2011年7月6日水曜日

魅力的なフォトグラファー

久しぶりに心が晴れやかになる、そんな本に巡り合えたのでご紹介します。


アジアを舞台にご活躍されている安田菜津紀さん、幸田大地さん、白潟禎さん、3人のフォトグラファーによる手記、編集者との対談、そしてご自身が撮影された写真で構成されている本書。私にはそれぞれのフォトグラファーが抱く熱い想いと、人間的な魅力が伝わってきました。

安田菜津紀さん / Yasuda Natsuki


高校生のときに訪れたカンボジア。そこでHIV感染者が隔離される「緑の村」に暮らす同世代に出会い、フォトグラファーの道に進む。日本ドキュメンタリー写真ユースコンテストで大賞受賞。(本書中にある紹介文の抜粋)


幸田大地さん / Koda Daichi


調理師をしていた20歳のとき、カメラを携えてパレスチナへ。帰国して、独学で写真を学ぶ。ユースコンテストでは、インドの不可触民「ダリット」をモノクロ写真で写し取り、優秀賞に。(本書中にある紹介文の抜粋)


白潟禎さん / Shirakata Tei


大学生のときカンボジアで地雷撤去するNGOを知る。その後、ボランティアのスタッフとして、タイ国境に近い地雷原を何度も取材。その写真が評価され、ユースコンテスト優秀賞を受賞。(本書中にある紹介文の抜粋)


3人ともしっかりとした問題意識を持ち、単にジャーナリストとして伝えるだけではなく、表現者であると同時に、問題解決にも取り組まれている、だからこそ一言一言に説得力を、私は感じたのだと思います。 こうした気骨のある表現者の方々を、これからも応援していきたいと思いました。

是非、ご一読を。

2011年7月5日火曜日

CNNに学ぶニュースサイトのレシピ

以前もこのブログで取り上げたことのある、米国ニュース専門テレビ局CNNのニュースサイトが、今や飛ぶ鳥を落とす勢いとなっているようです。


インターネットアクセスの調査会社Ccomscoreの調査によると、2011年1月~3月におけるCNNの全米からの一日平均利用者数は850万人を誇り、テレビ視聴率ではCNNの上を行くFox News Channelの230万人を遥かに超えています。さらにこの数字は、新聞業界最大手のニューヨークタイムズの560万人、そして米国4大ネットワーク(ABC/NBC/CBS/FOX)最大規模、NBCの740万人をも凌駕しています。

そしてここで疑問が湧きます。視聴率ではそこまで数字を取れていない(米国4大ネットワークの下位に甘んじている)にも関わらず、CNNは何故インターネット上のプレゼンスをここまで高められたのか。

ハーバード大学のNieman財団が運営するブログ『The Nieman Journalism Lab』にCNNニュースサイトの分析記事がポストされていました。非常に興味深い内容でしたので、以下、ポイントをまとめておきます。


CNNニュースサイトには、他のニュースサイトには見られない、次のような特徴があるようです。

  1. 読者の多くが直接アクセスしている
  2. リピーターが多い
  3. 読者からの反響が大きい

CNNニュースサイトの読者のうち、実に75%が直接アクセスによるもので、検索サイトやソーシャルプラットフォームなど、他サイトからの流入(間接アクセス)は25%に留まっているようです。また、他のニュースサイトに比べ、リピーターの数が多く、そのロイヤリティも高い(ひと月あたりの訪問回数が10以上、という読者層が最も厚いようです)、との記載もありました。

つまり読者の多くは、サイトで提供されている記事の閲覧だけを目的として訪れているわけではなく(サイトを単に「記事置き場」として見ているのではなく)、サイトで提供されているサービスを目的に訪れていることがわかります。

さて、こうしたCNNニュースサイトの特徴を支えているのが、「ピラティス戦略」と呼ばれる、読者の知的好奇心を刺激するための戦略のようです。この戦略の骨子は次のようなものです。

  • 単にニュースを提供するだけでは足りない
  • 知識の探求や、新たな行動、革新、実験に繋げなければならない

そして「ピラティス戦略」のもと、具体的には次のような施策を展開しているようです。なお、詳細については原文をご確認ください。

  • ブロガー・ブログメディアの充実
  • 市民ジャーナリストとの連携サービス(iReport)の展開
  • 動画コンテンツの拡充
  • モバイルアクセス機能の高度化
  • 通信社ニュースからの脱却

一つ一つを見ると実践しているニュースサイトはあるように思いますが、「読者の知的好奇心を刺激する」という目的のもと、これらをワンパッケージで展開しているようなところは他に無いのではないでしょうか。ちなみに私が衝撃を受けたのは「通信社ニュースからの脱却」。同じようなニュースがあっても仕方が無い、という理由から通信社のニュースは使っていないようです。

本記事では言及されていませんでしたが、他のニュースサイトがツイッターやフェイスブックなどソーシャルプラットフォームからの流入を呼び込もうと躍起になっているのをしり目に、CNNは以前からこつこつとIT投資を続けており、その成果が無ければこうした施策はそもそも展開できなかったと考えられます。確かな「戦略」と、それを支える「技術」、この二つが合わさって初めて、今のCNNニュースサイトがあるのだと思います。

本記事の最後には、次のような言及がありました。

近年、TVよりもiPhoneやiPadで情報を集める人が増えてきている。若い世代では特にその傾向が強い。このままTVの影響力が低下すれば、いずれFox News ChannelがTVで放送するニュースよりも、CNNがネットで配信するニュースの方が、影響力を持つようになるだろう。

テレビの視聴率がさほど意味をなさなくなる日も近いのかもしれません。

2011年7月4日月曜日

「不快なニュース」はネットで読まれない?

少し前に読んだ佐藤卓巳氏の著書『メディア社会』に、「ニュースの本質」に言及する一節がありました。

『メディア社会』P212


シュラムは「ニュースの本質」(1949年)において、人々がニュースに求める期待を「快楽原理による即時報酬」と「現実原理による遅延報酬」に二分している。犯罪・汚職・スポーツ・娯楽などの記事は「身代わりの経験」による衝動の昇華で読者に即自的な快楽をもたらすが、他方の政治・経済・文化関連記事はしばしば退屈であり一時的には不快感さえもたらす。

私はこれまで、「これは発表報道である」「これは調査報道である」など、ニュースの出し手から見た、ある意味一方的な、受け手のことをあまり考慮しない分類はよく目にする一方、こうしたニュースの受け手から見た分類はこれまであまり目にしたことがなかったため、私にとってこの分け方はとても新鮮でした。

ちなみにシュラム(Wilbur Schramm)は母国の米国では「コミュニケーション学の父」と呼ばれ、米国のコミュニケーション研究に多大な影響を及ぼした研究者のようです。


本書では「不快なニュース」についてさらに次のように述べられています。

だが、こうした不快なニュースこそが、人々を日常の現実に向き合わせ、遅延的つまり結果的に現実世界での成功を可能にする。マンガやスポーツ記事など即自的快楽ばかり望んでいた子供が成長とともに政治や経済記事に関心を示すように、遅延化とは社会進出のプロセスなのである。

ここまでの内容を要約すると、『私たちが新聞やテレビ、そしてネットなどを通して普段触れるニュースには、即時報酬を伴う「快適なニュース」と、遅延報酬を伴う「不快なニュース」の2種類があり、このうち私たちが世の中と向き合うために必要なのは「不快なニュース」である』ということになるのでしょうか。

  • 快適なニュース
    事件・事故・芸能・政局・スポーツなどに関する記事。読者に快楽をもたらす。
  • 不快なニュース
    政治・経済・文化などに関する記事。読者に不快感をもたらすこともあるが、人が世の中と向き合うためには必要不可欠。

