少し古い(2010年4月)Mashableの記事「How Journalists are Using Social Media for Real Results / ジャーナリストによるソーシャルメディアの利用法」に、米国のジャーナリストによるソーシャルメディア利活用事例が用途別に紹介されています。
以下、各用途の概要を簡単にご紹介します。意訳している部分、省いている部分が多々ありますので、正確な情報を知りたい方は原文を参照してください。
[用途1] 情報/トレンドのフィルタ
ネット上には今こうしている間にも様々なトピックに関する大量の情報が同時多発的に次々とアップされており、ジャーナリストがネットからニュースとなりそうな情報やトレンドを切り出すのはとても困難な作業だ。ここでツイッターやフェースブックなどのソーシャルメディアの出番となる。ソーシャルメディアを情報フィルタとして巧く活用した事例を紹介しよう。
Pairate Cat Radio のDJ、Aaron Lazenby はある夜ツイッター上で #iranelection というハッシュタグ(ツイッター上のトレンド)を見つけた。興味を覚えた Lazenby はツイッター上で取材を開始、この動きをCNNがキャッチし、世界中にイランの選挙に関するニュースが広がることとなった。
USA TODAY の Brian Dresher はツイッターをニュースの情報源として捉え、これまで数々の実績を重ねてきた。そして今ではツイッターから情報をキャッチするためのスキルを社内のジャーナリストに教育している。彼は、ジャーナリストはツイッターからリアルタイムにトレンドを掴み、さらに情報を発信している人に対する取材を通して、そのトレンドを深堀りしていくことができる、としている。
[用途2] 情報源へのコンタクト
いつの時代も適切な情報源(一次情報の発信者)に辿りつくのは非常に難しいが、フェースブックはこの作業を少し楽にしてくれる。フェースブックには四億人以上の個人情報が登録されており、名前や職業などをキーに検索でき、さらに写真などをもとに特定の個人情報の確認も可能だからだ。
シカゴの新聞 RedEye の記者 Tracy Swartz は輸送システムに関する記事を執筆する際、フェースブックでバスの運転手を探し出し、直接取材することに成功した。The Associated Press の Lauren McCullough もフェースブックを情報源へのコンタクトツールとして利用している。彼女はフェースブックからニュースとなりそうな情報を入手し、さらにその情報源となっている人物にコンタクトを取っている。
[用途3] クラウドソーシング
ソーシャルメディアは、単一の事象に関する不特定多数の人から情報を集める「クラウドソーシング」のツールとしても利用できる。
USエアウェイズがハドソン川に不時着したとき、先の McCullough は直ちにツイッター、フェースブック、フリッカー、そしてユーチューブにアクセスし、今ではすっかり有名になった Janis Krum が撮影した写真を探し出した。
クラウドソーシングが常に最新のニュースの出所となるわけではないが、ニュースを補足するための情報源としても利用できる。Huffington Post の記者 Susanna Speier は自分の記事をアップした後、フェースブックやツイッターで記事に対する反応を確認している。また、記事の書き手と読み手を繋ぐサービス「HARO」も利用している。
※「HARO」というサービス、非常に面白そうです。時間があれば少し調べてみたいですね。
[用途4] 声なき声の発信
クラウドソーシングはジャーナリストが世の中に浸透していないトピックを扱っている状況において強力な武器となる。
UC-Berkeley のブロガー James Karl Buck が取材中にエジプト当局に拘束されたとき、その窮状をツイッターでツイートし、そこから解放に至った事件は記憶に新しい。彼は、エジプトの新聞やジャーナリストが抑圧されている状況、そして抑圧されている中でツイッターを使ってその「生の声」を発信している状況について語った。「人々は権力に抑圧されている中でも、ツイッターを使って声を挙げている。そしてジャーナリストはその声を直接聞くことができる。」
同様に、ユーチューブはイラン選挙の抗議中に素晴らしい情報源となった。動画共有サイトのマネージャ Olivia Ma は現地で起きている状況を衝撃的な映像で知ることとなる。彼女は、外国人ジャーナリストの入国が禁止されていた状況において、現地から共有される映像は強力な情報源になる、と語っている。
[用途5] ニュースの共有/審査
ソーシャルメディアは記事共有のツールとしても有用だ。ジャーナリストはフェースブックやツイッターを利用して自分が書いた記事に対する反響を直接集めることができる。
New York Times の記者 Brian Stelter は記事作成のフローにツイッターとブログを組み込んでいる。彼は自分の記事を草案の段階でブログにアップ、その反響をツイッターで確認したうえで、記事をブラッシュアップ(記事に読者の意見を組み込むなど)し、最終出稿している。
Mashable ではフェースブックやツイッター、Googleバズなどを使って記事を多くの人に共有している。そして個々の記者は、自身が運営しているブログにも同じ記事をポストし、より多くの人に記事を読んでもらい、反響を受けるようにしている。
[用途6] コミュニティ/ブランドの形成
ジャーナリストのブランディングとは、ジャーナリスト自身がコミュニティを形成し、そのコミュニティにおいて専門分野を確立することだ。そしてソーシャルメディアはこの用途にとても有用だ。
先のシカゴの新聞 RedEye はフェースブックと GoogleWave を活用して、読者の獲得とコミュニティの形成に成功している。RedEye はオンライン・オフラインでの読者とのコミュニケーションを大切にし、紙面にはオンラインコミュニティに投稿された読者の意見も掲載される。
最近では日本のメディア企業や個人で活躍されているジャーナリストの方々の中でもソーシャルメディアは徐々に使われるようになってはきましたが、用途によってはまだまだ活用されているとは言い難い状況だと捉えています。ただ一方で、日本は米国のようにソーシャルメディアが浸透しているわけではないため、ソーシャルメディアを上記全ての用途で直ちに利用できるような環境にも無いと考えます。
一先ずは今現在海の向こうで起きていることを認識しておくぐらいにとどめ、今後効用などを見極めながら、少しずつソーシャルメディアの利活用に取り組んでいければ良いのではないでしょうか。