとなる。

3. 信頼性


信頼性は、キュレーターが持つ専門性、一貫性、そして継続性の結果だ。例えばあなたが私にとって価値のある情報を継続的に提供してくれれば、私はあなたを信頼するようになるだろう。従って、信頼性は特定の分野における問題や興味、必要性に直結するコンテンツやテーマをいち早く理解・発見し、これをキュレートすることによって高めることができる。同じ分野のキュレーターやエキスパートに対して敬意を払うことも忘れてはならない。

続いてキュレーターに求められるスキルについて。ここでは全体の鳥瞰を優先し、個々のスキルについて深く言及することは避けました。

1. 検索スキル


主要な検索エンジンを使いこなし、個人のブログやニュースサイトから情報源を探し出して特定するためのスキル。

ここでは検索エンジンから常に有用かつ最新の情報を得られるよう、各検索エンジンの特性(入力可能な検索条件)を把握したうえで、検索条件入力後のURL(検索結果のURL)を管理しておくことが肝要となる。キーワードや日付、言語、などの条件を駆使し、情報を絞り込む作業にも慣れておいた方が良いだろう。

2. メディア・リテラシ


スパムや広告、プロパガンダ、プロモーション情報など、本質的ではない情報を見抜くこと、そして広く流通しているテクノロジーやサービスを使いこなすことがここに含まれる。

3. コミュニケーション・スキル


「複雑な物事を文章で説明するための力」「読者の理解を促進するためのプレゼンテーション力」「絵図を用いて複雑な物事を表現する力」「読者の声を聞いて理解する力」「読者が所属するコミュニティの動向を把握する力」など、キュレーション活動に必要なコミュニケーションのためのスキル。

4. 編集スキル


「情報を選別する力」「読者の理解を促進するようなストーリーを構成する力」「参照情報・引用情報を適切に活用する力」「冗長な表現を要約する力」など、編集作業のために必要なスキル。

5. セマンティック・スキル


情報を整理・分類し、そこからパターン(トレンドや各情報の重要性)や意味、関連性、読者への価値などを見出す力。ここにはSEOに対する理解も含まれる。

6. ソーシャル・スキル


ソーシャルネットワークを構築、あるいは読者とのエンゲージメントを深めるためのスキル。

7. 情報管理スキル


集めた情報を管理(整理・保存)するためのスキル。今直ぐ必要ではない情報についても、適切に管理しておくことで、必要なタイミングで利用できるようになる。

8. 情報技術スキル


情報の収集や公開に必要な情報技術(IT)の特性を理解し、適切に活用するためのスキル。

前回の記事でもご紹介した通り、キュレーターの業務範囲はとても広く、高い専門性が要求されることもあり、多様なスキルが要求されるようですね。ここまで来ると、やはり専門職とすべきなのでしょう。

さて、キュレーションについては本記事で一応一区切りとなります。お読みいただきありがとうございました。コンテンツ・キュレーターの重要性は今後益々高まってくるはずです(『キュレーションの必要性』を参照)。ジャーナリストにとっては、キュレーションに関するスキルは必要不可欠なものになりつつあるのではないでしょうか。本ブログではキュレーションについてこれまでに何本かの記事を書いてきました。これらがこれからキュレーターを目指される人、あるいはキュレーションを導入するメディア企業において、少しでもお役に立ててれば嬉しい限りです。


最後に、ご参考までにキュレーションに関する良記事をピックアップしておきます。こちらも是非。

2010年11月15日月曜日

キュレーターは何をする?

NAVERが『NAVERまとめ』をリニューアルして以降、コンテンツ・キュレーションを実践されている方は徐々に増えきている印象があります。私も使っていますが、これは結構良いですね。


とは言え、キュレーションを実践する「キュレーター」は一般的にはまだ馴染みのない職種であり、本来この職種が最も必要とされるメディア企業においては、ほとんど存在していないのではないでしょうか(いらっしゃったらごめんなさい)。

そこで本記事では、キュレーションについてさらに理解を深めるために、Robin Good氏のブログメディアMaster New Mediaに掲載されていた記事を基に、キュレーターの作業内容について少し具体的に解説してみようと思います。抄訳のため、正確な情報は英文をご確認ください。みなさまのキュレーション活動の参考となれば嬉しいのですが。