こうしたシュラムの論考を受け、佐藤卓巳氏は次のように結んでいます。

とすれば、今日に至る新聞の歴史は社会進化と逆行している。もっぱら政治・経済・文化記事で占められた十九世紀の市民新聞は、二〇世紀になると煽情的な犯罪・スポーツ・マンガで埋め尽くされた。インターネットは、こうした「快楽原理による即時報酬」を極大化するメディアといえよう。

前半部分「必要なニュースが新聞からは得難くなった」については、確かにそのような傾向はあるとは感じつつも議論の余地がまだあるとは思いますが、後半部分は私も首肯するところ大です。すなわち、

ネットは「快適なニュース」に向いている ≒ ネットでは「不快なニュース」は苦戦を強いられる

「快適なニュース」を生業にしているニュースサイトは別としても、本来「不快なニュース」を提供する責任を持つニュースサイトを運営されている方であれば、恐らく誰もがこのことを痛感されているのではないでしょうか。いっそのこと運命を受け入れ「快適なニュースに向いているのであれば、ネットではそれだけにしよう」という選択肢もあるのかもしれませんが。

しかし、情報収集方法の主役が紙媒体から電子媒体に移行しつつある今、ネット上から「不快なニュース」が駆逐されることは、それはそのまま「不快なニュース」との接点が全体的に薄くなることを意味するように思います。従って私は、「不快なニュース」を提供する責任を持つ側は、どれほど大変であったとしても、ネット上から撤退するのはいかがなものかと、こう考えるわけです。

苦戦を強いられる「不快なニュース」をいかにしてうまく届けられるか、そこが問われている気がしています。厳しいですが、解決し甲斐のある、なかなかハイレベルな課題だと思うのですが。

2011年6月30日木曜日

ウェブページ内で関心が寄せられている単語を把握する

Aptureの新機能が面白そうなので、メモを残しておきます。


Aptureは2007年にローンチした、一言で言えば「ウェブ上の任意の単語をその場で調べる」機能で、使い方は非常にシンプルです。Aptureに対応したサイトであれば、そのサイト上にある調べたい単語をマウスでハイライトすればAptureボタンが浮かび上がってきますので、あとはこれをクリックするだけ。その場でハイライトした単語の検索結果がポップアップウインドウで表示されます。このブログはAptureに対応させていますので、試しに「Apture」でもハイライトしてみてください。ちなみにAptureに対応していないサイトでも、ブラウザにAptureプラグインをインストールすればAptureを利用できます。

意味のわからない単語に出くわしたとき、以前は逐一別ウインドウや別タブを開いてGoogleで検索したりウィキペディアで調べたりしていましたが、Aptureプラグインをブラウザにインストールしてからはこれをやることがほとんど無くなりました。

さて、先日このAptureにHotspotsと呼ばれる機能が追加されました。HotspotsはKindleのポピュラーハイライトのような機能で、これまでは単に単語を調べるだけだったのですが、Hotspotsが追加されたことで、他の人によってAptureで調べられた単語が自動的にマークされるようになったのです。しかも調べられた回数も表示されます。


以下は紹介記事。Aptureがこれまで収集してきた「人々によってハイライトされる単語」の情報を有効活用しようとしたところから、今回のHotspotsが生まれてきたようです。


英語で恐縮ですがHotspotsの説明画像を転載しておきますね。

Apture Step by Step

利用者が増えなければ効果は薄いのですが、利用者にとっては他の読者が、サイト運営社にとっては自社サイトの読者が、ページ内のどのような単語に関心を寄せたのかがわかるようになるわけで、これはなかなか使えるのでは、と密かに今後の展開に期待しています。「誰がどのタイミングで」あたりまで可視化されれば、一段とクールになるのでは。なお、現時点で英語のサイトではHotspotsが散見されますが、残念ながら日本語のサイトではほとんど見られません。

導入方法は非常に簡単ですので、是非一度お試しください。

2011年6月29日水曜日

報道分野のイノベーション支援から見る今後の方向性

先日、米国のナイト財団が報道分野のイノベーションを促進するために毎年実施している資金提供プログラム「Knight News Challenge」の受賞プロジェクトが発表されました。5回目となる今年は、16個のイノベーティブなプロジェクトに対して資金が提供されるようです。東日本大震災直後に貴重な情報源の一つとして注目されたsinsai.infoで使われているOSS、Ushahidiが名を連ねています。


ちなみにGoogleが提供資金を寄付していますね。


さて、今年の受賞プロジェクトも例年同様、ニュースのビジュアライズに関連したものや、コミュニティ構築を促進するもの、特定地域の市民メディアの立ち上げを支援するものなど多岐に渡ってはいたのですが、大量のデータからニュースを見つけ出す、いわゆる「データジャーナリズム」に関連したプロジェクトが目に付きました。例えば市民が身の回りのデータを収集・調査・共有するためのツール開発を目指すThe Public Laboratory(既に2010年メキシコ湾原油流出事故で活用されているようです)や、大量のデータから意味のある、ニュースとなりそうな情報を抽出するツール開発を目指すOverview、ソーシャルメディアからニュースを見つけ出すツール開発を目指すiWitness、ジャーナリスト向けにウェブページからデータを抽出して共有するためのツール開発を目指すScraperWiki、そして政府や公共機関などが公開するデータを分析するためのツール開発を目指すPANDAなど、16のプロジェクトのうち、実に6つのプロジェクトがデータジャーナリズムに関するものとなっています。Google資金の影響もあるのかもしれませんが、ネット上のデータが増え続けている昨今、これは妥当な動きなのかもしれません。

こちらもご参考までに。そんなことは無いと思いますが「21世紀、特ダネは足で探すのではなく、アルゴリズムで探すようになる」「全てのジャーナリストはデータ(が理解できる)ジャーナリストであるべきだ」と豪語しています。


と、以上は海外の動きです。

日本でもオープンガバメント化が進んでいることや、ソーシャルメディアの利用者層が広がりつつあることを考慮すると、国内の報道機関においてもこうしたデータジャーナリズムのためのツールが必要になる日が遠からずやってきそうですよね。ということで、いずれも興味深いプロジェクトということもあり、今後も少し追ってみようと思います。

余談ですが、上述したScraperWikiはデータジャーナリズムとは関係なく現在既に利用できます。なかなか役立ちそうかつ面白そうなサービスですよ。


データジャーナリズムについては過去の記事もどうぞ。

2011年6月9日木曜日

#book イノベーションの技法

先日、少し前にある方にお勧めいただいた書籍『発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法』をようやく読了しました。本書には米国で数々のイノベーションを支援してきた会社・IDEOが実践しているイノベーションの技法が紹介されているのですが、これがなかなかエキサイティングな内容となっています。私が購入したのは第10版でしたので、結構ロングセラーになっているのではないでしょうか。

IDEOについてはウィキペディアにまとまっています。アップルもクライアントのようですね。

IDEO - ウィキペディア


IDEO(アイディオ)は、アメリカ合衆国カリフォルニア州パロアルトに本拠を置くデザインコンサルタント会社。パロアルトの他に、サンフランシスコ、シカゴ、ニューヨーク、ボストン、ロンドン、ミュンヘンそして上海に拠点を持つ。IDEOは製品、サービス、環境そしてデジタルエクスペリエンスのデザインへの支援を行っている。加えて、マネジメントコンサルティング事業を強化している。

以下、本書の内容を少しご紹介します。

本書によれば、イノベーションとは「これまでの製品やサービスにはない、新たな経験を提供すること」と言えそうです。

10章 新しい経験をつくりだす (P216)


革新的な会社や強力なブランドは、「経験」という言葉につながっていることがわかるだろう。

ちなみに本書で「イノベータ」としてよく引き合いに出されるのはアマゾンやデル、そしアップルです。本書は9年前に出版(初版は2002年7月)されたのですが、こうした企業が未だに元気なことを考えると、イノベーション恐るべし、ですね。

ラスベガスからも多くを学べるようです。

10章 新しい経験をつくりだす (P226)


経験を企画し提供することがどれほど効果的かを観察するのに、ラスベガス以上の場所はないだろう。

(中略)

どんな分野の仕事や産業も、小売業や業務用製品の販売業でも、ラスベガスから多くのことを学べる。

(中略)

古いラスベガスは滅んだ。当たり前のことだ。人間を虫けらのように扱うと、最後にはたいてい失敗する。ラスベガスがやったのは、この町自体を徹底的につくりなおすことだった。

それではどうすれば、綺羅星のような企業のごとく、そしてラスベガスのようにイノベーションを起せるのか?

