「GoToVote!(選挙へいこう!)」はケニアで来年実施される大統領選に向けてケニア国内の有権者登録できる場所を検索するためのサービスで、アフリカにおけるジャーナリズムの発展を推進する団体African Media Initiativeと世界銀行が共催する「Code4Kenyaプロジェクト」が構築しました。サービス公開後数時間で約2500人が利用し、そのまま有権者登録をしに行った(=成果を出した)、とのことです。
「2人、24時間、500ドル未満」で作られたGoToVote!は、そのコストに見合い、機能も仕組も非常にシンプルなサービスです(構成は「Twitter Bootstrap」+「オリジナルのJavaScriptプログラム」+「JSON化した有権者登録場所のデータ」。ソースコードはGithubで公開されています)。何の新規性もなく、技術的にも何も学ぶものはありません。また、「オープンデータを活用」といっても、PDFファイルとして公開されていたドキュメントから投票所のデータを取り出した程度のことです。
にもかかわらず注目されているのは、「データジャーナリズムはカネと時間がかかる」「データジャーナリズムには超絶スキルが必要だ」といった風潮(アメリカ大統領選で大手メディアが展開したデータジャーナリズムプロジェクトはどれもリッチなものでした)に一石を投じ、「熱意とビジョン、そして適切なスキルさえあれば、良質なデータジャーナリズムは実践できる」ことを証明したからにほかなりません。
ケニアでは有権者登録されていないと選挙で投票できないため「事前の有権者登録」はとても重要、にもかかわらず政府からの公布が分かり難くくこのままでは投票率があがらないのではないか、との問題意識が発端となり、GoToVote!は構築されました。つまり、まず目的(投票率を上げる)があって、その手段として「データジャーナリズム」がつかわれたにすぎません。そしてここが重要なポイントです。
手段が目的化してしまうと、「誰のためのデータジャーナリズムか」が曖昧になり、単なるサービス開発競争に陥ることになりかねない、ということは、これからも忘れないようにしておきたいところです。
ちなみに「Code4Kenyaプロジェクト」には「データを活用してジャーナリストに変革をもたらす」という設立理念があるようで、こうした下地があったからこそGoToVote!のようなサービスが生まれたのかもしれません。
最後に、冒頭でご紹介した記事に記載されている、GoToVote!から得られたオープンデータを活用したデータジャーナリズムプロジェクトに関する教訓をまとめておきます。
- オープンデータを活用したプロジェクトは、高価である必要は必ずしもない
- オープンデータを活用したプロジェクトは、大きな規模である必要は必ずしもない
- オープンデータを活用したプロジェクトは、時間を掛ける必要は必ずしもない
- オープンデータの活用はさほど複雑なことではなく、アイディア次第でシンプルかつ強力なサービスを提供できる
- オープンデータは必ずしも「利用し易い形態で」提供されているわけではない
- オープンデータは市民の役に立ってこそ、最大の価値がある