Robin Good氏はキュレーション業務を21の作業項目に分解して「シーケンス」として解説されていますが、ここでは理解しやすさを考慮し、21の作業項目をさらに5つの作業単位(「準備」「収集」「編集」「公開」「改善」)に分類・整理して、紹介させていただくことにします。

なお、本ブログでは過去に一度『キュレーションの業務フローと業務プロセス』と題してキュレーション業務の概要をご紹介したことがありましたが、本記事はこれをリファインするような位置付けとなります。

[Step1] 準備


キュレーションのための準備をします。ここには以下4つの作業が含まれます。

  1. キュレーションのテーマ(分野)を特定する
    ある程度のユーザ数が見込め、かつ自分の専門知識を活かせる分野を選定します。
  2. 情報ソースを選別する
    有益な情報を引き出せるニュースサイト、ブログ、RSSフィード、ツイッターアカウント(リスト)、フェイスブックページなどを選別します。
  3. 情報収集ツールを選別する
    RSSリーダやソーシャルブラウザなど、情報ソースから情報を引き出すための最適なツールを選別します。
  4. ネットワークを構築する
    キュレーション対象のテーマに強い専門家や記者やジャーナリスト、熱心なユーザ、インフルエンサーといった人たちのネットワークを構築します。

[Step2] 収集


情報を集めます。ここには以下2つの作業が含まれます。

  1. 情報を集約する(アグリゲーション)
    Step1で選別した情報収集ツールを利用し、情報を集約します。
  2. 情報を選別する(フィルタリング)
    集約した情報からスパム情報や虚偽情報、品質の低い情報を取り除きます。

[Step3] 編集


集めた情報を基に、読者に提供する情報を生成します。ここには以下9つの作業が含まれます。

  1. 提供する情報を選択する
    Step2で集めた情報のなかかから、実際にユーザに提供(紹介)する記事あるはレポートなどを選択します。
  2. 提供する情報を検証する
    ユーザに提供する情報の正確性や、情報源を検証します。
  3. 提供する情報を編集する
    ユーザに提供する情報の体裁を整えます。読者の理解を促進するために、必要に応じて導入文やサマリ文を作成します。参考文献などがあれば、そこへの参照リンクも付与します。
  4. コンテキストを付加する
    読んで欲しい読者の興味を惹くようなコンテキストを付加します。
  5. 独自の視点を付加する
    キュレーター自身の視点や意見を付加します。独自の視点は大きな付加価値となるため、単純な再配信や再掲載との差別化を図るためにも、これは非常に重要な作業となります。
  6. タイトルを付ける
    その情報を必要とする読者が判別しやすいタイトルを付けます。ここで、読者の信用を無くすようなセンセーショナルなタイトルは控えます。
  7. クレジット情報を付ける
    クレジット情報は信頼性を向上させるため、可能な限り付けるようにします。
  8. 掲載場所(掲載順)を調整する
    読者の理解にも関わるため、情報の掲載場所や掲載順はとても重要です。
  9. 情報を整理する
    読者から見つけやすくするために、各情報に属性情報を付与、あるいは情報をまとめておきます。

[Step4] 公開


編集した情報を公開します。ここには以下3つの作業が含まれます。

  1. 情報を更新する
    定期的に情報を更新します。
  2. 自分についての情報を公開する
    キュレーションの対象、自身の専門分野など、キュレーターについて知ってもらうための情報を公開します。
  3. 情報を流通させる
    オンラインメディアやソーシャルネットワーク、アグリゲーションサービスなどを活用し、キュレーションした情報を流通させます。

[Step5] 改善


ここには以下3つの作業が含まれます。

  1. 読者からのフィードバックを得る
    読者からフィードバックを得ながら、読者との信頼関係を構築していきます。
  2. 読者の傾向を分析する
    アクセスログやアクセス解析ツールなどを利用し、アクセス数やセッション数、ユーザ数、サイト滞在時間など、読者の傾向(利用動向)を分析します。
  3. キュレーション業務を改善する
    読者からのフィードバックや読者の傾向を基に、上記全ての作業内容について改善を続けます。

以上がRobin Good氏の記事で紹介されていたキュレーターの作業内容(キュレーション業務の内容)です。作業項目が多く、個々の作業も決して容易なものではなさそうですが、だからこそ「キュレーター」という専門職が必要になってくるのではないかと考えました。