ここでまず最低限必要なのは、ライトスタッフを集めたチーム(本書では「ホット・チーム」と表現されています)のようです。イノベーションを起すには、クリエイティビティを発揮し、インスピレーションを湧かす必要があるらしいのですが、これは絶対に一人ではできない、とされています。

そして本書では「イノベーション」や「クリエイティビティ」「インスピレーション」などと同様に、頻出する単語が3つあります。私はこの3つの単語がイノベーションを起すためのポイントだと捉えました。すなわち、

  • 徹底的な「観察」
  • 良質な「ブレインストーミング」
  • 山のような「プロトタイプ製作」

いずれの単語も一つの章を割いて詳細が説明されています。とは言え、一番大切なのは、やはり楽しむことのようです。

第15章 完璧なスイングを身につける (P320)


次に難しいプロジェクトに深くかかわるときには、イノベーションの真のスピリットを忘れないように。

そう、それは真剣に楽しむことである。

ということで、詳細については本文にお譲りすることとし、本書に書かれている内容を端的にまとめると、おおよそ次のようになります。

イノベーションとは、新たな経験を提供すること。イノベーションを生み出す秘訣は、まずホットなチームを組織し、徹底的な観察から始め、良質なブレインストーミングを繰り返し、山のようにプロトタイプを製作することだ。もちろん、楽しむことを忘れずに。

理論と実践は正反対、やってみなければ何とも言えませんが、個人的な印象としては実践してみる価値はかなりありそうです。イノベーションは起こさないより起こした方が楽しいですからね。とりあえず、出来るところからやってみましょうか。本書に書かれているイノベーションの技法は、製品にでもサービスにでも何にでも適用できるそうです。イノベーションを起すことにご興味をお持ちの方は是非ご一読を。

2011年6月7日火曜日

情報発信者の役割と責任について考える

先週土曜日(6月4日)に参加した日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ:Japan Center of Education for Journalist)が主催するワークショップ「震災報道と一人称のジャーナリズム」は、「伝わる情報とはどのようなものか?」そして「情報を伝える側が果たすべき責任とは?」について考える貴重な機会となりました。少々敷居の高い問題ですが、震災報道が落ち着きつつある今だからこそ、改めて考えてみても良いかもしれません。


本ワークショップの講演者の一人、河北新報の記者・寺島さんは、一新聞記者、そして一被災者として被災地を取材、新聞記事を書く傍ら、新聞記事では伝えきれないものをご自身のブログに掲載されています。ワークショップの参加者は事前にこれらを読み比べ、感想を寄せていましたが、同じ題材を扱っているにも関わらず多くの方が「新聞記事よりもブログ記事の方が伝わってくる」としていました。ワークショップでは、この違いがどこからくるのか、活発な議論が展開されました。みなさんはどのように感じられるでしょうか。


ソーシャルメディアが浸透しつつある中で発生した東日本大震災では、多くの人が情報の受け手であったと同時に、情報の出し手ともなりました(ブログやツイッター、フェイスブックを通じて少ないながらも情報を発信していた私も例外ではありません)。その中で、少々大げさかもしれませんが、例えば「一本の記事、一回のリツイートが、一つのコミュニティを破壊するかもしれない」と考え、慎重に発信した人はどれほど居たのでしょうか。残念ながら私はそこまで考える事ができていませんでした。

ディスカッションでは「個人レベルで信頼できる情報を発信するには、自由に参照可能な確かな一次情報(FACT/DATA)がもっと必要なのではないか」といった意見が出ていました。

ソーシャルメディアは人命救助や被災地支援において有効に働いた半面、多くのデマの温床となった一面もありました。また、ネットでは有る程度センセーショナルな記事にすることがアクセス数を稼ぐための常套手段とされていることから、かなりきわどい記事が多かった事も否めません。今以上にソーシャルメディアを有効に活用するためにも、情報を発信する側が果たす責任について、もっと踏み込んで考えてみたいところです。

ワークショップではこのほか、「復興計画立案におけるマスメディアや学会の役割」「震災報道における全国紙、地方紙、海外メディアそれぞれの役割」「河北新報がソーシャルメディアを利用するに至った背景」などについて議論がなされました。

ワークショップでは「被災した地方紙の記者」そして「震災報道をつぶさに見てきて全国紙の記者」の視点から講演がありましたが、最後に要旨をまとめておきます。「伝わる情報とはどのようなものか?」そして「情報を伝える側が果たすべき責任とは?」。みなさんも考えてみてはいかがでしょうか。

被災した地方紙の記者(河北新報・寺島氏)


  • 震災被害に直に向き合う未曾有の体験だった。
  • 震災直後は社員とその家族の安否確認を最優先し、取材に向かえる記者を確保する一方、新聞を刷るために必要な紙や重油などの物資や、販売経路の確保に走り回った。
  • 被災地に取材に行ってみると、そこはまるで焼け野原のようになっており、何が現実なのか、何を書けば良いのかわからなかった。そしてその中で、ひとつひとつ、被害の全体像を把握するためのピースを集めていった。
  • 地元の記者は津波に飲み込まれる前の町の様子を知っている。その町が無くなった事実を伝えたかった。
  • 被災者がどのような情報を求めているのか、考え続けた。
  • 紙の新聞にこだわらず、ウェブサイト、SNS、ツイッターなど、様々なツールを利用し、情報を発信し続けた。ブロガーにも協力を依頼した。SNSやツイッターで市民が必要としている情報を読者から直接集めた。新聞社のメディアが「紙の新聞だけ」というのは過去の話。市民と繋がるメディアを手にした。
  • 記者が作った物語ではなく、市民が語った物語を記録したいと考え、新聞では伝えきれない部分をブログに書くようになった。
  • 地元の新聞社が復興にどう関わっていけるのか考えていく。過去の震災から得られた教訓を生かしたい。

震災報道をつぶさに見てきて全国紙の記者


  • 別の取材があったため震災の取材には参加しなかった。しかしその分、新聞、テレビ、ネットで展開された震災報道を客観的に見ることができた。
  • 震災直後、取材現場はテクノロジーの限界に直面していた。電気が無いと取材は難しい。
  • ネットでは予定調和的なものをやぶる記事にアクセスが集まっていた。また、ツイッターでは「原発」や「節電」など当事者意識を持ち易い話題が比較的盛り上がっていた。
  • 震災から1カ月後、近畿地方の新聞の一面からは震災に関するニュースが殆ど無くなった。関東地方の新聞では震災のニュースではなく、原発のニュースが多くを占めていた。
  • 報道される被災地と報道されない被災地があった。市民は、伝えられる現場は知っているが、伝えられない現場は知らない。
  • 今回の震災報道では、被災地以外の人に被災地の様子を何とか伝えようと、ルポ風の記事が目についた。ルポでは書かれた人に納得してもらうことが大切になる。しかしアクセスを稼ぐことが優先されると、この視点が忘れられやすい。
  • 一人称ジャーナリズムは、しっかりとしたFACTやDATAが無ければ成り立たないのではないか。
  • 被災地以外の人に対する訴求力を高め、持続的に関心を持ってもらうにはどうすれば良いか考えたい。

