本書の趣旨は「いまの正義とは何か」について考えることですが、著者は現在のように多様化が進んだ世界では、単一の考え方、単一の哲学理論で正義を判断するのは難しいとしています。そして、だからこそオープンに、タブーを乗り越えて議論をする必要があり、議論を重ねることではじめて公正な社会を作ることができると論じています。
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公正な社会は、ただ効用を最大化したり選択の自由を保証したりするだけでは、達成できない。公正な社会を達成するためには、善良な生活の意味をわれわれがともに考え、避けられない不一致を受け入れられる公共の文化をつくりださなくてはいけない。
所得、権力、機会などの分配の仕方を、それ一つですべて正当化できるような原理あるいは手続きを、つい探したくなるものだ。そのような原理を発見できれば、善良な生活をめぐる議論で必ず生じる混乱や争いを避けられるだろう。
だが、そうした議論を避けるのは不可能だ。正義にはどうして判断がかかわってくる。(中略)正義の問題は、名誉や美徳、誇りや承認について対立するさまざまな概念と密接に関係している。正義は、ものごとを分配する正しい方法にかかわるだけではない。ものごとを評価する正しい方法にもかかわるのだ。
公正な社会を築いていくには、我々一般市民がもっと政治に興味を持ち、意見を発信していく必要があるかもしれません。本書については@SeaSkyWindさんによるブログ記事が大いに参考になると思います。
本書を読み終えて、純粋に哲学が面白くなってきました。まずは本書で触れられているカント、ベンサム、ロールズ、アリストテレスなどの本を読んでみたいですね。個人的にはカント、ロールズに強い興味を抱くようになりました。お勧めの本があれば、是非教えてください。
最後に、読みながらふと浮かんだ疑問。
日本の政治家は、自分の政治哲学を持っているのだろうか?