キュレーターが業務を遂行する上で利用できそうなツール(全て英語)が『Master New Media』に紹介されています。こちらもご参考までに。

2010年11月14日日曜日

#book 街場のメディア論

内田樹氏の著書『街場のメディア論』についてブログを書こうとここ1ヶ月ほど悶々と切り口を考えていたのですが、一時断念します。まとまりませんでした。力不足。(それほど私にとって内容が濃密でした)



本書では「何故日本のマスメディアは凋落したのか」「何故凋落したと言えるのか」「本来マスメディアはどうあるべきか」「マスメディアの凋落は日本にどのような影響を与えているのか」など、内田氏の「メディア論」が展開されています。著作権に対する考え方も実に面白い。メディア業界の人だけでなく、メディアに興味のある方ならどなたでも一読の価値があるのではないでしょうか。本書の内容について、色々な方と議論してみたいですね…

一点だけ。

本書の第5章『メディアと変えないほうがよいもの』において、内田氏は「医療」「教育」そして「メディア」は金儲けをするためのものではない(市場原理を持ち込むべきではない)、と指摘されています。これについて、私は大いに同意します。メディア(もちろん、医療と教育も)は「金儲け」ではなく「持続させること」をまず第一に考えるべきだと。そしてそれこそが社会的な責任なのではないかと。その理路については、また後日。

2010年11月12日金曜日

ツイート記事アーカイブ(2010年10月)

今月から私がツイッターでツイートした記事のうちメディア業界に関する記事を中心に、過去1カ月分を読み直した上で、毎月1回ブログにまとめることにしました。メディア業界関連の記事は社内の勉強会で議論するためのネタにしようかと考えており、メディアに関する普遍的な論考やメディア業界の大きな流れを掴めそうな記事を中心に選定しようと思います。また、テクノロジーや社会問題など、個人的に興味のある分野についても最後の方でまとめてみようと思います。

それでは早速。先月(2010年10月)ツイートした記事は51本ありました。以下、これらの中からいくつかピックアップしてご紹介します。

まずはメディアやメディア業界に関する記事から。

先月公開された内田樹氏によるマスメディアに関する記事は実に示唆に富んでおり、氏の著書『街場のメディア論』と合わせ、是非読んでおきたいですね。マスメディアに在籍するものとしては手厳しい話がいくつも内包されておりますが、それらは全て真摯に受け止めたいと考えています。


テクノロジーが進化し、フェースブックやミクシィを始めとしたSNS、ユーチューブやツイッターといったソーシャルプラットフォーム(「ソーシャルメディア」「ソーシャルウェブ」との表記もありますが、今後は「ソーシャルプラットフォーム」で統一してみたいと思います)の普及が進んでいます。こうした現状を踏まえ、ではこれからどのように情報の流通形態が変化していくのか、その論考を深めていく必要があると考えています。そしてその上でインプットになりそうな題材として、今月は以下の記事に注目してみました。


続いて国内外のメディア業界の動向に関する記事。

先月は海外のメディア事情について気になった記事が2本ありました。いずれもニューズウィーク日本版のサイトから。


国内メディア企業の動きについて2本。


その他、以下の記事に注目してみました。


メディアに関する記事は以上です。ここからは個人的に興味のある分野の記事からいくつかご紹介します。

先月は国内の貧困問題に言及する記事をいくつか目にしました。この分野の記事については今月以降も気になるものがあれば紹介していこうと思います。


フォトジャーナリストの佐藤慧さん(@KeiSatoJapan)とは、以前『「8月15日を撮る」プロジェクト』でご一緒させていただいたのですが、とても魅力的な方です。熱意と行動力が素晴らしい(羨ましい!)。慧さんが扱われている分野が私の興味分野と重なっていることもあり、慧さんの取材活動には今後も注目していきたいと思います。


今月は、他にも以下のような記事に注目してみました。


ここでピックアップした記事について、もしご意見などあればお聞かせください。ブログのコメント欄でも良いですし、ツイッターで話しかけていただいても構いません。

読み直したり編集したりと若干手間はかかるのですが、この取り組みは少し続けてみようと思います。

2010年11月8日月曜日

文章を読み取る力をつける

毎月恒例のmixbeatワークショップ、今月のテーマは「文章を読み取る力をつける」でした。人によって経験や知識、感性は異なるなめ、同じ文章を読んでも文章の読み取り方、例えば気付くことや思うこと、疑問を持つことは様々です。本ワークショップの狙いは、この「文章の読み取り方(着眼点)」の違いを可視化し、自分と他者を比較しながら他者の良い部分を取り入れることで、最終的に文章を読み取る力をつけよう、というものです。