なお、今回のワークショップからJCEJの運営に携わることになりました。

2011年5月7日土曜日

フェイスブックを利用した共同編集作業

少し時間が経ってしまいましたが、ボランティア情報ステーション(VIS)で実践していた、フェイスブックを利用した共同編集作業の枠組みをまとめておきます。「ネット上のサービスを利用した、離れた場所に居る人たちによる共同作業」を検討されている方のご参考としていただければ。

VISはボランティア情報をYahoo!ジャパンやsinsai.infoを始め複数のシステムにAPI経由で提供していますが、このボランティア情報は複数の情報ボランティアの手によって収集・管理(共同編集)されています。ここで、当初情報ボランティアに従事していたのが普段からインターネットを活用している学生だったこと(現在は神奈川災害ボランティアネットワーク)、無料で利用できること、そしてプロジェクトメンバ間の情報共有でも既に利用していたことから、ボランティア情報の共同編集作業においてもフェイスブックのグループ機能を採用しました。概要についてはVISのリーダー・藤代さん(@fujisiro)がITmediaに寄稿された記事をご参照ください。

Facebookで情報を共有 学生ボランティアが支えた活動 - ITmedia News

投稿機能を使い、ボランティア情報スレ、情報修正・確認スレ、掲載見送り・削除報告スレ、連絡事項、などを作成。ネットからボランティア情報を見つけると誰かが、一言とURLをコメントとしてボランティア情報スレに書き込み、データベースへの入力作業を行うと、いいね!ボタンを押す、といった具合だ。これだと、いいね!が押されている情報は処理済みだと分かり、重複が避けられる。Facebookを使うことでどの情報がデータベースに入力され、作業がどこまで進んでいるか可視化され、引継ぎもスムーズになった。

私たちは『ボランティア情報を「正確に」「分かり易く」「できるだけ効率的に」お届けする』ために、フェイスブックのグループ機能を利用したボランティア情報の共同編集作業を以下6つの作業単位(ユースケース)に分解し、それぞれワークフローを設計しました。

  1. 外部からの(ボランティア情報に関する)連絡を受け付ける
  2. (ボランティア)情報を収集する
  3. (ボランティア)情報を登録する
  4. (ボランティア情報の)登録状況を確認する
  5. 登録情報の品質を管理する
  6. 登録情報を修正する

これらのうち、「1.外部からの連絡を受け付ける」及び「4.登録状況を確認する」については、早い段階で学生ボランティアによる共同編集作業が終了したこともあり、実践には至りませんでしたが、残りの4つのワークフローについては、実践で鍛えられたものとなっています。以下にユースケース図、ワークフロー図、及び機能をまとめたクラス図を掲載しておきますので、「ネット上のサービスを利用した、離れた場所に居る人たちによる共同作業」ご検討の際にでもご活用ください。ワークフロー図では、どのタイミングでどのような機能を利用していたのかがわかるようにしていますが、不明な点などあればお気軽にご連絡ください。

(1) ユースケース図



(2) ワークフロー図





(3) クラス図



先週参加したネットスクエアード東京ミーティングでお聞きしたのですが、sinsai.infoではプロジェクトメンバ間の情報共有にはYammerを、共同編集作業のための情報共有にはLingrを、それぞれ利用しているようです。

2011年5月3日火曜日

ボランティア情報サービス開発ガイド

ボランティア情報ステーション(VIS)が募集しているボランティア情報を活用したサービスへの応募を検討されている開発者向けに情報をまとめてみました。少しでもお役立ていただければ幸いです。

基本情報#1 募集要項


募集要項は必ずご確認ください。優秀作品はAMNのギャラリーに掲載されるようです。


基本情報#2 ボランティア情報API


オリジナルはボランティア情報ステーションのAPIですが、Yahoo!ジャパンのご尽力により、5月3日現在、ボランティア情報APIは2種類となっています。特に拘りが無ければ、利用し易い方を選択してみてはいかがでしょうか。


基本情報#3 先発サービス


5月3日現在、ボランティア情報APIをご利用いただいているサイト(サービス)は以下の通りとなります。一度利用してみてはいかがでしょうか。


Androidアプリも1本、既にリリースされています。


5月4日にiPhoneアプリが1本リリースされました。(@kamatamadai さんより情報をご提供いただきました。ありがとうございました!)


ところでVISは専用のAPIによるボランティア情報の提供に力を入れており、現時点でYahoo!ジャパンをはじめgoo、MSN、@nifty、そしてsinsai.infoなどから利用されています。そこで真っ先に思うのは『既に錚々たる顔ぶれに利用してもらい、ボランティア情報もある程度露出しているのだから、もうこれ以上のサービスは不要なのではないか』といった疑問なのではないでしょうか。

この疑問については、現在提供されているサービスの特徴を考えれば解消されます。

今あるサービスはいずれも「ボランティア情報を探す」ことに重点を置かれています。現在のように多くの人の間で「ボランティアに参加しよう!」との機運が高まっているうちはそれで十分なのかもしれませんが(参加しようとする人は能動的に探しますから)、ひとたびこうした機運が薄れてくれば(確実に薄れます)、そもそも探そうとする人が少なくなる恐れがあります。これから求められるのは「長期に渡る継続的なボランティア活動」で、これを支えるには「ボランティア情報を探す」サービスだけでは十分ではないのです。

従って「長期に渡る継続的なボランティア活動」を支えることを考慮した、想像力豊かなウェブサービスなりスマートフォンアプリを、検討されてみてはいかがでしょか。例えば「ボランティア活動を続けたくなるような工夫が凝らされた」サービスは、とても有用だと思われます。

もちろん、「錚々たる顔ぶれ」に同じ土俵(「ボランティア情報を探す」)でチャレンジする、という選択もあるとは思いますが。

そして最後にもう一点。

VISが先日開催した開発者を対象としたボランティア情報APIの説明会において、経済産業省の方から国の取り組みについて説明がありました。未曾有の震災を機に、国が保有するデータのオープン化に向けて本格的に動きだしたようです。サービス開発者にとって、これは朗報となるのではないでしょうか。サービス性の高いアプリを開発するうえで使えたら嬉しい国の発表データについて、これまでは「国が発表している各種データのマッシュアップ利用」などは絵空事でしたが、これからは頼み込むことで可能になるかもしれません。必要に応じてデータのオープン化を国に働きかけてみてはいかがでしょうか。

なお、本説明会の詳細については以下のサイトをご確認ください。告知は開催二日前、そして微妙な時間帯での開催(金曜日の16時30分スタート)ではありましたが、企業や民間団体のエンジニアや個人参加のエンジニアだけでなく、広告会社、NPO/NGO団体などからも人が集まり、実に多彩な顔ぶれとなっていました。また、説明会後半には白熱した質疑応答が展開、参加者の関心の高さを感じる事もできました。


皆様も、是非。

2011年4月28日木曜日

メディアの本質を捉えるために

約15年ぶりに再読している『マクルーハン理論』が実に面白い。著者はカナダ出身の英文学者・マーシャル・マクルーハン氏で、既に死去されています。英文学者でありながらメディアやコミュニケーションにも精通し、生前は独自のメディア論を精力的に展開していました。氏が残したメディアに関する論文や書籍の内容は現代になっても陳腐化しておらず、今でも頻繁に参考文献として使われています。ユリイカの電子書籍特集でも言及されていましたね。メディアはテクノロジーとともに進化しているため、インターネットは言うに及ばず、パソコン通信すらなかった1960年ごろに提唱された理論が未だに継承されている、というのは驚きです。

マーシャル・マクルーハン - ウィキペディア


もともと英文学教授であったが、メディアに関する理論の方が彼を著名にした。あらゆる視点からの斬新なメディア論を展開。もともと英文学教授であったが、メディアに関する理論の方が彼を著名にした。あらゆる視点からの斬新なメディア論を展開。

「メディアはメッセージである」という主張。普通、メディアとは「媒体」を表すが、その時私たちはメディアによる情報伝達の内容に注目する。しかし、彼はメディアそれ自体がある種のメッセージ(情報、命令のような)を既に含んでいると主張した。

テクノロジーやメディアは人間の身体の「拡張」であるとの主張。自動車や自転車は足の拡張、ラジオは耳の拡張であるというように、あるテクノロジーやメディア(媒体)は身体の特定の部分を「拡張」する。しかし、単純に拡張だけが行われるのではなく、「拡張」された必然的帰結として衰退し「切断」を伴う。

マクルーハン氏のメディア論を読み解くにはメディアに関する背景知識がある程度必要で、また、難解な部分も多々あるため、これを消化するのはなかなか難しいと思われます。しかし、とても示唆に富んでおり、メディアの本質を理解する上でかなり役立つのではないでしょうか。

『マクルーハン理論』には例えば次のような言及があります。自分自身、まだまだ消化しきれていない部分があるため、分かり難い表記・不明確な表記、及び要約と抜粋が混じっている点にについてはご容赦ください。

  • メディア(メディアに内包されているコンテンツではなく、メディアそのもの)は人間に多大な影響を与える。成長過程において接触してたメディアの違いで、考え方や物の見方、情報処理の方法が全く変わってくる(つまり、書籍世代、新聞世代、ラジオ世代、映画世代、テレビ世代、雑誌世代、ネット世代、ケータイ世代、ソーシャルメディア世代で考え方が異なるのは必然)
  • 新しいテクノロジーはすべての人の感覚生活を完全に変える。そしてわれわれの仕事の多くは人々の感覚生活のプログラムを再編すること、すなわち新しいテクノロジーを生活に組み込むことといえる。教育の仕事は「教えること」ではなく「生活の時間を節約すること」であり、医者の仕事は「人を治療すること」ではなく「患者が自分で治すよりもはるかに速やかに治るようにしてやること」なのである。
  • 『新聞も含めてすべての新しいメディアは、詩と同じように、それ自身の仮定を人に押しつける力をもった芸術形式である。新しいメディアは、われわれを古い「リアルな」世界に関連づける手段となるものではない。それ自身がリアルな世界なのである。それは残っている古い世界を意のままに再編成するのである。』【P97】
  • 『「あなたの本当のお仕事はなんですか」とテレビ会社に質問するとすれば、その答えは次のようでなくてはならないだろう―-「われわれの仕事は、北アメリカの人びとの感覚を再編成し、ものの見方、体験を全体的に変えることである」。』【P122】
  • 『今日、消費者は商品からではなく、広告から満足を得ているので、広告は商品のかわりとなりつつあるのである。これは事態のほんの始まりにすぎない。今後ますます人間生活の満足と意味は、生産された商品からではなくて、広告から得られるようになるだろう。』【P144】

また、テレビまでの各メディア、そして当時の状況について次のように言及されています。

聴覚的空間への回帰 (P103)


グーテンベルクは全歴史を同時的なものにした。持ち運びのできる書物は、死者の世界を紳士の書斎の空間にもちこんだ。電信は全世界を労働者の朝食のテーブルにもちこんだ。

写真は透視法の絵画と固定した目の機械化である。それは印刷物がつくり出した国家主義的な自国語の空間の境界を破った。印刷物は口でしゃべるスピーチと書かれたスピーチとのバランスをこわした。写真は耳と目のバランスをこわした。

電話と蓄音機とラジオは、文字教養獲得後の聴覚的空間の機械化である。ラジオはわれわれを心の闇につれもどし、火星の侵略とオーソン・ウェルズにひきつけたのである。それは音の空間であるところの孤独という井戸を機械化する。拡声器に接続された人間の心臓の鼓動は、だれでも溺れることのできる孤独の井戸を提供してくれる。

映画とテレビが人間の感覚領域の機械化の周囲を完結される。偏在する耳と動きまわる目をもつことによってわれわれは、西欧文明のダイナミズムを確立した専門化した聴覚的・視覚的メタファであるところの書字法をなくしてしまったのである。

書くことを超えることによってわれわれは、一国あるいは一文化のではなく、宇宙の、地球の全体性を再び獲得したのである。われわれは高度に文明化した準原始的な人間を喚起したのである。

しかし、いまだにだれも新しいテクノロジー文化に内在する言語を知らない。われわれは新しい状況に対しては目も見えなければ耳も聞こえない。われわれにいかにも説得的な言葉や思想も、現在ではなく、かつて実在したものについて語っているのであり、われわれを裏切るものである。

われわれは聴覚的空間に戻ったのである。われわれは三千年の文字教養の歴史によって引き離された原初の感情と情緒を、再び自分のものにしはじめているのである。

「手は流すべき涙をもたない」

ネットやケータイ、そしてソーシャルメディアが登場したのは、マクルーハン氏が死去された後であり、当然これらについては言及されていません。しかし、氏のメディア論は、これらの新たなメディアが人間に与える影響を理解する手助けになるのではないかと考えています。

また、現在私はいくつかのネットメディアの構築・運営に携わっていますが、それらメディアをより良くするにはどうすれば良いか、その方法を考えるうえでも、マクルーハン氏のメディア論は大きなヒントになるのではないかと考えています。

2011年4月20日水曜日

被災者に寄り添い続けるために、報道メディアができること

東日本大震災の「非」被災者ができることについて、先日参加したセミナー『私たちに今、できること~岩手県陸前高田市からの報告~【NPO3団体合同報告会4/18】』で、NPO法人テラ・ルネッサンスの鬼丸氏は次のように仰っていました。

非被災者は被災者(当事者)には決して成り得えません。
無理して当事者になろうとせず、非被災者にしかできないことをやりましょう。
そしてそれは、被災者に寄り添い続けることです。

ここにある「寄り添う」には「募金する」「ボランティアに参加する」などの行動が含まれており、被災者にできることは「募金を続けること」あるいは「ボランティアに参加し続けること」ということになります。今だけでなく、これからも続けること。今回の震災は未曾有の被害を出しており、未だ復興段階に入っていない地域も多く、復旧・復興には十年単位の期間を要するとの試算も出ている中で、「寄り添い続ける」のは本当に大切なことだと、私も感じています。

しかし、今のままで続けられるでしょうか。

被災者に寄り添う行動を起こすには、そもそも何らかの問題意識が不可欠です。「家が流された方やご家族を無くされた方など、困難な状況におられる方がいる。自分にも何かできないだろうか」そうした問題意識が、行動の源泉となります。しかし、残念ながら多くの人は(もちろん私も含め)、よほど強い意志や使命感を持たれている人でない限り、この問題意識は、せっかく抱いたにも関わらず、時とともに薄れていきます。「時間が経過すれば、被災者・被災地のことが忘れされる」という危機感は、私が参加していた助けあいジャパン/ボランティア情報ステーションにもありました。実際、被災地から離れた地域には「東日本大震災は既に終わったこと」として扱われているところもある、と聞いています。震災からの復旧・復興には様々な活動があるはずで、たとえ今は何もやれない人でも、近い将来何かしら「出来る事」が必ず出てくるはずです。しかし、そうした「出来る事」が出てきたときに問題意識が薄れていては、結局何もやれません。人は忘れやすく、問題意識を持ち続けることは根源的に難しい。

私はここに(こそ)報道メディアにできることがあるのではないかと考えています。

問題意識を持ち続けるために必要なのは、「継続的に問題を認知した上で共感・関与する」こと。そして良質な報道メディアであれば、これを促進させることができるのではないかと、そう考えています。