ワークショップのおおまかな流れは以下の通り。

  1. 参加者全員で一斉に同一文章を読み、着眼点を制限時間内に書き出す
  2. それぞれが書き出した着眼点を参加者全員で共有する
  3. 共有された着眼点をもとに参加者全員でディスカッションする

当日はこれを2回実施しました。詳細については『mixbeat活動報告ブログ』を是非ご参照ください。


ここからは少し当日の様子をご紹介します。

まずはルールの説明から。



一通り質疑応答を終えたら、いざ実践。A4用紙で2~4ページぐらいの比較的短い文章を一斉に読みはじめ、着眼点を書き出します。この日提示された文章は「旅行記」「教科書からの抜粋」「専門雑誌の記事」など、普段殆ど読まない類のものばかり。参加者全員にとってあまりなじみの無い文章が良い、との判断から、こうした文章が選択されました。制限時間は15分。質よりも量を重視し、とにかく着眼点を書き出します。普段しない読み方で結構疲れましたが、良いトレーニングになったと思います。



続いて、書き出された着眼点の共有&ディスカッションタイム。バラエティに富んだ他者の着眼点に触れ、多様性は感じることはできました。しかし、着眼点そのものが議論の主題となってしまい、(私にとっては肝心の)「何故そこに着目したのか(理由)」について殆ど言及されず、残念ながら午前の部は消化不良のまま終了しました。



ということで、昼休みに主催者と参加者で話し合い、午後からは少しルールを変更。こうした柔軟さは私も見習いたい。当日変更がきく、ということは、ワークショップの骨組みがしっかりしているからだと思います。

お弁当。私は午前の部で最も多く着眼点を出せたため、優先的にお弁当を選ぶことができました。迷わず山形牛のハンバーグ弁当を選択。



そして午後の部。ディスカッションの進め方は、午前の部と比較すると改善されたと感じたのですが(塾長は「改悪だった」と指摘)、やはりまだ消化不良でした。



とは言え、今回のワークショップはかなりよく出来ていました。主催者の入念な準備があってこそだと思います。進行でストレスを感じる事もなく、最後まで集中できました。また、テーマも良かったと思います。他者の視点を知り、それと自分の視点とを比較することで、個人的に大きなテーマの一つ、相対化も一歩進めることができたように感じました。「着眼点を視覚化して共有する」仕組は読書会やソーシャルリーディングでも応用できるのではないでしょうか。

さて、ワークショップ終了後、消化不良を解消するには何をどうすれば良かったのだろう…と思案を重ねていたら、塾長がご自身のブログに目の覚めるような改善策を提示されていました。

その人の視点や視座の可視化はたしかに難しいんだけど、ぼくがやるなら「何を選ぶか(選ばないか)」をもっとわかりやすくするかな。
たとえば5つの文章を読んでおもしろい順に並べ替えさせてその理由を問うとか、ベストとワーストについて聞くとか。
あるいは同じ映像を見せた後、それぞれ別室に呼んで各自1分で要約させることでどこが印象に残ってるのかを明らかにするとか(もちろんそれも撮影してあとで全員で共有する)。

昨日のは玉石混淆であることを自覚しながら、それを広げただけで終わったので、もう少しそこから玉を拾い上げる工夫がいるだろうな。

そうなのですよね、「何を選ぶか(選ばないか)」が重要なのですよね。当日、面白い視点はいくつかあったのですが、「自分も取り入れたい」と思えるような視点はそれほどありませんでした。ただそれは自分の価値観をもとにしたからであって、他の人の価値観を聞く事で、もしかしたら自分の考え方も変わったのかもしれません。自分の今の視点は自分の価値観をベースに造られたものであるため、これを変えるとなると、まず自分の価値観を変える必要がある、というのは当然の帰結だと思います。自分の価値観を変えなければ、他者の視点の良さを感じることはできません。

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[2010-11-12]

このワークショップを主催したまっちゃんのブログに、テーマ選定の経緯がまとめられています。


背景を知ることで、テーマへの理解も深まると思います。

2010年11月5日金曜日

腐らない文章

内田樹氏が著書『街場のアメリカ論』のあとがきで「腐らない文章」という概念に言及されています。

文章においては「しばらくすると腐る」ところと「なかなか腐らない」ところがある。「風穴」があいていると文章はなかなか腐らない。

<中略>

きちんとパッケージされていて、理路整然、博引旁証(はくいんぼうしょう)、間然するところのない文章であっても、「風穴」があいていないと経時的変化とともに、「酸欠」になって、腐り始める。

<中略>

「腐る」というのは言い換えると「経時的に汎用性がない」ということである。つまり、例えば、今から二十年前の読者や今から二十年後の読者というものを想定したときに、その人たちにもこちらの言いたいことが「伝わる」かどうかということである。その程度の広がりの中なら、十分に読解可能であるのは「腐らない文章」である。

「二十年前、あるいは二十年後の読者に伝わる」という視点はとても新鮮でした。一方で「腐る文章」については次のように言及されています。

メディアがもてはやす「切れ味のよい文章」はたいていの場合、「同時代人の中でもとりわけ情報感度のよい読者」を照準している。二十年前や後のことなんかあまり考えない。ファッショナブルな月刊誌の場合などはしばしば先月号の読者を「時代遅れ」と冷笑して切り捨てることさえ厭わない。

でも、その気遣いの欠如(そのクールさが外形的には「かっこいい」のだ)が文章を腐りやすくする。同時代のさらに狭いサークルでの「内輪の語法(ジャルゴン)」が通じるような少数の読者にのみ限定するような文章が、時代も場所も状況も違う読者にとっても読解可能であるかどうか。考えてみれば誰にもわかる。

「切れ味のよい文章(腐る文章)」がもてはやされる背景には、「読者側からの要求」もあるようですね。

どうもファッショナブルで「メンバーズ・オンリー」的な排他性をたたえた文章を書きたがる人も読みたがる人も後を絶たない。たぶんそのような排他的なポーズが読者の欲望をそそるということをみんな知っているからだろう。

ネット上に溢れる文章情報について、個人的な印象としては「腐る文章」が溢れているように感じます。新旧メディアが乱立する中、多くのメディアは何とか多くの人の注意を引くために、あるいは日銭を稼ぐために「腐る文章」を量産してしまっているのではないでしょうか。これが悪いことだとは言えませんが、腐る文章を量産するようなメディアが長生きできるとも到底思えません。

このブログでは「文章で伝えること」について、これまでに何本か記事をポストしてきました。


並行して私自身色々と試してはいますが、なかなか「伝わる文章」を書けている実感が湧きません(恐らくこの文章自体も「伝わる文章」からは程遠いのですよね)。そもそも何を目指せば良いのかがわかりませんでした。しかし今、少し方向性が見えてきたような気がしています。

私はこのブログで「腐らない文章」、すなわち「十年後・二十年後の読者にも伝わる文章」を目指してみようと思います。そしていつかは「腐らない文章」(百歩譲って「腐りにくい文章」)が書けるようになりたいものですね。

あとがきについてのみの記事となってしまいましたが、『街場のアメリカ論』の本編も是非どうぞ。内田樹氏による「日本人に根付くアメリカ観」に関する考え方はとてもユニークで面白いですよ。



本当に勉強になります。

2010年11月4日木曜日

ジャーナリストのためのmTurk利用ガイド

アマゾンが展開している Amazon Mechanical Turk(mTurk)というサービスはご存知でしょうか?


コンピュータプログラムで処理するにはハードルが高い単純作業を、世界各地の登録作業者に分散して処理してもらうサービスです。「人力Hadoop」といったところでしょうか。もともとはアマゾンが「商品説明ページの重複を見つけるために」開発したようなのですが、2005年11月に一般向けに公開されました。mTurkは例えば大量の写真に対してタグ付けしてもらうような画像処理に向いているようです。まだ英語版しか無いのですが、日本でも既に利用されている方もいらっしゃいます。


結構評判は良さそうですね。ちなみにオープンソースでJAVA版APIも存在します。


今年オンラインメディアとして初めてピューリッツアー賞を受賞した米国の調査報道NPOプロパブリカ(ProPublica)は、このmTurkを活用し、調査(取材)に掛かるコストを圧縮しているようです。そして実際にプロパブリカで利用しているmTurkの「ジャーナリスト向け」利用ガイド(英語)が、Robin Good氏のブログMaster New Mediaで公開されました。