しかし、残念ながら既存報道メディアの軸足は「認知(というよりも情報を上から下にドカン)」にあり、「共感・関与」への意識が低く、私たちが問題意識を持ち続けるためには力不足なのも事実です(これこそが報道メディアの「使命」だとは思うのですが)。

こうなれば、「問題の認知」だけでなく「問題への共感・関与」への道筋を開くような新たな報道メディアが、もうそろそろ出てくるしかない。

これからの報道メディアについて考えるきっかけとなる4冊

少し前の社内読書会で私が紹介した「これからの報道メディアについて考えるきっかけとなりそうな書籍」をここにも掲載しておきます。どれも比較的著名な書籍で既読の方も多いとは思いますが、読み易いものをセレクトしていますので、もし未読のものがあれば是非ご一読を。同業(マスコミの情シス担当)の方向けですが、それ以外の方でも十分楽しめると思います。

まずは報道メディアの現状を把握するための書籍をご紹介。国内・海外それぞれ1冊ずつセレクトしました。これらを読むことで、国内・海外の報道メディアやそれを運営するマスコミ業界が抱えている問題とその原因、そしてそれらの問題を解決しなければならない理由が少しずつ見えてきます。


マスコミ業界の問題については多くの方が言及されており、また、人によって見方も異なるため、考えを偏らせないためにもできるだけ多くの書籍を読まれた方が良いと思います。個人的には、マスコミ業界全体が抱える構造的な問題が丁寧に解説されている長谷川幸洋氏による『日本国の正体』や、マスコミ業界の凋落について鋭く指摘されている三橋貴明氏による『マスゴミ崩壊』などもお勧めです。

ここまでにご紹介した書籍は「報道する側」の問題を把握するためのものでしたが、続いてご紹介するのは、「問題を抱えた報道メディアを利用する側(情報の受け手)」へのメッセージとなるような書籍となります。こちらも国内・海外から各1冊ずつセレクトしました。いずれも本ブログで過去にご紹介したものです。


これらを読み進めるなかで、何故私たちがメディアリテラシを高めなければならないのか、その理由が見えてきます。メディアリテラシに関する書籍としては、他にも菅谷明子氏による『メディア・リテラシー』、谷岡一郎氏による『「社会調査」のウソ』、そして田村秀氏による『データの罠』などもお勧めですが、まずは上記2冊をご一読されてみてはいかがでしょうか。

2011年4月8日金曜日

「情報が、それを必要としている人に届いていない」に挑む

先日本ブログでご紹介した助けあいジャパン/ボランティア情報ステーション(以下VIS:Volunteer Information Station)では、「ボランティアに参加したいと考えている人に対して、正確で分かり易いボランティア情報を、的確にお届けする」ことをミッションとしていますが、この背景には「ボランティア情報が、それを必要としている人に届いていない」という問題意識がありました。ここではこの問題意識に対するVISの取り組みについてご紹介します。被災者向けのウェブサイト・サービスを運営されている方々のご参考になれば幸いです。

ボランティア情報に限った話ではありませんが、ITジャーナリストの佐々木俊尚氏や、mixbeat/smashmediaの河野武氏も同様の問題を指摘されています。

■ 佐々木俊尚氏 / いまIT業界に求められていること - CNET Japan


[いまの問題点]
  1. 同時に複数できあがってきている被災地支援ウェブサイトの間で、情報が分散されてしまっている。
  2. 被災地のアナログ情報がうまく取り込めていない。
  3. せっかく収集・整理した情報が被災地に送り届けられていない。

■ 河野武氏 / この震災とソーシャルメディア - smashmedia


ネットのアーカイブ性という強みはそこにいつでもアクセスできるからこそ恩恵を受けれるわけで、現在の被災地ではなかなかそういうわけにもいかない以上、どうやってアナログな情報に変換するか(具体的には大きな紙に印刷して掲示することで同等のアーカイブ性を担保する)、また現地のアナログな情報をデジタルに変換するかの部分に知恵と工夫と人力が求められている。

すなわち、デジタル・アナログ問わず「情報が分散してしまっている(一か所に集約されていない)」「情報の出し方が、受け方に合っていない」ために、「情報が、それを必要としている人に届いていない」のが現状、という見方です。

これはボランティア情報にも当てはまります。ボランティア情報は通常、都道府県・市区町村や社会福祉協議会のHP、あるいは企業やNPO/NGO団体のHPに分散して掲載されていたり、そもそもインターネット上に無い、あるいはデジタル化されていないケースも多々あります。ボランティア情報をまとめるウェブサイトは散見されてますが、網羅的なものは残念ながら存在していません。また、ボランティア情報が分散されたままでは、ボランティアを募集する団体の情報発信力の違いがそのまま応募人数の違いとなってしまいます。激甚災害に見舞われた地域では今後特にボランティアが必要となるはずですが、震災の影響で情報発信力も落ちているため、ボランティアを募集したとしても、その情報がボランティア希望者に届かなくなる、といった懸念が当然残ってしまいます。

こうした状況に対応するため、VISは以下の2つの方針を運営戦略の柱としています。

  1. 情報発信力を高める
    ボランティア情報を集約したうえで外部から参照できるようにし、より多くのプラットフォーム(有力ポータルサイトやスマートフォンアプリなど)からボランティア情報を閲覧できるようにする
  2. 情報収集力を高める
    ボランティア情報登録のハードルを低くしたうえでより多くの人にボランティア情報を登録してもらうようにし、アナログ情報も極力拾えるような体制を整備する

VISは発足当初、ボランティア情報を発信するためのウェブサイトを自分達で運営していました。しかしこのウェブサイトだけでは「ボランティア情報が、それを必要としている人に届いていない」といった状況を打破することはできないと考え、早い段階で情報のDB化に着手し、強力な情報発信力を持つウェブサイトで利用してもらうような体制作りを勧めました。そして多くの方々のご尽力の結果、VISで管理しているボランティア情報は、現在までにYahoo! JAPAN、Gooといったポータルサイトや震災関連情報のまとめサイトsinsai.infoの他、Androidアプリでも検索・閲覧できるようになり、より多くのボランティア参加を希望する方々にお届けできるようになりました。


またその一方で、ボランティア情報の入力を、様々な団体にお願いさせていただき、その輪は徐々に広がりを見せています。ボランティア情報は今後益々増えることが予想されるため、「ボランティア情報を漏れなく集約する」ためにもこうした活動は重要になってきます。


私は既に一線を退きましたが、VISは今、マッシュアップサイトの拡充やiPhone/iPadアプリへの展開などを視野に入れながら、最終的にはボランティア情報の出し手がボランティア情報を直接仕組に登録できるような体制を実現させるべく、活動を続けています。

2011年4月7日木曜日

被災した犬猫のために支援物資を (ご報告と2次募集のお知らせ)

1週間ほど前にご協力をお願いさせていただいた東北大震災で被災した犬猫のための支援物資ですが、本日までにご送付いただいた分につきまして、現地への発送を完了致しました。支援物資をお送りいただいた皆様、そして情報を広げていただいた皆様、本当にありがとうございました。

支援物資の募集は4月7日で一旦区切らせていただきましたが、まだまだ物資が足りないことがわかり、再度募集を開始することとなりました。支援物資として集めているのは以下の通りです。

  1. ケージ (※程度が良ければ中古でも可)
  2. 屋根付きサークル (※程度が良ければ中古でも可)
  3. キャリー (※程度が良ければ中古でも可)
  4. 首輪 (※程度が良ければ中古でも可)
  5. ハーネス (※程度が良ければ中古でも可)
  6. リード (※程度が良ければ中古でも可)
  7. ドックフード
  8. キャットフード
  9. 食器
  10. トイレシーツ
  11. 猫用トイレ砂
  12. 毛布
  13. タオル
  14. 迷子札
  15. 消臭剤
  16. 水のいらないシャンプー
  17. ブラシ
  18. ブルーシート
  19. 携帯カイロ
  20. マスク

支援物資の送付方法や送付先など、詳細については以下のメールアドレスまでご連絡をお願いします。

■ ミヌマさん
[メールアドレス] monica-sinc1997[at]docomo.ne.jp (※[at]を@にしてメールをご送信ください)
※メールのタイトルは「支援物資の件」でお願いします

是非よろしくお願いします(前回の救援物資の募集記事はこちら)。

救援物資の話とは異なりますが、救助犬も懸命に活動しているようです。


負けてはいられませんね。頑張りましょう。

2011年4月4日月曜日

ボランティアの需給ギャップを埋める活動

昨日、震災直後から約3週間ほどお手伝いさせていただいた「助け合いジャパン/ボランティア情報ステーション(以下VIS:Volunteer Information Station)」での私の活動が一段落しました。VISは「ボランティアの需給ギャップを埋めること」を目指し、「ボランティアに参加したいと考えている人に対して、正確で分かり易いボランティア情報を、的確にお届けする」ために、現在も活動を続けています。最近になってその活動はいくつかのメディアでも取り上げられ始めていますが、本ブログではプロジェクト参加者の立場から、VISの活動について少しずつご紹介していきたいと思います。

阪神・淡路大震災新潟県中越地震のときもそうでしたが、震災からの復興活動は震災直後に始まるわけではなく、その前に人命救助や仮設住宅の建設、救援物資の配布といった「救援」という段階を踏みます。復興活動は、救援活動がある程度収束し、震災による被害の全体像が把握できた段階から順次始まります。そして通常、救援活動は1~2週間程度で収束します。

  • 震災直後は自衛隊や消防隊、救援活動の専門家を擁するNGO/NPOが主体となり、救援活動が行われる。活動期間は1~2週間程度
  • 救援活動が収束した後に、地元市民や行政、市民ボランティアが主体となり、復興活動が行われる

しかし今回の震災による被害はあまりにも大規模かつ広範囲に及ぶため、震災から3週間以上経った今でもまだ救援活動が行われています。被害の全体像も不明瞭なままです。そしてそのために、ボランティア活動も本格化できていません。新聞やテレビで報道されている震災被害の様子にいたたまれなくなり、「ボランティアに参加したい」という感情が多くの人に芽生えましたが(私もその一人です)、その気持ちに応えられるようなボランティア活動が未だ無いのが現状です。

そうこうしているうちに、「ボランティアに参加したい」という気持ちが薄まってしまうのではないか、本当にボランティアが必要とされたときに、ボランティアに参加したいと考えている人が減ってしまうのではないか、そういう危機感が、VISのリーダー藤代さんにはありました。そしてこの危機感に共鳴した人たちが集まって立ちあがったのがVISの前身である「ボランティア情報まとめプロジェクト」なのです。

藤代さんの考えは(恐らく)次のようなものです。

激甚災害に見舞われた地域の救援活動は長引く(復興活動が始まるまで時間がかかる)。しかしその一方で激甚災害ほどではないが甚大な被害に見舞われた地域も存在し、そこでは早い段階から復興活動が始まる。すなわち、本当にボランティアが必要とされる場所は随時変わる。その変化を的確にボランティア参加希望者にお伝えすることができれば、「ボランティアに参加したい」という想いを切らすことなく、日本全体でボランティア活動を細く長く続けられるのではないか。

従ってVIS発足当初(当時は「ボランティア情報まとめプロジェクト」)は、「地元でできる身近なボランティア」の情報を集め、それらをネット経由でより多くの人たちに、正確かつタイムリーにお届けるすることに全力を傾けていました。

なお、VISの活動については、藤代さんのブログ、藤代さんが中心となって活動しているJCEJのブログ、及び各種ウェブメディアに掲載されている記事も是非ご参照ください。


さて、VISの活動方針「ボランティアの需給ギャップを埋める」は発足以来変わっていませんが、活動内容は状況の変化とともに、ダイナミックに変わっていきました。次回はその辺りについてご紹介したいと思います。

2011年4月1日金曜日

被災した犬猫のために支援物資を

現在、犬猫の殺処分ゼロを目指しているボランティア団体「ちばわん」でボランティア活動している友達が、東北太平洋沖大震災に被災した犬猫のための支援物資を集めています。もしよろしければご協力をお願いします。

支援物資はちばわんでも集めているのですが、連絡が殺到しており、対応が追いついていないようです。この度は受付窓口を分散するための措置、ということになります。

被災者にとっても、ペットの存在は大きい。

支援物資の仕分け始めました。 - 届け!被災地の犬や猫たちへ!(ちばわん支援ブログ)


被災地域はいまも厳しい寒さが続いています。
被害の大きかった沿岸地域や避難勧告の出ている原発付近にいる犬や猫、そして多くの動物たち、飢えと寒さで体力も限界だと思います。
多数の保護団体・愛護団体がレスキューに入っていますが、通行規制や立ち入り禁止などの箇所が多いため捜索・保護が思うようにできません。
それでも一匹でも救えればと必死に捜索しているボランティアさんがたくさんいます。

必死に愛犬を探す飼い主さんも多くいます。
テレビでも放送していましたが、地震の際、津波から逃げていたおばあさんと愛犬の柴犬が奇跡的に再会できたそうです。
逃げる途中で津波に追いつかれ、おばあさんは近くにあった柵に必死に掴まり津波から身を守ることができたそうですが、愛犬はあっという間に津波にのみこまれたそうです。
それでも助かった愛犬との再会に
「家も何もなくしたけど、この仔がいてくれるだけで生きていける」
そう嬉しそうに語っていた姿が忘れられません。

あなたの大切な家族との再会をみんなが願っています。
どうか諦めずにいてください。

被災ペットについては、この記事が参考になるかと思います。


ということで、友達が支援物資として集めているのは以下の通りです。

  1. ケージ (※程度が良ければ中古でも可)
  2. 屋根付きサークル (※程度が良ければ中古でも可)
  3. キャリー (※程度が良ければ中古でも可)
  4. 首輪 (※程度が良ければ中古でも可)
  5. ハーネス (※程度が良ければ中古でも可)
  6. リード (※程度が良ければ中古でも可)
  7. ドックフード
  8. キャットフード
  9. 食器
  10. トイレシーツ
  11. 猫用トイレ砂
  12. 毛布
  13. タオル
  14. 迷子札
  15. 消臭剤
  16. 水のいらないシャンプー
  17. ブラシ
  18. ブルーシート
  19. 携帯カイロ
  20. マスク

支援物資の送付方法や送付先など、詳細については以下のメールアドレスまでご連絡をお願いします。

■ ミヌマさん
[メールアドレス] monica-sinc1997[at]docomo.ne.jp (※[at]を@にしてメールをご送信ください)
※メールのタイトルは「支援物資の件」でお願いします
※物資集約拠点からの配送の都合上、4月7日葛飾区必着でお願いします (4月4日追記)

ミヌマさんとは10年来の友達で、葛飾区でペットサロン「モニカ」を経営しており、十分信頼できます。ご賛同いただける方は、是非よろしくお願いします。

2011年3月20日日曜日

今の私に、今、できること

東北地方太平洋沖地震から1週間が経ちました。

津波が襲った地域の被害はあまりに甚大で、我々のような一般人が今直ぐ現地へ赴き何かをやれる状況にはありません。どれほど現地に行きたくとも、まだその時ではないようです。行けば、命を落としかねない。それほど過酷な状況だと、私は聞きました。今はただ、自衛隊などのプロに任せましょう。