今後もメディア企業に対する記事作成コストの圧縮圧力は高まることが予想されます。そうした中、mTurkのような「取材活動に掛かるコストの低減を期待できるサービス」の利用は、検討する価値があるのではないかと考えました。機会があれば是非一度試してみたいですね。

2010年11月1日月曜日

ソーシャルメディア・リテラシ

先日、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)で開催されている『「ネットの力、みんなのチカラ」プロジェクト』に参加してきました。


私が受講したのは、ブログ『ガ島通信』を運営されているジャーナリスト・藤代裕之氏(@fujisiro)による講義『ソーシャルジャーナリズムの可能性。私たちに何ができるのか』です。



テクノロジーが進化し、ブログやツイッター、ユーチューブ、フリッカーなどのソーシャルメディアが普及したことで、ある程度のリテラシがあれば誰もが情報を発信できるようになりました。つまり、ジャーナリストの定義を「メディアに記事や素材を提供する人」とするのであれば、誰もが「ジャーナリスト」になれるわけです。本講義ではこうした現状を踏まえ、「ソーシャルメディアで情報を共有するとき、何を気をつければ良いか」について、ディスカッションが行われました。ユーストリーム中継もあったため、結構活発な議論になっていたと思います。

議論の冒頭ではまず「日本の従来マスメディアが報道目的でソーシャルメディアを巧く利用できていない現状」が紹介されました。日本のマスメディア企業、実は結構ソーシャルメディアを使っています。例えばブログ。産経新聞の『イザ』や神奈川新聞の『カナロコ』など実に38サイトあります。SNSも9サイトあります。最近では毎日新聞がツイッターと連動した新聞『毎日RT』を発刊したことも記憶に新しいと思います。また、アサヒコムは『はてなブックマーク』と連携するようになりました。しかし残念ながらどれも上手くいっておらず、インターネット上の情報流通において主流になれていない…

本来であればここを出発点に「日本のマスメディア企業がソーシャルメディアを巧く利用できない理由」について考えを深めた上で、「日本のマスメディア企業を反面教師とし、それでは我々はどのようにソーシャルメディアを利活用すれば良いのか(解決策)」について議論を進めるような流れだったのですが、時間切れとなってしまいそこまで深い議論はできませんでした。この日主に議論できたのは以下2点です。

  1. ソーシャルメディアで情報を収集するとき、情報の信頼性はどのように確保するか?
  2. ソーシャルメディアで情報を発信するとき、何を気をつければ良いか?

1番目の論点では、会場から「発信者のソーシャルグラフを確認する」「発信者が過去に発信した情報を確認する」「発信者の肩書きや経歴を確認する」「実名で情報を発信しているかどうかを確認する(実名であれば信頼度が増す)」などの方法が提示されました。ツイッターであれば「フォロワーの数」、ブログであれば「人気ランキング」も参考になる、との話もありました。藤代氏は「近い将来、信頼度が数値化されるのではないか」とも話されていました。みなさんはどのような方法で取得する情報の信頼性を確保されていますか?

2番目の論点では、藤代氏から「ソーシャルメディアで情報を発信している人の中には、従来マスメディア企業と同じ過ちを犯している人たちが居るのではないか?」との問題提起がありました。例えば「センセーショナルに情報を発信する」「実名を出さずに言いたいことだけ言う」などです。こちらについてはみなさん、いかがでしょうか?

ちなみに2番目の論点において、私がマスメディア企業にとって大切だと考えるのは「想像すること」です。より具体的には「デジタルディバイドを想像する(それを読めない人が居ることを想像する)」「情報流通経路(どのように情報が伝播していくか)を想像する」「情報の摂取方法(どのような方法で情報を取得しているか)を想像する」「読者の心や考え方に与える影響を想像する」などです。そしてこれらを想像するためには「情報を上から下に流す」という考え方を変える必要があると考えます。この辺はもう少し自分の考えを整理したうえで、あらためて書いてみることにします。

メディアリテラシについても改めて考えてみたいですね。


なお、本講義の模様はこちらから確認できます。


講演はあと3回あります。豪華な講師陣。時間があれば参戦したいところ。

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[2010-11-05]

少し前の朝日新聞グローブにメディアリテラシに関する特集が組まれていました。ご参考までに掲載しておきます。


ここでは「行動規範」について言及されていますね。これについても今後考えて行く必要があるものと考えます。