私は今、多くの有志たちととともに、災害ボランティア情報のまとめサイトを立ち上げ、運営しています。


ここには、現地に行かなくても「今の自分にやれること」が続々と集まってきています。

「今直ぐ、何かをやりたい」

そう強く思っている方、是非一度このサイトを訪れてみてください。

被災地は、津波を襲った地域だけではありません。
今直ぐにあなたの力を必要としている人は、本当にたくさんいらっしゃいます。

一人ひとり、やれることはあります。
一人では小さな力でも、結集することで、それは大きな力になるはずです。

もしご賛同いただけるようであれば、このサイトを広めることにご協力いただけるだけでも嬉しい。

私は震災直後から、自分に今何ができるのか、それをずっと考えていました。
新聞やテレビ、インターネットから伝わってくる被災地の様子は圧倒的で、私はずっと無力感にさいなまれていました。

しかし、悩んでばかりいても仕方が無い。

これが、今の私に、今、できること。

2011年3月14日月曜日

東北地方太平洋沖地震に関する情報サービスまとめ (第2版) #jishin

地震に関する情報源を目的別に再編集しました。あまりにも多くの情報が飛び交っているため、読み物を中心にかなり厳選しています。目的に合わせてご活用ください。携帯電話(ガラケー/ケータイ)からも利用可能なサイトについては【携帯可】とし、合わせてURLを張り付けているので、適宜ご利用ください。

なお、今後は第1版については今後は更新せず、本記事を更新するようにします。

■ 安否を確認する



■ 原発の状況を把握する



■ 被災地で生活情報を確認する



■ 首都圏でできることを確認する


  1. 冷静に行動する
  2. 首都圏への影響を確認する
  3. 節電する
  4. 被災者を支援する
  5. 地震に備える

■ 今、何が起きているのかを把握する (震災情報まとめサイト)



■ 今、何が起きているのかを把握する (リアルタイム情報)



■ 被災状況を把握する (報道写真/動画)


2011年3月12日土曜日

今、メディアリテラシが試される

地震関連の様々な情報が大量に流通している今、私達のメディアリテラシも試されているのかもしれません。


冷静に、行動したい。

2011年3月11日金曜日

東北地方太平洋沖地震に関する情報サービスまとめ #jishin

※[2011/03/14]「東北地方太平洋沖地震に関する情報サービス」を別の記事にまとめなおしました

仕事柄、地震関連の情報源を集めています。信頼できそうなものについて、ここにまとめておきます。随時更新していきます。

■ 地震関連情報の発信元



■ 地震関連情報の発信元 (リアルタイム情報)



■ 地震関連情報の発信元 (地域別)



■ 地震関連情報の発信元 (音声・動画)




■ 地震関連情報の発信元 (英語)



■ 便利サイト




■ 応援・募金



2011年1月14日金曜日

自分を知り、お互いを知る

少々報告が遅くなってしまいましたが、1月10日に毎月恒例のmixbeatワークショップに参加してきました。今回のワークショップのテーマは「mixbeatの多様性を実感する」「相対評価の手法を実践し、考え方を学ぶ」の2つで、「塾生間、塾生・スタッフ間の交流を深めるためのきっかけ作り」も意識した設計となっていました。当日のアクティビティは次の2種類です。

  • [午前の部] 当てられたら負け!チーム対抗・アナタのクイズ大会
  • [午後の部] mixbeatのポジショニングマップを書いてみよう!

通常のワークショップは現役の塾生が主催するのですが、今回は新春特別企画ということで、スタッフ(藤田さん)と卒業生(サヨ)による主催で執り行われました。以下、当日の様子とともに、ワークショップの内容をご紹介します。

午前の部はクイズ大会。



事前に参加者全員が一人3問づつ自分にまつわる問題をつくっておき、当日はこれを使って4チームによるチーム対抗のトーナメント制クイズ合戦を実施しました。ゲームルールについては後述するmixbeat活動ブログを参照してみてください。ちなみに私が用意したクイズは以下の3つです。わかりますか?(答えは本エントリの最下部に)





まずは各チームに分かれて作戦会議。問題を提示する順序を決めます。



そして合戦。私が所属したチームは1回戦でからくも塾長が所属するチームを打ち破り、なんとか決勝に進出したのですが残念ながらここで敗戦。決勝戦で出された問題は一問も当てられませんでした。優勝賞品のmixbeat特製タンブラーには手が届かず…



午前の部はここで終了。みんなが用意したクイズはどれも難問ではありましたが(ほとんど分からず)、それぞれの個性が出ていてなかなか面白いものばかりでした。「交流を深めるきっかけ」にはなりそうです。

ランチタイム後の午後の部では、「ポジショニングマップ」というものを作成しました。ポジショニングマップはもともと経営戦略の立案時に自社のポジションや自社製品のターゲットなどを、他社のポジションや他者製品のターゲットと比較し、相対的な立ち位置を把握するために作成するものなのですが、これを人間関係に応用して「(mixbeatにおける)自分のポジションを相対的に把握してみよう」という試みです。



サイコロトークで人となりを把握したうえで、ポジショニングマップを作成します。ここで利用する軸は「ひとの特性」となるのですが、「プラスの言葉⇔反対の意味のプラスの言葉」のセットとなるように意識することがポイントです。また、「身体特性」(背が高い、太いなど)や「身体能力」(足が速い、泳げる)に関する言葉も使わないようにします。



「自分が周りからどのように見られているか」を客観的に知るとともに、「自分の相対的なポジションを把握する」ことの訓練にもなります。もちろん、みんなのことをより深く知るきっかけにもなりました。なお、このアクティビティの出所は『図解 自分のポジショニングのみつけ方』という本のようです。

ポジショニングマップという平面上で表すことにより、「AはBよりも優秀である」といった議論はなくなる。ポジショニングマップは、一つの項目の優劣ではなく、全ての項目を考慮した相対的内地関係を見るためのものだからである。

私はmixbeatに入塾してから「自己を相対化すること」を意識するようになったのですが、午後のアクティビティは「自己の相対化」に繋げていけるのではないかと感じました。相対化については塾長のブログエントリが大いに参考になると思います。


最後に当番のまとめスライドを掲載しておきます。





ワークショップの詳細については、mixbeat活動報告ブログ、及び塾長のブログのエントリをご参照ください。


mixbeatの目的は、性別・世代、背景、価値観の異なる様々な人が集まり、「知識の共有、経験の共有、人脈の共有」を通して、「信頼できるネットワーク作り」を目指す、というもので、これを達成するには塾生間、塾生・スタッフ間で信頼関係を築かなければなりません。そしてその前提として、お互いをより深く知り合う必要があります。今回のワークショップにはこの「お互いをより深く知りあう」ための様々な趣向が凝らされていたこともあり、私にとっては収穫の多い、とても充実したものとなりました。

そしていよいよ3期生のmixbeatワークショップも残すところあと5回。これからが佳境なのですが、一方でそろそろ4期生の応募を始めると思います。もしご興味のある方はお知らせメールにご登録を。活動は結構ハードなときもありますが、その分、本当に多くの事を学べると思いますよ。愉快な仲間もたくさん居ます。



※クイズの答え:①ドイツ / ② 柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺 / ① 1975年

2011年1月7日金曜日

2011年の抱負

少々遅くなってしまいましたが、本年もよろしくお願い致します。

従来メディア企業のビジネスモデルが立ち行かなくなりつつあるなか、去年は1年間「メディア企業の持続可能なビジネスモデル」そして「報道メディアのあるべき姿」について考え続けていました。残念ながら未だにその答えは見つかってはいません。しかし、考えてばかりでは前へは進めず、今年からは少しずつ「行動」に軸足を移していきたいと考えています。また、メディアで働いている、そしてより良いメディアを創りたいと考えている以上、これからももっと「伝えること」について前のめりに考えて行きたいと思います。

自分ひとりでは、たいしたことは出来ない。去年はそのことを思い知らされた一年となりました。

今年は、これからのメディアについて、そして伝えることについて、色々な方々と一緒に考えていければ嬉しい限りです。